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『ib インスタントバレット』 改めて読み返してみたけどやっぱり好き

初稿:2016年11月23日
第二稿:2019年11月13日

自分を好きになりたかった。
世界がどうなろうと本当はどうでもいい。こんな小さな苦しみが、私にとってのすべて

この漫画、読む人は選ぶと思いますが、最近読んだ中では頭一つ抜けて面白かった!



PV見てちょっと気になるなと思った人は、ぜひ読んでみてください。



「斉木楠雄のψ難」「かぐや様は告らせたい」 「他人の恋愛」でいちばん(・∀・)ニヤニヤできる部分を味わえる作品 - ワールドエンドエコノミカのアニメ化CFを応援したいブログ
にて「かぐや様は告らせたい」というマンガの感想書いてたら、おすすめしてもらった作品。


一言でいうと「何物にもなれないまま世界の片隅で消えていく存在」が世界に反逆をしようとする物語です。

ストーリー自体はよくある話です。
ぶっちゃけ「ピングドラム」です。あるいは「惑星のさみだれ」です。
それに「時間旅行者」というシュタゲ的な存在が混じってるくらいです。


それらと比べると、随分と粗削りで雑味が多いですが、私はこっちの作品の方が好きなくらいです。


私はこの作品の、ドストレートなボーイミーツガールな描き方が好きです。



また、ノベルゲーのようにいくつかのifの選択肢を想像させるつくりになっている点も非常に好きです。




ib -インスタントバレット-(5) (電撃コミックスNEXT)[Kindle版]

赤坂 アカ KADOKAWA / アスキー・メディアワークス 2015-10-27
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各巻ごとに、作者のコメントが熱く語られており、作品の理解に寄与すると思います。



余談ですが、このたとえが好きじゃない人いると思いますが、この作品、作者様にとってtype-moonにおける「月姫」や「fate」みたいなライフワーク的な位置づけにある作品だそうです。マンガ家としての知名度を上げて再挑戦したいと語っており実際その意気込みにふさわしい気合いの入った作品だと思う。作者の中ではまだまだ未完成ということだそうです。実際いろんな伏線が残ったまま。特に主人公たちの能力の秘密やラプラスの未来予知どうするんだ、は全く解決してません。が、終わり方は結構キレイで一つのルートはきっちり走り切ったかな、という気がします。



「かぐや様は告らせたい」ヒットしたあとに読み返してみると、「かぐや様は告らせたい」の描かれてる要素の原液を感じ取れる気がする

まず赤坂先生が超エモい。

非常に優れた作劇の技術をもってみんなを楽しませてくれる「かぐや様は告らせたい」が大ヒットし、いまやトップクラスの売れっ子である赤坂アカ先生ですが……デビュー作にあたる「ib-」は5巻で打ち切り。最終5巻のあとがきを読むと、本当に頑張ったけど力及ばなかったという口惜しさと、まだあきらめないぞという決意がとても熱い口調で語られてます。

もともと超エモエモな作品を描かれる作者さんだなとは思ってたけど、作家様本人もエモかった!

あとがきは嫌いです。僕はこの物語に対して絶対的な他人だからです。物語の結びが他人の言葉であることに、僕は肯定的な意見を持ちません。



けれど、この物語を僕の中から世に運び出させてくれた関係者各位への言葉をつづるスペースがほかにないので、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。



インスタントバレットは、僕が高校の時から作り続けているライフワークみたいな物語です。もし、漫画家としてオリジナルの作品を作るなら最初はこれがいいとずっと思って生きてきました。


構想だけは無駄にあります。

・クロの過去や、夢ちゃんのこれから。
・セラが本物のヒーローになるまで。
・モロ木の狂気や木陰の恋。
・空想姉妹の決着。
・「カラフル」の面々の苦しみやドラマ。
・彼らに与えられる本物の敵。
・インスタントバレットとは何なのか。


……まだタイトル回収もできてないうちに終わるなんて考えられません。
不完全燃焼もいいところです。



僕はこの物語を続ける気でいます。
形はわかりません。
このまま地続きでやるのか。一から作り直すのか。タイトルを変えて別軸から話を作るのか。もしかしたら小説にして発表していくなんてこともあるかもしれません。

いずれにしても、インスタントバレットは一度ここで終わります。
もう少し漫画家としての知名度を上げ、権力を手にして、インスタントバレットを、ページ数にも売り上げにも僕の預金にも何にもとらわれる自由にじっくり描ける立場になってからやりたいと思っています。なので、これからの赤坂アカも変わらずに応援していただけたら、その日が来るのもそう遠くない…んじゃないかなぁ。売れっ子になってしまえば「あと1冊でどう終わらせよう」みたいなことを考えずに話も作れますしね!(切実)


とはいえ、僕みたいな新人が、2~3巻くらいで終わりそうだった作品が延命に延命を重ね5巻まで出せたのだからこれは快挙ですし感謝の言葉も尽きません。ここまで付き合ってくれた貴方や、友人各位、アシスタントのみなさま、編集の吉岡氏、出版に携わっていただいた皆様。売っていただいた営業や書店の皆様。本当にありがとうございました。



僕もまだこの世界でちょっとだけ頑張るつもりですし、インスタントバレットもまだ死んでません。また力を貸していただけたら嬉しいです。では、あとがきがないインスタントバレットでお会いできたらと思います。

あのさぁ……この時からこの作者さんすきだー、とか「かぐや様面白いなー」とは思ってたけどさ。

ほんとに「第二の奈須きのこ」みたいな展開になるとか思わへんやん?
すごいな赤坂先生! 有言実行の鑑で格好良すぎるんですけど!

「ib」読んでると、かぐや様の「原液」みたいなのを感じられる

この作品、「とにかく面倒くさいやつらオールスターズ」の物語なのです。「登場人物、全員石上」みたいな。
かぐや様で、最初から「石上」が主人公で周りも石上みたいな奴ばっかりだったとき想像してみて?

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Ⓒ「かぐや様は告らせたい」

「ib」の時は、「めんどうくさいやつ」そのものをそのまんま差し出して共感してもらおうとしてた。だから共感できる人間にはすごく刺さるけど、ノレない人間からしたら、私が「天気の子」の主人公を見て途中感じたように「知らんがな」って気持ちになると思う。

実際初読の時は、1巻・3巻は良かったけど2巻・4巻の「知らんがな」感は強かった。5巻で一通りお話は閉じたけど消化不良感は強い。
www.tyoshiki.com


「かぐや様」ってその点キャラもいいけど作劇もめちゃくちゃうまいよね……

これに対して、「かぐや様」はめちゃくちゃうまい。

もともと作家として最強の武器となる魅力的なキャラ作りやエモさは備えていたのだけれど、
さらに「ネウロ」「暗殺教室」の松井先生のように
きちっとした「この作品独自のテンプレ」を作り上げてきた。
どうやって読者を引き込むかをめちゃくちゃ計算してる。

魔人探偵脳噛ネウロ モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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実は「かぐや様~」ってよくよくかんがえたら藤原書記以外はクッソめんどくさいキャラしかいないんですよね。そのキャラの面倒くささや重さを前面に押し出すと、あまり読んでて楽しくない話になってしまうと思う。

でも、ちゃんと調理して「(お互い憎からず思っている)安心感のある関係性」のもとでの面倒くささを提示して、さらに「こうやって楽しむんだよ」って型をしっかり作り上げている。最初から毒があるのはわかるけど隠し味程度。ほんとにものすごくわかりやすいし安心して読める。「面倒くさい奴」がしっかりエンタメになってる。

それでいて、読者がキャラに愛着を持ってきたところで少しずつ「毒(拒絶や疑念などのエモさの元となる成分)」をすこしずつ出していく。かぐや様実際はクソ面倒くさい「カレカノ」逆バージョンかよって思った人いるのでは?「めんどくさい奴」ってのは、まず愛着湧かせてからやるんやで、と言わんばかり。

しかも、「めんどくさい」を持ち回りでやっていくのもうまい。ある時はかぐや様が、ある時は会長が、ある時は石上が面倒くさくて、それを周りが支える。藤原チカ書記はかわいい。あの時面倒くさかった奴が今度は別のやつを助けてる。なんて美しい世界。特別面倒くさいかぐやの面倒くささは全員でフォロー! 私は「スラムダンク」読んでたのかな?って思うくらい理想的なスポーツマンガのチームプレイができてる。

その結果、若さゆえというのもあるけど、あのめんどくさくてキモイ、共感しにくさの塊である石上くんの物語すらきっちり読者に感動とともに受け入れさせてしまった。これほんとすごい。きちんと料理したうえで出されるエモさやめんどくささってすごい美味だよね。

「ib」は10年遅れてやってきたセカイ系

逆に言うと、「ib」ってそもそもちょっと古いし、とっつきにくい。
でも、私は10年以上前にオタクとしての青春時代送ってきたわけで、だからこそめっちゃ刺さる。
(「天気の子」があまり刺さらんかったような人にこそたぶん刺さる)

「ib」ではみんな面倒くさいやつしかいないし、一切譲り合わないから
他人と「うまい距離間で付き合う」「支えあう」が難しい。
出会ってしまったら殺しあう奴ばっかり。
共闘が必要な場所でも「付き合ってられるか。私は一人でやらせてもらう」と死亡フラグを立ててしまう。

そんな痛々しさをこの作者さんはすごく愛してるんだろうなって思う。

それを温かく包み込んでくれるのが「かぐや様」だとしたらありのまま愛してくれるのが「ib」だと思うのです。

そういえば「ib」ってさ、何気に作品設定もFGOに通じるところあるんだよマジで。

この話に出てくる20人のibって、ゲーティアによって各特異点に設置された魔神柱っぽいんですよ。

「それぞれの<世界への悪意>が具現化する形で人類を滅ぼしうる力をもった20人」
って聞いたらもっと絶望しきってて目の死んだやつ思い浮かべるやん?
「魔法少女特殊戦あすか」みたいに、何考えてんのかわからないみたいな敵だと思うじゃん。

魔法少女特殊戦あすか 11巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)

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でも全然違う。 
めっちゃくちゃわかりやすいし感情豊かだし「セカイ」とか「人類」に夢見すぎ。

「自分と世界」の区別がついてないから

「人類が憎い」といいつつ「かわいそうだから」とかとかそんな理由で優しく人類滅ぼそうとする。

「嫌い」だからじゃなくて「片思い」だからってあたりが良い。

瀬戸口廉也作品が好きな私からしたらもうどうしたらいいの……ってなっちゃう。


奈須きのこ作品のような「気取った表現」はなくただただ感情むき出しで愛おしい

その上で、FGOみたいに大人っぽいキャラを出さずに本当にみんなガキばっかりだから
がんがん恋愛したり嫉妬したりしまくりだもんね。

奈須きのこ作品確かに面白いけど、あの人なんでも「ほのめかし」「秘める」感じで
直接恋愛とか嫉妬とかかかずに「ああ―――〇〇だったのだ」みたいな語りやるじゃん。
やかましーわ。もっと率直になれや! って思うときはある。

この作品はそういう青臭さ全開で本当にたまらないです。

それゆえに「グッドエンド」までしか到達できなかった本作ですが
いつか「トゥルーエンド」まで到達する物語として再構築された「ib」が読んでみたいです。