頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「鉄拳」原田さんの記事が素晴らしい。ほんと素晴らしい。


とりあえず何も言わずに読んで下さい。ほんとに素晴らしい。
ゆっくり読んでたら読み終わるまでに1時間くらいかかるロングインタビューですが、読む価値は有るはず。
以下読みながらメモとっていきますが、とにかく読み手にとって感じ方は違うと思うので、自分で読んでみて下さい。













最前線で戦い続けてきた人の視線から見える「ビジネス環境の変化」はここまで劇的だったのか

僕らはそれを“大戦”に喩えていて、本当に物量戦争の時代に入ってしまったんです。
僕らは伝統工芸的に、性能にキャップのあるハードウェアで、ひたすらリッチな人体を2体動かすというノウハウは作りました。セガナムコはポリゴンに関する特許技術も多く持っていていましたし、そういう“刀の道”を宮本武蔵の如く歩んでいたんです。
ところが戦場が、「鉄砲、弓、槍なんでもあり。戦艦も戦車も戦闘機もあり」という大戦化をしたときに、「これは近いうちに技術だけじゃなく、補給・バジェット・そのファンディングも含めて負け始めるぞ」となったと。

イノベーションのジレンマとか失われた20年とか、「日本の労働生産性」の話とか残存者利益とかプロダクト・アウトからマーケット・インへとか。
それぞれの要素について、1つずつ切り出して語ってる記事はそれこそ毎日のように出てるけどピンと来なかった。
なぜかというと、一つ一つを切り離してしまうとやはり別物になってしまうからだろう。

この記事の話にはそういったものが全て一つのつながった話として詰まってる。
当たり前だけど、どれか一つだけ理解できていればいいってもんじゃない。
いろんな要素が絡まり合っていて、それらは全てシンプルな勝ち負けの結果につながっている。

そういうのが実感を持って語られるからこっちにグイグイ入ってくる。

「打ち手」は無数に転がってるけど、「リソースの配分」については個別的に違う。答えはなくて考え方次第だけどその考え方が細かく書かれてる

で、それらの問題に対してまたこういう打ち手があるって話は、これまた個別にこうすればいいって話はそれこそ無数に転がっているのだけれど、

徹底してデータを集めるところから始めたんです。でも、それまでは顧客データと言えば売り上げ本数しか見えていないわけですから、「市場、つまりプレイヤーからどう受け止められているか」は、じつはまったく解っていなかったんです。

「欧米」ってよくひとくくりにしますが、ヨーロッパに足を運んで現地の文化を学べば学ぶほど、「アメリカと全然違うじゃん」と思いましたね。

正直、マーケティングというキーワードは嫌いだったりするんですよ。「殺し文句」にするにはあまりに意味が広い言葉なんですよね。だから僕がやってるのはあくまで仮説を立てたあとに、それらを分析や検証してというプロセスなので「アナライズだ」と言い張ってるんです。昔、社内でも調査に基づいたマーケティング手法が多く語られていたんですが、それともまた違うんですよ

「何個も同時に打ち手をやる必要があるのだが、どの手法にどの程度のリソースを割くか、この手はどこまでうまく行かなかったら損切りするか」
みたいな話って、やっぱり生きた事例をみないとわからない。そういうことも具体的に語られている。


この話も「ケーススタディ」って言えば簡単だけど、この記事は単なるケーススタディとはぜんぜん違うと感じる。

ありとあらゆる方法を検討した上で、憧れとか悔しさとか全て飲み込んだ上で「これだ」という武器を選び取り、それを愚直に実行する展開は感動する

誰しもそうだと思いますがもちろん僕にも、そういう人たちへの憧れがやっぱりあります。「こうありたいものだ」……という思いがどこかにあるんでしょうね。だから「マーケティングだとかアナライズだとか、アイデアには関係ねえよ」と本当は言いたい、言い切りたい。ただ、暗黒時代を乗り切るために、彼らのような天才が生み出した『ストリートファイター』や『バーチャファイター』に対して、ちょっと頭を捻ったアイデアや模倣で勝負していると、「まったく追いつかない……追いつかないどころか、『鉄拳』というIPはあと数年で消えてしまうだろう」と、その当時はそうやってすべてを受け入れて認めることにしたんですよ。

でも、一方では「追いつきたい」、「追い越したい」と思うわけです。そうなると当然、彼ら天才世代のクリエイターとは違う武器が要りますよね。

天才や偉大な先人に憧れるだけなら簡単。ビジネス書を読んだり私の履歴書を読んですごいねって言うだけなら私でもできる。追いつけないと認めるのも誰でもできる。それを認めるのは苦しいけど黙ってじっとしてたらいつかそうならざるを得ない。憧れつつ、そしてそれを諦めつつ、その上で違ったやり方で先人たちを追い越すのだと決めてその道を選択するのは、めちゃくちゃしんどい。そういうのをこの人はやってるわけですね。

とはいえ僕の初期の唯一の武器は、たとえばとても低レベルなところから始まったんです。当初は「ソフトに封入されていたアンケートはがきを片っ端からすべて読む」とかだったんです
(中略)
そうすると、他人から集めたデータを分析した結果から導き出した答えを、まるで自分の中からアイデアが湧き出しているように言えるわけじゃないですか(笑)。とにかく僕には武器が欲しかった。それがアナライズだった

調査・分析されたデータから入念に傾向を読み解くとともに、一見反目しそうな声量の高い叫びや勢いのようなものも丁寧に拾い上げていく。それらを納得のいくバランス、お言葉を借りれば「腑に落ちる」ところまで融合させていった

そうやって「自分の武器」を決めて、そこからレベル1から取り組んでいくって並大抵のことではないと思う。よく人生をドラクエに例える人がいますが、私をはじめほとんどの人は、本当はドラクエ的な人生は始められてない。まず何で戦っていくかを決めなければLV0のまま。LV1になることがまず必要で、多分一番難しいことなんだと思う。

ちなみに、自分がなにかの世界でプロとして戦おうとしたとき、大学での勉強はめっちゃ役に立つ、という話をされています。このあたりはあとになってみないとわからないことだけど、それでもやっぱり大学でしっかり勉強してきた人って強いんだろうなと思う。


その結果として、一つ一つの作品で段階的に進化させていくところの裏話を語っていてまたこれが面白い。

現在は「いわゆるツアーのような形で点を線で繋ぎ始めたら、結果的にいまのeスポーツの流れに非常に近いものになった……」という形です。

冷静な観点で見れば、まだeスポーツ自体が、このジャンルにとってもごく一部の層のものにしかなっていない

「見せ場」を意図して作ること

・新しい世代、たとえばいまの10代やその友達をコミュニティに連れてきたとき、最初にするのは「プレイさせる」ことじゃなくて「見せる」ことなんです
・大会を見せたときも、ゲームシステムは解らないけど観戦して盛り上がることができれば、「なんかすごいことが起きている」と理解して心が揺れるじゃないですか。格闘ゲームに興味を持ってもらうには、その瞬間を作らないといけない

・普通は、プレイする当事者、つまりプレイヤー側の気持ちよさや緊張感を第一に考えるわけじゃないですか。でも今回は、観ている人にも一緒に同じ気持ち良さや緊張感を与えたいと思った

「格ゲーは複雑化したから廃れたは嘘で、格ゲーはもともと難しかった」

ゲームが複雑になったんじゃないんです。これはコミュニティが成熟したというのが客観的分析になります。遊びの根幹は何ら変わらないけど、コミュニティが成熟して、昔みたいにワイワイみんなで同じように競えなくなっただけ。

現代は、ゲームシステムそのものよりも、ゲームの周囲のほう、ゲームを取り巻く環境のほうがよほど複雑化していて、いい意味でできることが増えている

世代交代を意識して作る

格闘ゲームというのは、世代交代を意識せざるを得ないジャンルなんです。そして、世代交代に失敗したらゲーム自体が消えるんです。だから『鉄拳』は世代交代を意識した戦略をあちこちで採っています

『鉄拳』がこれだけのシェアを得ているのは、逆に「世代や客層を広く跨げるようにしている戦略も持っているから」