「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」「空が灰色だから」「大好きが虫はタダシくんの」などの作品が有名な阿部共実作品。
「大好きが虫はタダシくんの」はpixivで読めます。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=19369664
ちょっと知恵足らずのちーちゃんがメインの話かとおもいきや、ちーちゃんの側にいる「なっちゃん」が主人公だったりする。しかも最後の最後はかなり切ない。
なっちゃんは真面目な子なのだけれど、
自分のことを周りと比べてなんの取り柄も面白みもないと思っている。
自分が誰にとっても何の価値もないように感じてしまっている。
そうやって、劣等感という毒がすこしずつ蓄積していく。
そして心のなかで処理しきれなくなると、
自分のように悩んでいないように見える周りの人間を羨んで、敵視して、蔑んでしまう。
そして、なによりそんなことを考える自分を嫌悪して否定してしまう。
そうやって、グルグルグルグルと同じ所を回りながら自分で自分を追い詰めていく。
そんな自分もクラスメイトの旭とちーちゃんが友達でいてくる間はまだ落ち着いていた。
優秀な旭と友達であることは、少し劣等感が刺激されたけれど守られている気がして安心できた。
知恵足らずの「ちーちゃん」は、少しめんどくさいと思っていても自分が優っている気がして少し安心できた。
劣等感が毒となって、自意識は蝕まれつつあったけれども、その進行は、ゆっくりとしたものに抑えられていた。
しかし、ある時、魔がさして、やってはいけないことをやってしまう。
良くないことをして、得たお金かも知れない。でも
ちょっとくらい
ちょっとくらい
恵まれたっていいでしょ私たち
本当に「魔がさした」ということでしかないし、ちょっとしたことではある。
でも、ここで、今までなんとかごまかしてきたものが一気に降り掛かってくる。
罪悪感に耐え切れず、クラスメイトから遠ざかり、
劣等感に耐え切れず、友達も自ら遠ざけ、一人ぼっちになってしまう。
みんなから取り残され、他人を恨み、それが跳ね返ってくる形で自分で自分を傷つけ続ける。
私はクズだ
こうやってふつふつと不満もいやらしいことも考えてるくせに一切主張出来ずに黙ってて
私は変化することが怖くて
衝突することが怖くて
消失することが怖くて
その場をいい加減にやり過ごして誰にも害をあたえることすらなくあたりさわりなく生きて
それがいい人っぽく見えてるだけで
私はなにもしないただの静かなクズだ。本当はちーちゃんも旭ちゃんや奥島くんみたいな人と友達のほうが良かったんだろうな
私なんて団地が一緒ってだけのつまらない縁だもん。
みんな変わっていくよ
私は変われないよ
置いていかないでしょ
ずっと一緒にいようよ
ずっとずっとずっと私もみんなと同じになりたいよ 私もみんなと同じがよかったよ
私も旭ちゃんや志穂ちゃんやちーちゃんみたいに大切なことを大声で叫びたいよ
この自己否定スパイラル、一応作品中で止めることは成功するのだけれど解決したわけではない。最後に「私達、ずっとともだちだよね」とちーちゃんによびかけるなっちゃんの表情とか切なすぎる……
そんな自己否定スパイラルの描写の恐ろしさを描きつつ、
もう片方で、理解し合えないと思っていた人間の相互理解を描いたりしていて、やはり大事なのは心の持ちようなのだよなぁ、などと思わせてくれる作品でも有ります。
藤岡さん、アネゴすぎる。
「キラ☆キラ」の千恵ルート思い出すなど
http://gahkun.blog95.fc2.com/blog-entry-1102.html
あのね、世の中のいろんな、重要で深刻な問題ってね、こういう、理解だけではどうにもならない足りない苦しみが、細かく複雑に積み重なって出来ているんだよ!あちこちで形を変えて、千絵ちゃんの家ではたまたまお父さんの浮気って形で出ちゃったんだっ!
全てを理解しあえなければ、一緒に楽しくやっていけないとしたら、それってとても寂しいことだよね。でも、そんなことはないじゃんっ。理解なんか出来なくたって、あたしたち、仲良しになれるんだもんっ。
私、やり方知ってるよ。仲良くする方法知ってるよ。あのね、そういうときは、カレーパーティをやればいいんだよ。あのね、足りなかったらね、余ってるものをちょっとずつ出し合えばいいんだよ。あのね、お金持ちも貧乏人も関係なく、おうちから、にんじんを持ってきたり、鍋を持ってきたり、そうやってみんなで持ち寄った食材と道具で、仲良くカレーを作るんだっ。
お互いのことなんかそこまで詳しく知らなくたってさ、みんなが少しずつ出せるものを出し合って、一緒に料理をして、それで出来上がったものが美味しければ結構みんな仲良くなるよっ。
このセリフ、最初見た時は感動したのだけれど、その後のきらりルートでどんでん返し来るとは思ってなかった。苦い記憶。
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=9716&uid=bottlearcher