MUSICUS!攻略完了しました。
サンコー スマホタブレット対応超軽量折りたたみ式「仰向けゴロ寝デスク2」 TKGORODK サンコー
- メディア: エレクトロニクス
プレイ時間は寝ながらオートモードでやってたので25時間くらい。
主人公の対馬馨くんについてはいろいろ語りたいことがありすぎてなんにも語れないというパターンになりそうなんだけど、とりあえず金田の話でもします。
MUSICUS!の3分の1はこのキャラクターでできている。
好きになるかどうかはともかく、このキャラクターを受け入れられるかどうかがこの作品の大きなキモだと思う。
このキャラクターは一言でいうと「とんでもないバカ」である。
瀬戸口作品においてここまで単純明快なバカが登場したのは初めてではなかろうか。
しかも、瀬戸口廉也さんは明らかにこの「バカ」を気に入っているのだろうなと私は思う。
主人公が考えすぎてなかなか動けないからこそ、主人公がなかなかできないことを平気でやってしまう。
たいていその結果はろくでもないことになり、主人公たち周りの人間がしりぬぐいをする形になることが多い。
こういうと、「足を引っ張る味方」なのかと思われる方もいるかもしれないが、決してそうではない。
良い面も悪い面も含めて、このキャラクターは主人公の足を前に進めさせるキャラクターになっている。
唯一全ルートで最後の最後まで主人公と縁を維持しており、いろんな形で話を引っ掻き回すトリックスターだ。
金田は「虎」になんてなれない、平凡なただのバカ野郎
山月記の李徴は自分のことを「尊大な自尊心と臆病な羞恥心」と言っていたが
この金田は「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」という感じだ。
コンプレックスが非常に強く臆病な割に、
いざ仲間だと思うとなれなれしくなったり上から目線になったりする。
すぐになんでもわかったような口調で語ったり
なんでもかんでもロックンロールに紐づければ自分を正当化できると勘違いしている。
とにかく人間関係の距離感の掴み方が異常に下手くそ。
彼の自己表現は常に「大げさに何かに感動する」か「何かに対する反発や嫉妬」という両極端である。
敵か味方か、自分を肯定してくれるか否定する存在かを意識しすぎて物事の評価もブレブレ。
敵なら理不尽でもとにかく難点を探し仲間には上から目線、それでいて自分にだけスイーツのように甘い。
その場その場で仰々しくて大げさな理屈を振り回すけど実際はその場の勢いで言ってるだけ。
次の瞬間にはコロコロ変わっている。
ちょっとでも受け入れられるとすぐに調子に乗るけど、たしなめられるとすぐにヘコヘコと謝りだす。
本当のところは何事も真剣に考えておらず、何事も無責任。大事なところは他人に頼って恥じもしない。
努力も嫌いでそのくせちょっとでも成長や変化があると大げさにそれを見せびらかそうとする。
そこまでやってほんとのところは何を求めているかというと「仲間に入れてほしい。ちやほやされたい」ということだったりする。
ひねくれてて面倒くさくてそれでいてクレクレ言ってるばかりのどうしようない奴で99%の人は「関わりたくない」と思う。
ネットやってるとたまにほぼすべての特徴が当てはまる人をみかけるけど、これからは全部金田に見えそうな気がする。
MUSICUS! 金田くんあるあるの光景
だいたい一事が万事この調子。
金田君と主人公の関係はドラえもんとのび太みたいな感じ。最初は態度がアレなのでそう見えませんが、慣れてくると完全に「ダメ人間のまま高校生になったのび太」にしか見えなくなってくる。
- 作者:藤子・F・不二雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1974/07/31
- メディア: コミック
ところが、瀬戸口廉也は、こののび…金田に対してはやたらと優しいのである。
MUSICUS!の世界は主人公である対馬馨にはえげつないくらい厳しい
まず、瀬戸口廉也作品は基本的にやたらと世界が厳しいことが多い。
今までの例にもれず、今回の「MUSICUS!」の世界も主人公である対馬馨くんにはめちゃくちゃ厳しい。
対馬馨は医師の息子として将来確実な優等生だったが「あえて」その道をドロップアウトし、その後ロックと出会って音楽の世界に道を踏み入れる。
対馬馨はかなり頑張ってロックの世界に挑戦する。元々楽器の経験があり、継続的な努力を厭わない性質だったからギターの腕はすぐに上達するし狭いロックの世界とはいえある程度有名な人間と知り合いになれたからスタート地点も恵まれていた。さらに、ものすごい才能も存在感もある人間をボーカルに迎えることができた。元々優秀な人間は、ロックの世界でも「優等生」としてスタートを切るのだ。
そこまでやってもなお、MUSICUS!という作品は対馬馨には延々と試練を与え続ける。
いろんなお荷物を背負わせ、成功の目を片っ端からつぶし、しかもその結果に対して「対馬馨、お前のせいだぞ」「お前はこのままでいいと思っているのか?」と思わせるような展開を積み重ねてくる。「いろんなものをすべて捨てて一人になる」か「自分を捨てて周りと一緒に生きていくか」の二択を迫ってくる。安易な妥協は許さない。
結局、バンドをテーマとした作品なのに「対馬馨が集めたバンドメンバーだけ」の力で成功するという、他の作品なら当然あってしかるべきハッピーエンドは一つとして存在しない。エンディングではどれ一つ完璧な幸せをプレイヤーに提供してくれない。さらに言うと、そもそもハッピーエンドが用意されてないヒロインがいる。そのヒロインは主人公と出会ってしまったが最後バッドエンドしか道はない。(瀬戸口作品を知らずにプレイした人たちの中からちょくちょく悲鳴が上がっている。)
しかも、おそらく神様が気まぐれにサイコロを振ったら9割はバッドエンドに行くんだろうな、と思わされてしまうほど、対馬馨は放っておくとバッドエンドの方向に進むし、バッドエンドの方が対馬馨らしいというか説得力があると感じる人もいるくらいだ。
そのくらい対馬馨という人間は「大衆に受け入れられて成功する」だとか「自分なりの幸せを見つけて満足する」ということに不向きな人間なのだ。瀬戸口廉也作品の主人公というのは「CARNIVAL!」の学くんがそういったように「絶対に報われない片思い」に陥ってしまっている主人公が多いのだが、この作品の主人公もまさしくそのパターンであり、むしろかろうじて妥協した形でなら幸せをつかめるエンディングを用意してくれているだけでもまだ恵まれているとさえいえる。
※ちなみにMUSICUS!やってて「コレラ時代の愛」という作品を思い出した。私はこの作品がめちゃくちゃ好きで何度も観てるんだけど、この作品が良かったという人が少なくて悲しい……誰か好きな人いませんか?
そんな厳しいMUSICUS!の世界においてバカの金田はどのルートでも幸せを掴んでいるという事実が面白い
私は金田のことがかなり好きだ。
上で書いたように、まるっきり誰かさんみたいなやつだから。どうしようもないバカだけど裏表がほとんどないから憎めない。
そんな彼は、とあるルートでは周りの人に助けられて愛する人との家庭を持ち、同時にバンドとしても大成功。とあるルートでは対馬馨と庇護下から外れた後自分で努力してそこそこの成功を掴んだりしている。
対馬馨が、音楽以外の余計なものをすべて削ってギリギリまで音楽に自分をささげても9割の確率でバッドエンド、残り1割も求めているものを返してくれたりはしない残酷な対応を見せるのに対し言ってはなんだけれど、音楽に対しては対馬馨とは比較にならないくらい不真面目で行き当たりばったりな金田はどのルートでも、いろんな形で幸せを掴む。この対比が実に面白いなと思っている。
幸せって……なんだろうね
これはつまり、神様が厳しいという話ではなく(バッドエンドだけはさすがに神様が厳しすぎると思うけど)、対馬馨が自分に厳しすぎて、金田は自分に甘いという話なんだと思う。
徹底的に厳しくなければ到達しえない世界があるかもしれないけれど、厳しければ到達できるわけではない。現に対馬馨は「自分に厳しくする才能」だけは高かったけれど、音楽そのものの才能がなかった(=世間とあまりにも乖離していた)。そんな世界において、自分に徹底的に厳しくすることに果たしてどこまでの意味や価値があるのか。
私は最初は対馬馨に感情移入しながら読んでいたが、だんだんと金田を通して幸せってなんだろうって思うようになってきた。私自身、対馬馨のような生き方にあこがれていたのかもしれないが、今更になって、人なみの幸せというものにあこがれを持ってきたのかもしれない。
・・・風邪ひいて孤独に打ちひしがれてるときにやるようなゲームじゃなかったかもしれないな( ;∀;)
なんにせよ、すげー面白かったです。
人生悩んでるときとか心が弱り切ってるときにプレイすると、うっかり道を踏み外しかねない程度には危険なゲームなので元気な時にプレイしてみてください。
al.dmm.co.jp