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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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『まりんこゆみ』 精神論がはびこる組織運営が軍隊方式と揶揄されがちだけど、本来軍ほど合理的でなければならないものはないよね

※今だけ1巻が11円で販売してるので、ぜひ今のうちに買って読んでみてください!


昨日「ガールズアンドパンツァーリボンの武者」の感想を書きましたが、同作者の「まりんこゆみ」も紹介しておきます。この作品もかなり面白いです。


この作品では、日本の女子高生が海兵隊に入隊することを決意してアメリカに渡り

①「ブートキャンプ」に入って地獄の訓練を受け、
②そこから化学部所属の下士官となり
③通訳任務、日本自衛隊への留学などを経て
④海兵隊将校になることを決意し、
⑤通信教育で大学を卒業し、士官候補生学校(OCS)→基本技術学校(TBS)を経て海兵隊少尉になるところまでを描いています。

まりんこゆみ(1) (星海社コミックス)

まりんこゆみ(1) (星海社コミックス)

難易度が極めて高い「異世界体験もの」として楽しめる

この作品は、①~③までの経験を体験した元海兵隊の人が原作者でありその実体験に基づいた形で描かれおり、とても具体的です。実際に現場を経験しないとわからない俗語などもふんだんに使われており、雰囲気がよく伝わります。

海兵隊なんて私にとっては完全に「異世界」なのですが、本当にゼロから描いてくれるので、全く知識がない私でも楽しめます。

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残念ながら原作者の方が途中でなくなってしまったので後半はかなり駆け足になっていますが、非常に読みごたえがある作品でした。

原案者のアナステーシア・モレノは沖縄で生まれ育った日本とフィリピンハーフのアメリカ人である。モレノは1999年から2004年まで在日米軍(アメリカ合衆国海兵隊)として日本で勤務していた。退役後、通訳および翻訳家として活躍していた。モレノは女性海兵隊員をモチーフにした作品がないために、自身の海兵隊員としての経験と、日本文化への理解を元に本作を書き始めた。ガンとの闘病の末、モレノは連載半ばの2015年7月12日に逝去したが、全体のプロットは作画・構成を担当する野上武志に引き渡されており、英訳をダン・カネミツが引き継ぐことで連載は継続された。2017年5月2日に最終話となる第193話が掲載され、本作は完結した。

アメリカ軍の「厳しさ」と「合理性」みたいなものが伝わる作品

ブートキャンプ時代

この作品では上で述べたように「ブートキャンプ」の描写から始まります。

とにかく厳しく、乱暴で、容赦がないですが、一見理不尽にしか見えないシゴキなどにも一つ一つにきちんと目的と理由があることが語られます。


いろんな厳しさは「一人前の海兵隊にするために〇〇の要素を育てる」という目的に合致しているかどうかで判断されている。そうでない行為は許されていない。そもそも、ブートキャンプの教官はエリートでなくてはなれず、尊敬されるべき職業としてみなされている。


日本でよくブラック企業の研修や、学校教育での校則などが問題になりますが、

①はたしてこうした研修や校則は、きちんと「社員のため」「生徒のため」という目的にそって組み立てられているか。
②一つ一つの行為は目的に沿った合理的理由があるか。
③それを教官や教師がちゃんと説明でき、実践できているか

という条件を満たしているかどうかはかなり疑問ですね。特に③番ね。(私は教師でしたけど、胸を張ってできているとはとても言えませんでした。当時の生徒の皆さんには本当に申し訳ない)



もちろん、海兵隊の教育だって完璧からは程遠い。というか「費用」や「納期」の問題からそもそも環境が劣悪ですし、作中でも語られてるけど、やってることはほとんど洗脳(作中ではマインドファックと呼ばれていますw)です。明らかにそりゃダメだろ、って思う部分も多い。皮肉屋のドナを通じてそのあたりのダメ出しもきっちりやっています。「ほほえみデブ」のような事例も発生しそうになります。

ただ、教官たちが自分の任務に誇りと責任を持ち、与えられた条件の中で最善を尽くそうとしており、先ほども言った通り「説明できない行為はしない」という部分がなんだかとてもグッときました


もう一つ印象的だったのが5巻の日米共同演習の話

まりんこゆみ(5) (星海社COMICS)

まりんこゆみ(5) (星海社COMICS)

自衛隊は名目上24時間交代で勤務することになっているのだが、自衛隊の幹部はシフト外でもなんだかんだ仕事があって、演習中はほとんど眠れないのだ! 休憩は悪徳だという雰囲気に支配されています。

一方アメリカ軍は、シフトはしっかりと組みます。一人が受け持つシフトは12時間。休みは必ずしっかり取ります。これに比べると、日本人は休んではいけないといった強迫観念にとらわれているように思えます。

この差が修羅場ではすぐに出ます。3日目には、アメリカ側は元気いっぱい。日本側は3割のパフォーマンスしか出せない状態になっています。

「これは関ヶ原の戦いじゃないんだ!戦争は1日で終わることなんかあり得ないんだから休憩と息抜きは仕事のうちだよ!?」

日本人は休まずにふらふらの状態で「頑張り」つづけ、きっちり休んでいるアメリカ人を見て「タフだなぁ……」とため息をつくという大変間抜けな構図が描かれています。 (ただまぁ、あくまで「将校」レベルの話ですけどね。アメリカ人は「優秀な人や頭脳部分は」本当に大事にするんだなって思った)

他にも交渉の在り方などの比較もあります。これとか別に日米の比較じゃなくてもアルアルですよね。
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将校教育は日本の自衛隊もこのくらい頑張っているのかな?

この作品で一番すげえと思ったのは終盤。主人公が将校を目指すと決めてからのキャリアパスの部分ですね。

向こうの国の将校は一人一人ここまで鍛えてるのか、と。まさにベスト&ブライテストの世界。

日本の自衛隊はどうなんでしょう? これはわからないので何とも言えません。ただ、少なくとも、アメリカがここまで人材に投資して一人一人を鍛えまくってるのを見て「アメリカに頼らず日本だけで軍をもって自立」みたいな話をしてるのを見ると、自衛隊の人たちが背負うべきものの重さを感じますね……。



なんにせよ、どこまで正確な話なのかは分かりませんが、読んでて非常に刺激を受ける作品でした。こういった知識があるとほかの作品を楽しむ際のベースにもなりますし、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。