10万人の回答者について計算してみると、その平均値は0・389だった。つまり、回答者が接する論客の4割は、自分と政治傾向の異なる人である。この4割という値は、驚くほど高い。まったく公平に選べば5割であり、それよりわずかに低いだけである。自分と同じ政治傾向の論客ばかりに固める人は、わずかしかいない。たとえば、接する論客の9割が自分と同じ政治傾向であるというような偏った人は、1割以下である。大半の人は自分と政治傾向の異なる人の意見にも十分耳を傾けている。
ネットの議論が分断されているように見えるのは、極端な意見ばかりが目につくネットの特性のためである。たとえば、憲法9条改正についてのネット上の書き込みのうち半分は、年に60回以上も書き込むヘビーライターがしている。ヘビーライターは全体のわずか0・23%しかいないのだが、年60回以上書き込むくらいであるから、政治的に強い意見の持ち主であり、かくしてネット上に見えるのは最強硬派の意見だけとなる。最強硬派ばかりであれば、罵倒と中傷ばかりになるのは至極当然の結果である。
これは書き込む人が限られているからであり、ネットの利用者の意見全体が過激化し、分断されているわけではない。大半の人は自分と反対の意見に接し、むしろ穏健化している。
年に60回書き込んだだけでヘビーライター……と思ってしまったヘビーライターしかいないはてなブックマーク村の皆さあああああああん!こんにちはあああああああ!(CVアマミヤ先生)
ついでだから不安利権についてもおさらい。
不安のようなものでも、組織化されると一定の「権力」を帯びるようになる。「利権」と呼んでも良い。不安利権は、やがてビジネスになり、政治的な運動の体を成すに至る。こうなるともはや無害ではない。
復興の妨げになり、差別の引き金になり、ヒステリーの温床になる。不毛な議論の周辺では、不毛なレッテルが大量生産され、それらのレッテルが思考停止を招く。
言葉が発明される。レッテル貼りが横行し、リストが作られる。かくして、議論は死に、論争は南京化し、真実は虐殺される。
人をぼこすか殴りながら自分の加害性だけ変な理屈つけてなかったことにしてる皆さあああああああん!こんにちはあああああああ!(CVアマミヤ先生)
というわけで、こういう存在が「いる」ということだけはちゃんと認識しておいたほうがいいです。寛容とか自由とかいろいろ言ってますけど、こういう存在は「みんな話し合いで世の中を良くしようとしている」という前提で考えてる場をハックしてくるので。
ズイショさんもかつておっしゃっていたように「議論をしようとするときは、議論を乱すことによって利益を得ようとする人間」を追い出すというのを最優先にしましょう。そのあとにはじめて意味のある議論が可能になります。
過剰に特定の人間の不安や不満を煽り、社会の分断を前提としたり、それを促進しようとする人間は「不安利権」を得ようとしている人間かもしれないと警戒しましょう。
これは「V字回復の経営」でも同じことが述べられています。今でも通じる名著だし中古なら1円なのでぜひ読んでみてください。

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 三枝匡
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 文庫
- 購入: 31人 クリック: 292回
- この商品を含むブログ (113件) を見る

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 三枝匡
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/03/02
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る