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「サクラノ刻~櫻の森の下を歩む~」 私は長山香奈が好きでよかった…

まだ完全に終わったわけではないのだけれど一通り長山香奈の出番は終わったと思うので感想。


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7年前に書いた記事の通り、私は長山香奈と直哉の関係がどうなるかが凄く知りたかった。

長山香奈は、「SWAN SONG」の佐々木柚香と同じように、主人公にある日突然才能の差をつきつけられ、地べたにたたきつけられる。でも香奈はそこで諦めない。自分が凡才だと思い知って、天才との壁を思い知らされて、それでいてそこに信念を持って立ち向かおうとする。彼女が主人公に対してタンカを切り、実際勝負をしかけていく

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私は、この凡人である長山香奈が「天才」どもに向かってどういう挑戦をするのかが見たかった。

私は本作品においていちばん見たかったのがこれだったので、この点においては大満足です。

私は前作において草薙直哉より、夏目藍より、御桜凛より、夏目圭より、氷川里奈よりも私は長山香奈が好きだった。

彼女がメインキャラになることは絶対にないことがわかっていたけれど、それでも彼女が直哉に一矢報いるところが見たかった。彼女が直哉にとって何かしら意味のある存在になる展開が見たかった。

「サクラの刻」においてこの天邪鬼な陰キャの精一杯の意地と踏ん張りがちゃんと報われる展開を描いてくれて本当にうれしかった。

この作品が発売されるまで待ち続けて、本当によかった。

SCA自さん、ありがとうありがとう。

サクラノシリーズのざっくりしたあらすじ:家系図が複雑だがストーリー自体はめちゃくちゃシンプル

「サクラの詩」は「幸福な王子様(草薙直哉)とツバメ(夏目圭)」の物語だった。

草薙直哉は圧倒的な美術の天才であり、その才能を活かし全力で絵を描き続けてきたがそれは母の死までだった。
彼は母の死の後に生きる目的をなくし、そのまま消えてもおかしくなかったが
母が死に際に残した「呪い」によって生きながらえる。

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何のことはない。これは「グリザイアの果実」の主人公だとか「少女ファイト」で描かれたのと同じ話だ。

そして、彼はそこから奉仕の心で過ごす。
己を身体や精神を犠牲にしてでもいろんな女の子たちを救う。

なお、彼によって見いだされ救われた女の子たちはみな才能を持つ存在である。


r20115.hatenablog.com
このあたりはギャルゲーあるあるの話だ。その女の子たちの物語は極めて陳腐だ。


そうやって「幸福な王子」や「ローズウォーターさん」のように
己の持つものをすべて他者のためになげうって消え去ろうとする直哉に対し
己の命を賭して彼を救おうとするものがいた。それが夏目圭であった。


夏目圭は命を賭して直哉に戦いを挑み
直哉を一時美の道に引き戻すことに成功するが、
それで役割を果たしたかのようにこの世から去ってしまう。



これによって直哉の心はズタズタに引き裂かれてしまう。



この後の直哉は美の世界からは距離を取り
10年間一度も新作を発表せず、
ただの教師として弓張の街に根を下ろし
夏目藍とともに一般人として過ごすが……
というのが前作までの話。



そして、10年の時を経て時は動き出し
相変わらず人に奉仕を続けている直哉に対して、大きく2つの選択肢が突きつけられる。



「教師」としてこれまで通り他者に奉仕しながら穏やかな生活を過ごすか。
「芸術家」として、今度は自分を置いてこの世を去っていった夏目圭と再び対峙するか。



「教師」の道を選んだときはやはり他人の問題を解決する生き方を続け、穏やかな終わりを迎えることになる。
芸術家を選んだ場合のみ、前作「サクラの詩」のキャラクターが大量に登場し、激しいバトルが繰り広げられることになる。



本作品の魅力は、こういうストーリーの部分にあるわけではない。

どうだろうか。メインのストーリーラインだけ見たら本当に平凡な作品だと思う。

ストーリだけなら言っちゃなんだが「2005年」くらいにはもう掘りつくされたネタだ。

「かにしの」の方が面白いまである。

そこに独自性も新規性も何もない。

なんならSCA自さんの文章はめちゃくちゃ冗長でテンポが悪く、読みにくいので他よりも評価が低い。

エンタメ作品としては決して面白いとは思わない。

正直超大作的な扱いをされているのはあまり納得がいない。

本当の大作というのは「さくら、もゆ」みたいな作品の方がふさわしいと思う。




それでも私は「サクラノ」シリーズがめちゃくちゃ好きだ。

本作品が面白いのは問答部分である。

「才能」とは何ぞや。
「美」とは何ぞや。
「神」とは何ぞや。
「自分」とは何ぞや。
「人生」とは何ぞや。
「幸せ」とは何ぞや

などなど
いろんなキャラクターが自分の視点から己の定義を持ち
それを作品という形でバトルのように戦わせていく。

そして、それらのバトルや因果交流を美しい音楽やら絵画演出が彩ってくれる。

美術や哲学なんか無縁だった凡人である我々が
なんとなくでもそれらについて考えてみることができる。
何かしらの答えを得たような気持ちになれる。

あるいは、特定のキャラに思い入れることでそれらを追体験したような気持ちになれる。
この作品で描かれているこれは自分のことだと思い、
自分に対しても普段考えないようなことを考えてみたりできる。


それが、意外と楽しいのだ。
私は哲学なんぞにこれっぽっちも興味がないが
悪い言い方をすれば「美味しいところだけつまみぐい」をさせてくれる。
他の作品では得難い体験だ。


もちろん作者であるSCA自さんのフィルタがめちゃくちゃ入っているのでそれが合わない人も結構いると思う。
熱烈な信者が多い作品だが、一方でとんでもない駄作だとこき下ろす人もいる。
どっちも間違ってないと思う。


少なくとも私は、長山香奈の存在によってこの作品を肯定したいと思う。



総合的な作品評価

ある意味直哉が再び絵を描くようになる展開は最初からわかりきっていたからこちらについては「①どういう絵を描くことになるのか」「②どういう動機で絵を描きはじめるのか」「③過去のキャラクターはどう絡んでくるのか」「④稟と直哉は最終的にどこにたどり着くのか」という点だけしか興味がなく、こちらについて、①は期待値を上回ったが、②は期待値をやや下回り、③については正直かなりがっかりした。④は期待通りだが演出は思ったよりずっとあっさりしていた。


③についてはなぜかゲーム本編ではなく初回盤特典にてガッツリ描かれている(こっちを読めばものすごく満足する)ため、今からこのゲームをプレイしようとする人は少し割高ではあるが必ず初回限定版を買った方が良い。初回限定版はもうすぐ締め切りになるので気を付けよう。

■初回特典(外付特典となります)
1.フルカラー特別冊子
2.書きおろし小説冊子「凍てつく7月の空」

3.OPフルアレンジCD
4.書きおろしドラマCD「稟と雫と口と口」
5.モノクロ冊子


絵画演出や音楽については前作をはるかに上回る。
「サクラノ刻」をプレイした後「詩」をプレイするととてもチープに感じるだろう。
正直、絵や音楽だけでもこの作品をプレイする価値はある。

本作は総合的には自分の期待値を上回ったわけではないのだが
それでも、見たいものを見せてくれたし、中には期待以上のものもあった。


私はこの作品をプレイできて本当によかったと思っているしみんなにもプレイしてもらいたいと思う。



ああ、それにしても……

「ランス」シリーズは2018年に終わり
「カラノショウジョ」シリーズも2022年に終わり
「Badlr」シリーズも終わって2023年に戯画は解散することになり
「サクラノ」シリーズも2023年に終わってしまった。

もうこれで、エロゲーオタクとしての自分も終わりかなと思うと、かなり寂しい気持ちになる。