いじめがテーマの作品かと思ったら妖怪退治ものになっていた。何を言っているのかわからないと思うが俺もry。
最初はいじめを真摯に描こうとしていたのかもしれないが、8巻以降はもう完全に「エンタメ」になってしまったと感じた。途中からは「いじめ」というテーマを真剣に描いているマンガとは私は思わなかった。
シリアスさやリアリティっぽいものは6巻あたりから早々に放棄されている。その後も所々で主人公の苦悩などは描かれるが、もはやそういう要素が上滑りしてしまうほどに「エンタメ」になってしまっている。
途中からはギャグ漫画として読むべきかと思うほどであった。どんどん後付される突飛な設定、物語のご都合にあわせて出し入れされるチープな脇役たち、100ページで描いた設定や展開をいきなり忘れているかのようなつぎはぎだらけの展開などなど、ツッコミどころ満載なのだ。そういう無理のある描写を繰り返しつつ、勧善懲悪を極端に誇張し正義のヒーローが悪を倒す非常にわかりやすい物語になっていった。
しかし、それでもなおというか、それだからこそなのか。冷静に読んだらありとあらゆるところで破綻しまくっている物語を強引に成り立たせ、どんどん先に進んでいくエネルギーや絵にこめられた気合のようなものはすごく感じた。文句を言い出したらきりがないけれど、それでも最後まで読みたいと思わせるパワーがある作品だった。
キャラクターに関しても、他のすべてのキャラを使い捨てのコマのように粗雑に扱っている分、その代わりに主人公はすごく引き立っている。主人公である椎葉と、友人の羽鳥というキャラクターの関係性はとても魅力的で、かつ最初はただのいじめっ子だったのに途中から妖怪となった「安西愛美」のキレキレっぷりは見ていて非常に「面白い」と思った。
大事なことなので二回言うけれど、この作品には文句が山程ある。二度と読み返したいとは思わない。おそらく読んだ後私の中に何も残らない。それでも、読み始めたら最後まで読むのがとまらないくらい「面白かった」です。なんとも不思議な作品でした。