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「いきなり!ステーキ」の価格推移で学ぶ、飲食店と為替の関係

「いきなり!ステーキ」の記事に意外と需要が多かったので最後にもう一点だけ為替の話します。


「いきなり!ステーキ」の価格について論じるときに非常に重要なのが為替の問題です。株クラではいきステが好調の時によく語られていた話ですが、最近この話してる人全然いないですね。。。

吉野家の株主ならご存じかと思いますが、牛肉の価格って為替や関税にもろに影響を受けるんですね。なので、吉野家の株買って株主通信もらい続けるだけでも結構為替について勉強になりますよ。


いきなり!ステーキは当初質の高いオーストラリア産牛肉にこだわっていた

ご存じの方も多いと思いますが、いきなりステーキはオーストラリア産牛肉にこだわりの店としてスタートしました。

tsunagitradeconsulting.com

それが、途中から(2015年10月~)国産牛を全店販売して、徐々にこちらにシフトしたりしてました。個人テンポならいいですが結構こんな感じで「輸入牛」と「国産牛」のポートフォリオを組む必要があったりして、いきなりステーキの調達担当はスリリングな仕事だったんじゃないかなと思いますね。

いきなり!ステーキは原価ギリギリで肉を提供する代わりに、仕入れ値が上がったら素直に価格に反映するというスタイルだった

輸出業にとっては円安は歓迎すべきものですが、輸入業にとっては円安より円高の方が良いです。特に、いきなりステーキは原価率がめちゃくちゃ高かったので急激な円安進行はかなりの大打撃になります

そのため、当初から仕入れ値に連動してステーキ肉の価格を決めると宣言していました。

「値上げをするときはするけれど、その代わり仕入れ値が下がれば、正直に価格を下げるというスタンスを徹底しお客様との信頼関係を大切にしたいと思っています」

https://toyokeizai.net/articles/-/139053

最近になっていきステの「分析」をしている人でこの話してる人を全然見たことがありません。

いきステというのはある意気究極のシクリカル銘柄(景気敏感株のこと)であったといえます。

さて、では実際為替はどうだったか。

ざっくりいうと、2015年後半から2016年頃中頃まではかなり円高が進行していました。その逆に、2016年中旬から2018年頃までは逆に円安だったんですよね。

これがドル円チャートです。
f:id:tyoshiki:20191226224421p:plain

オーストラリアドル/円はどうだったか。こんな感じです。

f:id:tyoshiki:20191226224131p:plain
https://jp.investing.com/currencies/aud-jpy-chart

御覧の通り、ドル円と違って全然円高方向に動いてくれなかったんです。ずっと円安状態。

この為替の変化を受けていきなり!ステーキの価格はどう変化したか。

繰り返しますが、いきなり!ステーキは当初は本当に安くておいしいステーキを出してくれる店でした。しかし、結論から言うと現状は当初の値段から1.25倍くらいの値段になっています。

円安が進行していた2013年~2015年までは一貫して値上げした後、円高が進行した2016年10月に初めての値下げ

主力商品の中でも一番手頃なリブロースは2015年5月にグラム当たり5.5円→6円へと値上げ。さらに今年3月に、6円→7円へと値上げしている。
そして「このたびやっと、値下げをすることができた」(ペッパーフードサービス営業企画本部 川野秀樹氏)のだ

https://toyokeizai.net/articles/-/139053

これ、先ほどのチャートを見れば一目瞭然ですよね。
2015年中旬~2016年10月頃までは「円高」傾向が続いていたので仕入れ値が下がったというわけです。

しかしこの後再び「円安」傾向になります。そして、下がらないまま2018年までずっと来てしまいました。
結局、いきなりステーキの仕入れ値がこれ以降下がることはありませんでした。

2018年以降ようやくオーストラリアドルに関しては「円高」傾向に戻ったがその頃にはすでに経営が苦しくなり始めていた

www.foods-ch.com

ここまでオーストラリア牛メインで耐えきっていれば、一気に値引きすることができたかもしれません。

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ブラックラグーン #15「 Bloodsport Fairy tale PT.5」

ちょうどこのころ、2017年から開始していたアメリカ進出では大苦戦し、さらに2018年から既存店売り上げがマイナスに転じるなどいろんな意味でコストがかさみまくっていました。まるで最初順調だった第二次世界大戦で順調だった日本軍や、呉に攻め入った劉備軍が戦線が伸び切ったところを各個撃破されていくような状況に陥っていた。

finders.me

この状況では、もはや「為替のメリットを値引きに転嫁するというお客様との信頼関係」を実行できる体制ではなかったのでしょう。

さらに2018年12月にTPP発効による関税引き下げもあったんですけどね…

www.sankei.com

これまで38.5%だった牛肉の関税は30日から27.5%に下がった。
その後も段階的に引き下げ、16年目には9%となる。日本の牛肉輸入量の半分はオーストラリア産が占めており、値下げが期待できそうだ。

これだけが原因ではありませんが(超特盛丼やラインペイとのコラボが大人気だったといわれてますね)、吉野家は業績が一気に回復しています。
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でも、いきなりステーキは復活できなかった……。


結局その後も値上げを続けグラム5.5円→6.9円まで25.5%の価格上昇

・2018年5月には「国産牛サーロインステーキ」と「国産牛リブロースステーキ」を1グラム当たり1円値上げして11円とした。じつに値上げ率は10%だ。
・全店共通のメニューによると、一番上に表示されているのが「リブロースステーキ」。量り売り価格は1グラム当たり6.9円(税抜き)。2018年7月以前と比べると0.4円高くなった。

https://www.news-postseven.com/archives/20191204_1501125.html/3

そして、もともとの値段が決して安かったわけではなかったので、この値上げ客足に対して大打撃になりました。

なにより恐ろしいのが、これだけ価格が上がったにも関わらず、客単価は前年比でほとんど変わらなかった(むしろ少し下がった)ということです

いくら値段を上げても、客の予算は変わりません。

予算が変わらなければ食べる量が減り、満足度も下がるだけ。そして、満足度が下がれば客数も減る。

そうこうしているうちに、嘘かまことか、肉の質まで下がったんじゃないかといわれるようになってしまった。

飲食店にとっては地獄のような悪循環です。その結果が、既存店売り上げが前年比60%というわけです。


こういういろんな要素があるから、いきステに限らず飲食店について語るのって簡単そうで本当に難しいと思う

先の記事でも書いた通り飲食店って何が成功要因で何が失敗要因かって単純にはわからないんですよ。

いきなりステーキの回転率が落ちた原因は「テーブル席」ではありませんでしたしね。

www.tyoshiki.com

とくに重要なこととして、最近になって多くの人がしたり顔でいう「テーブル席にしたから回転率が落ちた」は間違いであることがわかります。

第一、どうやれば成功するか、なにが失敗する原因かがわかってればみんな自分で飲食店やるじゃないですか。
一つや二つの理由でわかったつもりにならずに、いろんな要素があるんだなーって考えていくと楽しいと思います。



余談 そういえばAUD/JPYといえばイケダハヤトさんが豪ドルスワップを煽ってましたがどうなったんでしょうか……

イケハヤ氏、豪ドル82円からアフィのために豪ドルスワップを煽り始めて70円まで到達(現在は76円まで復帰)。本当にひどいなこの人。

b-87gimeronpan.hatenablog.com

b-87gimeronpan.hatenablog.com

yukimama.net

イケハヤ界隈の人間は一時期豪ドルスワップをみんなで一斉に煽っていましたが、軒並み全員損切したようです。こういう人に騙されないように気を付けましょうね。