ご本人が「子どもにかなり酷なことをした」と書かれているように、これはかなり酷だと思います。子どもにとってももちろんですが、夫に対してもです。
子どもに酷なのはそれほど難しい話ではなく、子どもの前で配偶者の悪口を言うというお決まりのやつですね。これは性教育が終わっているかどうか関係なく、子どもの心を相当傷つけるものです。
配偶者の悪口を目の前でされたら、結構多くの子どもが傷つきます。私も幼少期、母親に傷つけられました。子どもが「それでもパパが好き」と答えている時点で、小島慶子さんの息子さんは母親から父親を否定されたと受け取ったのが推測できます。
このあたりを読んで、中島義道の「人を愛することができない」を思い出しました。
ひとを愛することができない マイナスのナルシスの告白 (角川文庫)
- 作者:中島 義道
- 発売日: 2007/02/23
- メディア: 文庫
両親の関係が破綻している家族において、子供がどういう風に家族や愛を信じられなくなっていくか……を子供の醒めた目で描いている怖い作品
この作品では、少年だったころの中島義道が、父を毎日のように責めさいなむ母親の姿を見続けた結果、家族というものや愛というものに対する不信感を育てていく様を描いています。
この作品のばあい、中島義道の父親は不倫すらしていない。
しかし母親からしたら、この父親は不倫なんかよりはるかに罪が重かった。
なぜなら、母親は「夫は自分のことを愛していない」と感じさせられたから。
この母親からしたら、まだ不倫をしてた方がましだった。
この父親は不倫もしないし、家族サービスもする。にもかかわらず彼女のことをどうでもよい存在のように扱う。彼女は自分が夫から愛されていると感じることが全くできなかった。
その苦痛が耐えがたいものだったというわけですね。
マジで7巻は今呼んでもすごい作品なので、この7巻だけでも読んでほしい……中島家の場合、妻はドラッグにおぼれるのではなく、自分の心を殺そうとする夫に何とかして反撃しようとします。
その罪によって、彼女は死ぬまで、自らの怒りで自分の身を焼きながらもずっとずっと夫を責め続けることになります。
とにかく怒るでもなんでもいいから「夫から自分に対する強い感情を引き出す」ことを目的として戦い続けたわけですね。
しかしそこまでやっても夫は一切応じない。
「彼女はそういう困った人だから」といって、彼女を好きに怒らせたままその怒りを受け止めずにやり過ごす。
ぱっと見は母親が一方的に父親をいじめているような感じなのですが、
実情としては妻が一生懸命夫の目を自分に向かせようとあがく、そんな展開でした。
そんな完全に破綻している夫婦関係においてもっとも悲惨なのは子供です。
こんな破綻した家族の一員であることを強制させられ、
家族愛だの夫婦の愛だのを全く信じられなくなっていき、醒めた目で二人を見守る子供視点からの語りは読んでいてめちゃくちゃしんどくなりますね……。
実際救いが全くないし並みの鬱ゲーなんて目じゃないくらいにエグイ話ですが
機能不全家族で育った人には「そうだ……あの時自分もこんな風に感じてた……」ってな感じで自分の気持ちを代弁してくれるような錯覚を味わえるかもしれません。
メイン読者が高齢者ばかりのはてなでは需要がないかもしれませんが、もし若い人がこのブログを読んでいるのであれば、一度は読んでみると面白いと思います。
- 作者:田村由美
- 発売日: 2018/05/25
- メディア: Kindle版
最近で言うと、「ミステリというなかれ」の整くんがこんな感じの機能不全家庭で育って完全にひねくれた子供になっています。
整くん、ここ最近の作品ではありえないくらいにひねくれててめちゃくちゃ愛せるので、ひねくれ主人公が好きな人はぜひ読んでほしいです。
夫婦間がその不仲をむき出しにしていると、その子供も人をあいすることが難しくなる
結果として、中島義道自身も人を愛することことができなくなってしまいます。
中島義道自身も、ウィーンで結婚した妻との関係がうまくいかず、ずっと妻から責められ続ける日々を送ります。
父親のようになりたくないなと思っていたはずが、同じような関係を繰り返してしまうんですね。
まぁ、この2作品については「中島義道が自分の鬼畜な所業の正当化に家族の話を持ち出してる」とかいろいろ言われてますけどねw
私はどちらの作品も心を病んでるときに読んでかなり爽快な気持ちになれましたので、
今でも子供時代に機能不全家族のもとで育って父親や母親に恨みがある人は一度は読んでみるといいと思います。
うまく言えないんですが、救いがない話だからこそ、読み終わった後になんかスカッとしますよ。
小島慶子さんの話は……まぁ割とどうでもいい
まぁそんなこんなで、小島慶子さんの件自体は割とどうでもいいのですが、
夫婦は子供が生まれた後はやっぱり子供のことちゃんと考える必要が出てくるわけで、小島慶子さんの話はまぁなんというか、いろんな意味でエグいなあと思いました(小学生並みの感想)