頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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アークナイツオムニバスイベント01「ウルサスの子供たち(完)」  瀬戸口廉也「SWAN SONG」が好きな人におすすめ

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本編が終わったので、次はサイドストーリーとかオムニバスストーリーを読んでいくぞウラー!


「ウルサスの子供たち」は世界観そのものが暗い「アークナイツ」の中でも特に鬱度が高いシナリオだそうです。

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コメント欄でめだかさんにご紹介いただいたので早速読んでみました。
これからも先輩ドクターの皆さんのおすすめを優先して読んでいきたいと思いますのでおすすすめもっとちょうだい!

8章でメインストーリー的にはウルサス編が終わったところなので、サイドストーリーの「ウルサスの子どもたち」をお薦めします。

時系列的には0章でドクター救出前に同じ地区の学校で起きた悲劇を描いてます。この話は使用できるキャラのオムニバスなので、キャラに思い入れがないと、ただただ暗い話ですがアークナイツの世界観を良く表してる良い話です。若干ネタバレ気味で申し訳ないですが、個別に記事になっていた「個々人が良いことをしようとした結果連鎖的に状況が悪くなっていく」という話を見せつけられます。

メインストーリーが6時間とかザラだったので2時間で読めるとか良心的すぎる……。
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推理小説のような構成となっており、こういう言い方をしてよいかわかりませんが「面白い」シナリオになっていると思います。

考察や情報整理はYT22さんの神解説ににお任せして……

yterapokemon.hatenablog.com

相変わらずとてもわかりやすい。今回はコメント欄も含めて必見ですね!


私は閉鎖空間・極寒・食糧難などの劣悪な状況で疑心暗鬼になった人たちが殺し合う「SWAN SONG」という物語が好きなのですが…


SWANSONGは今だとクーポン込みで1125円だよ!


本作はこのSWAN SONGの設定に

・本作はさらに階級社会における貴族と平民の憎しみあい
・外部では「戦争」が起きており死がまじかに見えているというストレス
・しかも大人が不在で子供たちだけで、自分たちだけで社会秩序を維持できない

というトッピングまで載せられていてより地獄度が増しています。

さらに、めだかさんの紹介のとおりこれらの状況の8割くらいは善意でできているのがまた悲惨さを増しています。

優しいパトリオットは学生を争いから守りたいと思って閉じ込めたんだ。ウルサスとの取引に使う算段があったのかもしれないね。しかし複数あった学校のうち一校(ペテルヘイム高校)だけ、「貴族と平民を一緒の学校に閉じ込めたら面白いことになるんじゃないか」と考えたメフィストのたわむれによって~~

「SWAN SONG」の場合、2つのルートがあります。殺し合いルートと、全員生存ルートです。

殺し合いルートに入った場合は一人を除いて全滅します。それでも、主人公たちは自分の善性を信じて運命に逆らいながら死んでいく。それは救いがあったのかもしれません。命は失うものの「正義」は決して状況に屈しなかった。きわめて文学的です。Bルートのラストシーンはボロ泣きしてしまいました。 当時の私はBルートのエンディングがあまりに印象的すぎて、殺し合いを回避してほとんどの人間が生存できたAルートは物足りないなと感じてしまったほどです。


一方で、本シナリオはそんな白黒はっきりしていません。「殺し合いルートを経由し、自分たちもその状況にあらがえずに生き残るために手を汚し、そのあとで日常に戻ってきてしまった」ルートです。


本作は子供たちが「助かった後、自分たちが行った行為がトラウマになって苦しんでる」姿が描かれています

・グム:Инертность (イニェルテナスチ,Inertnost) = 「惰性」
・イースチナ:Выбрать (ヴィブラーチ,Vybrat) = 「選択」
・ズィマー:Стагнация (スタグナーツィヤ,Stagnatsiya) = 「停滞」
・ロサ:Покайтесь (パカイチシィ,Pokaytyes) = 「悔悛」
・リェータ:Откат (アトカト,Otkat) = 「回顧」

しかもその描き方がいやらしい……。

子供によってはえぐすぎて実際にあったことは一切描写されません。そのキャラクターのトラウマから生まれる「異常行動」をもとに何があったかを想像させる仕組みになっています。正確に何があったかはプレイヤーですら確認できない。

だからこそ余計に生々しいんだよ……。



一人だけ引用しますが、他のキャラもほぼ全員地獄を抱えています。

なぜ「今」の話しか出てこないのか考えてみると、過去の話が一切できないぐらい、グムの精神状態が悪いのだろうなという答えに行きつかざるを得ません。飢餓状態になると暴走してなんでも食べてしまう「習慣」、3撃目はまな板を叩き割ってしまうほどのパワーが出てしまって制御不能なため、2撃目で止める「習慣」。そしてズィマーの「朝食の悪夢」に出てきた、生臭くて血がついたソーセージ


あまりの食糧難に、グムは***********仲間に振舞っていたのだろうと考えられます。

(中略)
ロドスに救助されてからも「習慣」が増えたと言っているので、グムの精神状態は良くなるどころか、悪化した時期もあったと考えられます。また、グムは自らをコードネームである「グム」と呼び続けます。他のメンバーは本名とコードネームの両方を意識する場面があるのですが、グムはグムです。彼女自身が本名「ラーダ」に触れることはありません。よっぽど過去のことを思い出すのが辛いのでしょう。

しかも、その子が「習慣」以外ではめちゃくちゃ明るくふるまっているのでぐえぇ……ってなりますね。



この考えはよくないのだけれどあえて書いておくとここ最近はてなで見かけた「弱者強者」の議論があほらしくなっていますね。
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これほどまでに地獄な状況を経験してしまうと「生きている」「生き延びた」というだけで自らは強者であり罪人なのだという意識に苦しんでしまう。実際に「生き残った」というだけで生存した子供たちを糾弾する「アブサント」という存在もいます。


やはりこの考え方では地獄の連鎖には歯止めがかからないということだけは確かです。



さらに、そういう「トラウマを抱えた子供たち」を周りが(今の状態では)誰も助けてあげられないことが語られます。

この子供たちを表現する際に「無力感」というキーワードが抽出されているのがまたすごい。


本作の子供たちは全員「限界状況」におかれ己の人間性を問われた。
そこで自分たちがとった行動が「間違いだった」と感じている。
全員そこで他人に打ち明けられない秘密を抱え、自分で抱え込まざるをえなくなった。

ヤスパースの「限界状況」を打破するには、同じ「限界状況」にある仲間と交わる必要がある。

トラウマを抱えているだけではなく、その秘密によって孤独になっている。
傷のなめ合いすらもできない。この状況で希望を持つことはとても難しい。


やはり、実際に救助の困難さを理解できてる人は「あなたのことが理解できるというのは良い言葉ではない」っていうよね…

ここから先は、実際にプレイした人が読み返す用です。

いきなりこの記事で目にするにはあまりにももったいないので、是非このシナリオだけでも記事上部の動画から見てほしいなと思います。

彼女達は、何と‥‥…説明したらいいか。他の人たちと少し違うんです。私たちにとっては普通で当たり前の状況の、ふとした瞬間に、彼女達のとてつもない感情を感じることがあるんです。もちろん彼女たちの感情はそれぞれ異なりますが、共通している部分もあります。もしその感情に名前をつけるなら、きっと「無力感」が相応しいでしょう。

実際、彼女たちはそこまで悲しんでいるわけでも苦しんでいるわけでも怒ってるわけでも絶望しているわけでもありません。ただこの比喩が正しいか分かりませんが、まるで形のない壁がそこにあるかのようなんです。普段はその壁は見えませんし、触れることもできません。ですが、彼女たちが前に進もうとすると、壁が彼女たちを阻みその場に押しとどめるんです。

この「無力感」がいちばん手の付けようがない状態だと思う。

そして、これは他人が助けることがほとんど不可能に近い。

彼女たちがロドスに資料を登録するにあたって私たちに教えてくれた経歴などの情報、それが私たちが知る権利のある情報の全てです。彼女たちには何か隠し事があるのかもしれませんが、隠しているならばなおさら私たちはそれを暴いてはいけないんです。

私たちがいま彼女たちを助けようと躍起になったところで本当に助けになるとは思えません


で、この辺りがちょうど私が昨日書いたばかりのことだったのでめちゃくちゃ共感してしまった。

ドクター、私は今になって心から思うんです。
「あなたのことが理解できる」というのは良い言葉ではないって。
ですが多くの人がそんな言葉は使えます。
そう言いさえすれば慰めの義務を果たせる、あるいは相手が心の扉を開けてくれると勘違いしてるのかもしれません。
他人の感情を理解するのは本当はとても難しいことです。
助けになるのは理解する以上に難しいでしょう。


ここまで理解したアーミヤは、最初は彼女たちがロドスのオペレーター登録することを拒否していたが一転して、彼女たちのオペレーター登録を自分から認めた。

過去の経歴を彼らと共有していない限り、私たちの言葉は彼らには届きません。
私達が正しいと思うことをしても、それが彼らの求めていることにはなり得ない場合もあります。

彼女たちを保護の対象とするのは、私たちから見れば彼女たちのためです。
結果的に彼女達の安全保障することもできるでしょう。
ですが、それだけでは彼女たちが完全に回復することはないと思ったんです。

もし今、自分が相手を助けられる立場になければその立場を作ればいいということですよね。
(中略)
こうやって考えることすら傲慢なのではと思ってしまいますが。
ですが、今の私にはもう他の手がないんですそれ以外の方法を知らないんです。
私たちにできるのは、彼女たちの選択を尊重し、私のそしてロドスのやり方で彼女達を守ることです。

痛みを和らげ、傷口を治療できる薬を使えば、全快する病気や怪我もあります。
ですが、それまでに受けた痛みと苦しみを消すことはできません。

私、いつも思うんです。

私たちロドスが、たとえほんのひと握りの人であってもいい。
誰かが過去に受けた傷のことを忘れさせてあげられたら。
それを考えないようにしてあげられたらいいなって。
でも、それはとても難しいことなんですよね。この道を歩んでみて初めて気づきました。
彼女たちが私たちに心を開いてくれたら、私たちが彼女の力になれたら嬉しいです。
ロドスが彼女達の新しい故郷になったらいいな

何度か過去にブログで書いてきたことがありますが、私は過去に傲慢にも「人助けをしよう」と思って(ホワイト企業で務めてるのに嫌気がさして心を病んでいたというのもありますが)そういう仕事に挑戦したことがあります。自分なりには人生の中で一番頑張った時期でしたけど、一番無力感を味わった時期でした。
でも、あまりにも、考えが甘かった。 毎日深夜まで残業するくらい働き続けて、何とかその人のために、と思ってやってたけど本当に難しかった。とにかく、宇宙人と会話してるような感覚で、疲労もあって自分の方がおかしくなりそうになったので逃げるようにしてやめました。断片的にしか語れないことで察してほしいんですが、割とトラウマになってます。

物語の中とは言え、私にできなかったことをロドスは、そしてアーミヤはずっと続けているのだと思うともうなんか尊みがあふれて崇拝したい気持ちになりますが、まぁこれはこれで思考停止するとやばいので、あえて批判的にみつつ、ロドスの戦いを見届けたいという気持ちがすごく強く湧いています。


「ランスシリーズ」が終わった後の数年間生きがいがなくなったと思っていましたが、「アークナイツ」はもしかしたらランスの次になってくれる存在かもしれない……。


子供たちのその後

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これはもうちょっと後になって読みたいと思います。