
- 作者:やまさき 拓味
- 発売日: 2017/05/26
- メディア: Kindle版
サイレンススズカについて、調教師や厩務員の側から見たお話が描かれている。
この作者さんは「優駿の門」においても厩務員と馬の絆をめちゃくちゃ重視して描いており、特に小林さんを騎手以上に馬と心を通わせられる唯一の存在として描いている。
そのくらい「厩務員」と馬の関係にこだわりがあることから、馬の話をする際にもそれを育てた調教師や厩務員に話を聞きに行くことが多かったのだとか。
実際、厩務員の話が出てくる回はとても読みごたえがある。今回はその良いところがしっかり出ている巻だと思う。
1話 サイレンススズカ
武豊がずっと言い続けていた事、「サイレンススズカは差し馬だ」逃げる形になったのは、彼が持っている天性のスピード能力の絶対値の違い故。
北海道平取の稲原牧場。
左回りの癖は母馬・ワキアと別れた直後から死ぬまでずっと続いた。
橋田調教師や加茂厩務員が矯正しようとあれこれ手を尽くしたが根負け。
また、死ぬほど寂しがり屋で一頭だと絶対に馬運車に乗ろうとしなかったので毎回誰かをお供につける必要があった。
天皇賞で骨折した後も騎手を振り落とさずに守ったという話はとても有名。
遺体は生まれ故郷の稲原牧場の横に眠っている。
2話 15歳まで走り続け99戦した馬 ミスタートウジン
厩務員の西谷氏との絆を中心に描く。
さすがに8歳からは勝ち星を挙げられないものの13歳でも4着に入る健闘ぶり。しかしやはり「動物虐待だ!」などの声は上がっていたようです。
11歳となった頃には厩舎に「可哀想だ、動物虐待だ」といった非難の電話も寄せられていた。一方で、毎年の放牧先であった白井牧場には、10歳を過ぎた頃から見学の問い合わせが増え、「トウジン様」宛の贈り物が届くようにもなっていた。高齢まで現役を続けた理由について、調教師の福島信晴と馬主の藤立啓一は、それぞれ次のように述べている。
福島「競走馬として生まれたからには、走れる限り、競走に出るのが幸せなんや。この馬が、仮にGIかGIIでも取っていれば、種馬になる道も残されている。けど、その時点では種馬になるのは無理だった。もし、ぼくの手を離れたら、もっと切ない結果になるやろう」
藤立「馬が走りたがっているんやから、走らせたろやないか、という気持ちやね。オーナーのぼくが諦めて、ほな、乗馬クラブへ出そか、と決断したとする。何カ月かは置いてもらえるかもしれんけど、それから先は、わからん。ぼくとしては、この馬にもうひと踏ん張りしてもらって、箔をつけてやね、引退の花道を飾らせたかったんや」
このオーナーはその後ミスタートウジンを種牡馬入りさせ最後まで生き延びるよう手配しているし本当にこの馬のことが好きだったんだとは思います。
結局100戦めはならなかったものの、中央で99戦11勝。獲得賞金ほぼ4億円まで稼いだ。
重賞勝ちもない成績であったが、馬主の藤立がミスタートウジンの子を強く望んだことや、福島がその子の受け入れを請け合ったこと、またマスメディアや競馬ファンから注目されたことで、引退後は種牡馬入りが叶った。初年度には2頭の産駒を出しており、うち1頭が勝ちあがったことも話題となった。種牡馬生活を送った3年間で3頭の牝馬から都合6頭の産駒が生まれたが、競走馬として大成した馬は出なかった。2002年10月1日、種牡馬を引退。その後は白井牧場に繋養されていたが、2007年5月に隣接する日高ケンタッキーファームに移った。2009年には同ファームの閉鎖に伴い日高町富川の乗馬クラブに移動し、エモシオンとともに繋養されていたが、同年の誕生日前にはもといた白井牧場へ移動となり、当て馬をしながら余生を過ごしていた。2013年12月17日、老衰により死亡
3話 ハイセイコーの死
オグリの前のアイドルホース。タケホープとのライバル関係が有名。
カツラノハイセイコやハクタイセイ、それからサンドピアリスらの父。
私は好きではないけれど当時こういう感じで愛されたというのはよく言われてますね。
4話 スペシャルウィークと二人の母
乳母役の馬はサラブレッドではなかったこともありスペちゃんを愛してくれなかった。
そのため、ティナといNZの女性が馴致から世話をしてくれた。
父SSと母キャンペーンガールはどちらも気性が荒かったがスペちゃんはやたらと従順で利口な馬だった。しかし、馬主の要請で日高大洋牧場から社台ファームに移されることになり、ティナとの関係は終わりを迎える。
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ダービーもそうだけれど天皇賞春秋連覇した間違いなく強い馬だったのに、浮き沈みが激しかった。この時も「勝ったのはなんとスペシャルウィーク!」といわれてしまう始末……。
5話 トウショウファルコ
グリーングラスの仔。走りは強くなかったがイケメン過ぎて誘導馬となる。
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1位はもちろんトウカイテイオーだが、純粋に見た目だけならトウショウファルコの方が格好いいと思う。ゴールドシチーがイケメン枠として入ってるのであればこちらも入れてほしい。
6話 タケホープ・ハイセイコーの陰に隠れた実力馬・イチフジイサミ
1975年春天で優勝したり、秋天でも2位とかなり実力馬だった。
タケホープには勝てなかったがハイセイコーよりも先着しているレースが結構あるのに、今では忘れ去られている。