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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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GATE8話  「加治隆介の議 153話 現場の本音」を思い出しますね

加治隆介の議」は「島耕作」シリーズで有名な弘兼憲史さんの15年ほど前の作品で政治家が主人公の物語です。全20巻で、16巻から日米安全保障条約の問題を取り扱っています。

この作品の中で、フランスからのプルトニウム輸送船を護送していた日本の護衛艦一隻沈められ、さらに残る護衛艦「しらせ」も中○とみられる国籍のテロリスト勢力に突如占拠されるという事件が起きます。日米間での駆け引きなどいろいろありましたが、結果としては乗員の死者はなく全員無事に救出されます。

ただし、この際に三樹佑二郎という海上保安庁保安官が、臨時で防衛庁長官の指揮下に入り、船の安全を確保する際に数名のテロリストを「後ろから」射殺したことについて、野党から攻撃されます。専守防衛の範囲を越えているのではないか、という指摘です。この件で三樹氏は国会人参考人招致されることになります。


この時の野党の難癖の付け方の描き方、それから、参考人がタンカを切って野党の人間を黙らせる流れなどがGATE8話と似ているな、と思いました。



もちろん違いはあります。エンタメが重要なネット小説発の作品である「GATE」では、難癖をつける野党の人間を戯画化して描いており、野党の人間がものすごくレベルの低い印象を与えます。あの描き方は政治を扱う作品としてはあまり好きになれませんが、国内での意見の対立はさっさと切り上げてむしろアメリカや中国との対立を描きたかったのでしょうから仕方ないのかな、と思います。



加治隆介の議」においては、与党側だけでなく野党も、共にきちんと「法律論」として議論を戦わせています。同じ難癖ではあっても、きちんと準備はしなければいけないのが国会という場なのでしょうね。

なかなか微妙なんです。あれを軍事行動と言って良いのか治安活動と見るかで対応が変わってくる。防衛出動の場合だと日本の憲法の解釈からは専守防衛でなくてはなりません。三樹一海正の行動が果たして「専守」であったかどうかということを野党はついてくるでしょう。解釈を求められれば「海賊行為に対する治安出動」と捉える方が良いでしょう。

①「防衛出動した場合は、自衛隊法76条で、国会にて証人を求めなればなりません」

②「自衛隊法80条で防衛出動または治安出動で自衛隊に出動命令があった場合、海上保安庁防衛庁の統制下に入れることは可能です。したがって防衛庁長官海上保安官の指揮にあたることは違法ではありません」

③「刑法36条の正当防衛は、急迫不正の侵害が、自己または他人に対して行われようとしている時に適用されます。彼がテロリスト射殺しなかったら米軍の兵士の命が失われる可能性が高かったわけですからこれは正当防衛です。」

④「正当防衛は不正対正です。緊急避難は正対正の場合に適用されます。今回のテロリストの行動のどこが正なのですか?」

⑤「防衛出動、治安出動にかかわらず、米軍と自衛隊が共同行動を起こしたということは、憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に当たるのではないでしょうか」


加治隆介の議」でいえば三樹保安官、そして「GATE」でいえば伊丹二尉、ロウリィ・マーキュリーが当事者です。これらの当事者が、国会での法律的議論をぶった切って正論をぶつことで、これらの議論を「小手先のものである」「そんなこと現場では戯言です」としてぶった斬るのはとても爽快です。でも、これらの法律的論点をちゃんと提示した上でぶった斬り展開が出てくることと、最初から「野党のいうことはバカだから耳を貸す必要すらないよ」という感じで描写するのとは、やはり印象としてだいぶ違う気はしました。



実際、現場の人間からしたら「人の命がかかっているのだからそんなしょうもないことを議論してる場合じゃない!」というのは全く正論です。
とはいえ、ここらへんの議論はそういう現場の都合でないがしろにしていいものではない。お互いに独立した関係のものだと思います。GATEにしても、この「加治隆介の議」にしても、たまたま野党の難癖のレベルが低いので現場の人の声の方が強い、という結果になってしまってますがこのあたりはちょっとモヤモヤするかな、と。





加治隆介の議」ですが、前半および最後は当時の政治状況によるところが大きいので今読んでもふーん、という感じかもしれませんが、16巻から19巻あたりの「集団的自衛権」についての議論あたりは、むしろ今読んでみると面白いかもしれません。

日本の報道からは日本という内側からみた時の考え方しかなかなか伝わってきませんが、

・アメリカ人の国防の考え方 / 有事の時の体制
・アメリカが日本の安保の状況をどう捉えているか
・アジアの国の感情

などについて、登場人物の口から語られているので参考になるかもしれません。