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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「バトルグラウンドワーカーズ」感想(1~3巻)  人間味のある衛宮士郎みたいな主人公が印象的なロボットもの作品。「ワールドトリガー」が好きな人はマストバイ

おすすめ度 ★★★★

ただ生き残って、大きな声で言いたいんだ。俺たちは死ななかったし、死ぬ必要はなかったんだと。

戦うな、戦うなと教え込まれるような日々の後で。
無力感を越えて、本気で勝ちたいと思えた。
この欲望が俺には宝物なんだ
。勝ちたい。勝つんだ。

社会脱落者の主人公が、ロボットに乗ってチームのメンバーと協力して「亜害体」という存在と戦うというお話。

ちなみに兵士といっても、直接戦場に行くのではなく、南沙諸島のとある島にあるロボットと同期して戦う。

「機動警察パトレイバー」(漫画版)や「マージナル・オペレーション」、「ワールドトリガー」などの作品などが好きな人にはぜひ読んでほしい作品です


個人的に、竹良実先生の作品ってすごく好きなんですよね。。。

今時珍しいくらい、主人公の「動機」をストレートに描いてくれている作家さんで、ものすごくわかりやすい。
前作「辺獄のシュヴェスタ」という作品の序盤は特に素晴らしくて何度も読み返しました。
「地獄の中でも生き抜く高潔な意思」みたいなのを描いてくれる作家さんだと思ってます。

この作品の主人公エラの信念の強さ・まっすぐさとそれに裏付けられた圧倒的な行動力はとても魅力的でした。
「カリスマ」と呼ばれる人というのはこういう人のことを指すのだと思いました。
(今ってなんかカリスマ性皆無で言動もちぐはぐな人がインフルエンサーってなってるのが不思議ですよね……。)

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周りから見たら格好いい、強い、あこがれるような存在。
でも、本人はとにかく他のことが目に入らないくらい必死なんですよね。
その必死さ、一所懸命ぶりが、私のような人間の心を打つのだなと思います。



本作品の主人公は「胸を張って生きていくために自分の命をかける」という「健康のためなら死んでもいい」レベルの矛盾を抱えている

本作品でも、その「動機をまっすぐに描く」部分は変わりません。
ただ、主人公はカリスマ性は皆無で、むしろ一歩引いて周りの人間に奉仕するような柔らかい印象を与える人物です。

よく言えば「優しい」ですが、謙虚を通り越して卑屈といったほうが良いくらい自己肯定感が低い。

なぜなら自分は、今まで人から受けた恩に全く報いられていないと感じていたから。

父さんと母さんが命がけで守ってくれた。
じいちゃんとばあちゃんが必死で育ててくれた。
幸せな人生にしなきゃと思って、一生懸命やったつもりだ。

でも、何かが足りなかったんだろう。

情けないことに結局、30歳の誕生日……
俺は仕事を失っていて、何より一人だった。

「幸せ」は、途方もなく遠すぎて、もう目指せそうにない。
それでも生きていかなくちゃ。生きていくんだ。

だから、見つけようと決めた。
俺にでも手に入れられれて、幸せの代わりになるもの……
それがあれば胸を張って生きていけるというものを。

―あの時。
奥さんと子供、大きな犬、新しい家、それに、
家族の写真を感謝のしるしとしてみせることができるまっとうさ。

思ってしまった。
ああ…なんて、向こう岸のひとなんだ…って。

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そんな主人公が、胸を張って生きていくために選んだのは「兵士」となることだった。

最初は死ぬようなことはない仕事だと聞いていたのに実際は死と隣り合わせの仕事だった。同じく志願した人たちはみんなその事実に抵抗を示すが、主人公はむしろ目を輝かせる。

命を懸けて、誰かに尽くすという行為を持って、胸を張って生きていける実感を求める。

今までの人生、何かに選ばれたことなんかなかったのに、急にヒーローになれるとは思えない。

だけど!

それでもこの仕事をしたいんです。一生懸命やりたいんです。

誰から賞賛されたいというわけではなくて、自分が自分を誇りに思えること。そのためだったら命を懸けてもいいと思っている。実際本当にこいつそう思ってるんだと思わせるリスクのある行動を一話目から行う。
どこまで追い詰められたらこういう考え方になるんだろうね……。



人間の尊厳どころか命すらないがしろにするような悪劣な職場において、自分と仲間のために奮起する主人公

一巻の帯を見ると「青年誌で真っ向から巨大ロボットものを描いている」ということ自体がとても難しく称賛に値するものであるらしい。

でもそこは正直あまり興味がない。

それよりも一度ブラック企業で心を病み社会から脱落した主人公が、自分が唯一持っている命を武器としてSBRの「ジョニィ・ジョースター」のように、再度立ち上がって歩き出そうとする様を描いた作品として楽しんでいる。

環境は劣悪だけれど主人公はむしろ「他の人間ができないやり方」で前向きに取り組んでいく

・温かいものや正しい言葉が、通り過ぎていく時の寂しさを思うと、俺は…・

・努力は、裏切る。それは大人の世界では当たり前。それを受け入れてからが本当の勝負だ。

・誰でもやれることを、実際にやってくれる人が戦力なんだと思います。

・誰にでもできるようなこと。それが、その繰り返しだけがいつも、人を遠くまで連れて行く…

・前の俺は知らなかった。勝ちたいと思うこと自体、勇気がいることだって。

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「堂島さんは俺たちをコマとしか見ていない。でも……」

仕事を全うして、堂島さんにも屈しない。そういう方法があればいいってことですよね?

堂島さんの思惑とは違うやり方で、想定以上の成果をあげてやるんです!!

もちろん、主人公だけが理想が高くてもダメ。

命がかかっているのでチームメンバーはもっとドライです。

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それでも、みんな機会さえあれば頑張りたいと思っていた。主人公が頑張り続ける中でちょっとずつ感化されてくる。上司を嫌悪しながらも、皮肉やユーモアを交えながら自分や仲間が生き残るために戦っていく姿は、「バンドオブブラザーズ」を思い出してとてもグッときます。

微妙に恋愛めいた展開もあって、今までの社会で心が死んでいた主人公が戦いの場において、むしろ日常を生きていることを感じさせてくれますね……。



一通り主人公たちがチームとして機能するようになり、組織の中でも一目置かれる存在になるまでが序章ですが、序章のためだけに4巻も費やすくらい丁寧な作品であり、大きな物語になりそうな気がします。この先も楽しみです。