いつも論理的にガバガバな感情論しか書いてない私が言えたことではないのですが、それにしても、ちょっと納得いかないかな。
この記事の話です。
前半は良いなと思って読み進めていたのだけど、後半のガバぶりがちょっといただけない。
私はマルクスさんの時にも書いたけど「一見正しそうに見える」けど中身がガバって話が一番苦手なんですよ。こういうの見ると やはり人にはジェンダーフリーは早すぎるような気がしてしまいます。もうちょい具体的に語ってほしかった
自分の「これ好き」を描いてそれが広まっていくのを見るのは好き
ただ先に言っておくと、私は楠本さんの意見を否定したいわけではないです。むしろ総論では賛成寄りです。
特に序盤はとてもいいと思うんですよ。たとえばこういう話とか。
「KISSxxxx」に出てくる“かめのちゃん”というキャラクターは、自分の容姿にうじうじ悩むこともないし、ややトロくても全く卑下しない。誰にも尽くさないし、男の子がいてもいなくても楽しくやっていけます。もちろん女子力アップも目指しません。それで、今も本当にたくさんの、当時少女だった読者の方たちが「私はかめのちゃんになりたかった」と言ってくれるんです。それがとてもうれしい。ちゃんと受け取ってもらえてよかったな、って。
作者が自らの「いいな」「これ好き」を描き、みんなにも受け入れられて広まっていく。これは作者と読者の相互作用であって、作者がそれを伝えたい気持ちも大事だし、受け手側もそれを受け取れる下地が必要です。素敵だなと思う。
KISSxxxx コミック 全3巻完結セット (集英社文庫)
- 作者: 楠本まき
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/03/18
- メディア: 文庫
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ステレオタイプを描いちゃうのは、キャラクターの設定を詰めきれていないということでもあるんですよ。十分なところまでキャラクターが練られていなくて、でもこんなものかなと描いてしまった結果だと思う。
(中略)
「なぜこれを描かなくてはいけないのか」と作家に説明を求めて、(編集部が)納得させられたら載せるし、納得できないものは載せない。そういうガイドラインを、他の差別的な表現に対してと同様にジェンダーに関しても作ればいい。最初はめんどくさいと思いますけど、一度作ってしまえば、わりと簡単なことのように思います。むしろそうやって話し合ったり考えたりすることで、作家も編集部も成長していくんじゃないでしょうか。
このあたりも、「ガイドライン」として明文化するのは難しいだろうけれど、何かしらこういう取り組みを「ポリシーとして」「自主的に」進めていくのであれば良いと思ってます。
なので私は楠本さんの結論が受け入れられないってわけではないです。言葉選びが悪いなと思うくらいで、結論として過激だとは思いませんでした。
「私はこういう意識して取り組んでる。こういう作品に私以外の人にもどんどん挑戦してほしい」だったらわかります。
私が抵抗を感じるのは、彼女の主張ではなく、彼女の理屈であり説明態度です。論理たてがガバすぎる。
志が悪いとはいわんから、誰かもうちょっとしっかり理屈面をフォローしてあげて。いまのまま持ち上げてもmetooのときにはあちゅうさん持ち上げたのと同じになるだけちゃうかなって思っちゃうんですよ(彼女のファン周りが盛り上がるだけで運動全体はスポイルされる)。
提案としては面白いと思うんですけどね。ハフポストは折角の面白いメッセージからガバ減らして抵抗なく読者に伝えるようにする努力が足りないんじゃないのかな。。。
「自分はこれが良いと思う」ではなくて「こっちが正しい」「そうでないものは間違いだからダメ」となるのはちょっと違和感がある
楠本さんの話は途中から「なんか違う」って感じが増えてくるんだよなぁ。
作家が皆今後一斉に、もう、使い古されたジェンダーステレオタイプを描くのはやめよう、と、意識するだけで、ほぼ解決したも同然です。
https://note.mu/maki_m_k/n/ncc6dc4f46bef
作家のみなさん、編集者の皆さん、そして読者の皆さん、そこはひとつそれぞれの可能な範囲で、よろしく。そうすれば、ほらね、少しマシな世界が広がっていく。
今まで気づかずうっかり自己の偏見をそのまま垂れ流してきてしまっていたとして、たとえば担当さんに言われて初めて気づいたら、そこで悔い改めるなり恥じ入るなり、身悶えして変わればいいじゃない。誰もそれによって傷つかないし、困らない。祝福だってするだろう。
うーん。この調子は同意しかねるかな。
楠本さんの中では「マシな世界」ってのが確固としてあるんだろうけれど、読者と共有できてませんよー。
これあれでしょ。。「なんでこんな当たり前のことがまだわからないの?」ってなりかかってるやつでしょ。
そして、ここまでくるともう小林よしのりや内田樹と同じに見えてくる。なんつーか「進歩的なことを言ってるつもりの老害」感がひしひしと出てる。
(インタビュワー)社会が少しずつ変わっていっているのに、少女漫画の中の世界はあまり変わっていないように感じます。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5cab1d5be4b047edf95d101e
(作者)それは、一般的に少女漫画を描いている作家さんたちがとても若くしてデビューしていることが影響しているのかもしれません。私もそうですけど、深く考えたり、十分にものごとを経験したりしないままで、それまでのわずかな人生経験の中で無意識に刷り込まれた頭で作ったものを、作品として発表するという構造になっているところがあるのだと思います。
昔は、サンデーとか読んでたんですけど、少年漫画誌に出てくる女性のキャラクターには性格や意志がないというか、人格がないというか。もちろん、そうじゃない作品もあるんですが、少ないですよね。だから私は少年漫画をあまり読まなくなったんだと思います。読んでいてしんどいので。今は変わっているといいな、と思います。
その人が本当に信念を持ってそう思っているのであれば、私は嫌ですが、仕方がないなと思うしかありません。でも多分、意識していないと思うんですよ。
こらこらこら。このあたりの話の展開のしかたはダメでしょ。
目上の者から立場がしたの人間に対する忖度はガチで害悪ダゾ
「コミュニケーションを求めながら、それが決して成立しないこと」というのはそれ自体苦しいことだろう。しかし、ハラスメントはその先にある。コミュニケーションが成立していないのに「一方的に相手の文脈によって」成立したことにされてしまう。この際に、自分が思っていないことを思ったことにされてしまう。自分の感覚を裏切ることを強要される。これがハラスメントなのだ
これがハラスメントだと思わないなら、ジェンダーバイアスではないけどちょっと別の意味でガイドライン必要になっちゃうよ。自分はそういうものと無縁だと思ってないですか?
「自分が気に入らない」だけならいいんだけど、そのライン越えて「こいつらがこういうことを言うのは無自覚にこういうことが刷り込まれているからだ」まで踏み込む。
そしてその立場から是正しなければいけない=「自分で考えて私と同じ考えになるべきだ」に近づいてる。
別にそれをやめろ!とまでは言わないけど、こんなこと言われちゃうと、「私はついていけないな」と思います。
- 作者: 楠本まき
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/12/25
- メディア: コミック
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マンガ家でもマンガ外で勝負していいんだけど、できるならマンガ描写で「私もこの漫画のようにありたい」とか「これからはこうでなきゃ!」って思わせてほしい
ここまででわかると思うけど、楠本さん「自分の思う正しい」が強すぎて、他人の話を聞けないモードになってる。それを直接語らずに読者に納得させるのが漫画家の仕事だと思うのですが……。そもそも論として、作者の理念を作中の登場人物に直接説明させるマンガはちょっと苦手やねん……開き直って「マンガでわかるジェンダーフリー」とか描くならいいけど、そういうつもりでもないわけでしょ。
このあたりとかちょっとひどいと思う。
女子力やモテを女性が求める自由はもちろんあると思います。だから私は不作為なジェンダーバイアスを、まずなくしましょう、と言っています。そうすることでまず一つクリアになるんじゃないでしょうか。それは表現の自由を侵害することにはならないと思います。
だいたいジェンダーに限らず、バイアスなんてない方がいいに決まってますから、そこはもう合意していいんじゃないかと思うんですよね。
えええ……あなた、さんざん上の方で「説明して納得してもらえないものは描かせないようにガイドラインを」って言っておきながらなんでそこで自分の主張の説明が急にガバっちゃうんですか。
少女漫画雑誌を読む人は減っていますよね。それは、そもそもの雑誌離れや、他に面白いことがいっぱいあったり、いろいろ理由があるとは思うんですけど、やっぱり、「女の子は自分を磨いて、結婚して、幸せになるんだ」ってもう100年前みたいな話には、夢も希望も感じられないからじゃないでしょうか。遅まきですけど、社会はようやく変わってきています。普通に考えても、読むと夢と希望が奪われる漫画にあえてお金を出して買う人はいないでしょう。それは少女漫画の自殺だな、って思います。少女漫画が、ただ不作為にジェンダーバイアスを容認するのをやめて、それを覆すような、肯定感や勇気を与える場となれば、自ずと少女漫画を読む人もまた増えるんじゃないかと私は思うんですけど。
私の希望的観測かもしれません。
完全にイケハヤじゃねえか。「まだ少女漫画(のジェンダーバイアス)で消耗してるの?」って言ってるやん。これに同意してる人、具体例をだして語らないとまじで青二才さんのなろう小説語りと同レベルやで。
本当にただ「我田引水」の根拠レスな話と希望的観測を述べているだけであり、イケハヤの「答え合わせは5年後」と何が違うのか全然わかりません。繰り返すけど、お前さんざん上の方で「説明して相手に納得してもらえないものは描かせないようにガイドラインを」と言ってるのに、自分に甘すぎでしょう。千田先生の「市民的公共圏」の時も思ったけど、「そのアイデアは悪くないかもしれないけど、お前の態度が気に入らない」です。
マンガの力を過大評価しつつ、負の面ばかり見ているってのは最悪だと思う。
楠本先生が、イケハヤ顔負けレベルで忖度を使いまくりのガバ論法を使ってしているので、私も忖度ガバ理論を使いますが。
前々から思うに、やたらとマンガの負の側面を強調する人ってかなり濃いめのオタクの人が多いですよね。この作家さんもマンガ業界どっぷり35年だそうですが、マンガの外にも世界があるってのちゃんとわかってるのかな?別に社会はマンガの力によって動いてるわけじゃないですよね。マンガの力を過大評価しすぎなうえ、変な自負心からマンガの世界を綺麗にしようとしてませんか?私が以前よくやりあってた青二才さんも、オタクといしての思い上がりがいまよりずっと強い頃に、同じようなことをして、けしからんラノベを取り締まろうみたいなこと言ってやがりましたが。見ている世界が狭すぎやしませんか?
そもそも、負の再生産とかいってマンガの「悪影響」の部分だけ語ってるのはなぜなのか。マンガって正しいかとか間違いかとかで考えるのか?マンガの力はすごいと思うけど、社会的なものというより、どれだけヒットしてもやはり作家と読者の個人対個人だと思った方がいいと思うんですよ。「ワンピース」クラスまで行けば話は別だけど、個人の作品と社会を対比させるのはおこがましいとは思わんかね。
私はね。やっぱりそれぞれの作家さんが己の「私これ好き」を描いていけばいいと思いますよ。それとも、どうしてもマンガの世界でもアファーマティブアクションとか社会改良主義目指さないとダメ? 拙速にやるのもいいけど、サイトブロッキング理論と一緒でいろんな条件無視してジェンダーバイアスを締め出せば問題解決、なんて簡単な思想の人に賛同する気にはならないですね……。もちろん、好きにしてくれたらいいのだけど、私は参加する気にはならないです。
私は今まで通り、自分が好きなマンガ読んで好きな作品を他の人と共有するだけです。
改めて私にとって「papa told me」は偉大だなと思う
上の記事の漫画家さんのコマを数コマ見ただけだと、なんか中村明日美子っぽいなーと思うだけでなんか私はあんまり好きにはなれない気がする。
それはそうと、楠本さんが連載されているCocohanaっていうと「papa told me」が連載されていた雑誌だよね。「papa told me」は本当に好きです。
Papa told me Cocohana Ver.6 ~星へ続く階段~ (マーガレットコミックス)
- 作者: 榛野なな恵
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: コミック
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少なくとも「papa told me」は私にとても強い影響を与えてくれたと思ってる。この作品にはフェミニストも登場しますが本当に格好いい人です。というか、もともと大学に入るまではフェミニストというのは男性がなるものだと思っていました。
当たり前ですが、この本を最初に読んだとき、フェミニズムという用語だとかジェンダーバイアスなんてことは全く知りませんでした。それでも、この漫画を読んだときは「フェミニズム的な考え方のほうがイケてる、格好いい」と思いました。多様な人間の在り方を描いた上で、その中でひときわフェミニストの男性が理知的に描かれていたからです。「フェミニズムがイケてる」のではなく、イケてる人が、肩ひじはらずにフェミニズム的なことを言っていた。そして、そういうマンガの力によって小学生の私は励まされたし、フェミニズムに肯定的な感情をずっと抱き続けてきました。でも、私の感覚は現実のフェミニズムたちの活動によってだんだん否定されてしまったように感じています。
勝手に期待して勝手に失望してごめんな……。
ここまで書いておいて楠本さんの本読まないのもどうかと思うので、何か読みます
今回の記事、楠本さんの作品を一つも読んだことないのに、このインタビューだけ読んで判断するのはよくないと思っております。
一作品くらいサクッと読もうと思うのだけど何がいいかな。何もなければ「KISSxxxx」読もうかと思います。それとも「赤白つるばみ」読んだらいい?「Kの葬列」や「致死量ドーリス」もお勧めってコメントしてる人いましたね。 ファンの人もいらっしゃると思うので、お勧めの作品教えてください。今回の議論と切り離して純粋に作品として楽しみたいと思います。