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「バービー」はプロが全力で作った二次創作合同誌みたいな作品だと思う。ついでに「マブラヴオルタネイティブ」と比較してみる

話題の映画「バービー」を見に行ってきました。


先に結論。面白かったし、自分で見に行って良かったなと思いました!

私は作品を読む前に、事前にいろんな解説を読んだ。でも、結局自分の感想と同じものはなかった。

皆さんも、これは自分で見るとほかの人と違った感想を持つ作品だと思うから、ぜひ自分で見てほしい。

そして自分で考えてみてほしいと思う。

作品のテーマ性とかは自分なりに思うところはあるけれど、それは実際に映画を見た人が自分で引き出せばいいと思っている。

この作品のテーマ性はこれだ!みたいな話は他の人にお任せしたい。

私はこの作品は「バービーが好きな人たちが集まって作った合同同人誌」みたいなお祭り作品だと受け止めた。

いうなれば、「FGOラブイチャ合同」とか「シャニマス・黛冬優子合同誌」「エロゲー30人30説」みたいなもんだ。

なので、テーマ性うんぬんよりもまず「ディズニーランドのようなテーマパークにカオスを持ち込んだ楽しい作品だ」ということは強調しておきたい。

catfist.hatenablog.com



もちろん作品のベースは監督の世界観である。

しかし、その中でバービーに対して思い入れがある俳優さんやスタッフたちが
自分の人生を反映しながら「私にとってのバービーはこういうものだ」を思い思いに反映させていっている。

www.cinra.net

私にはプロデューサー、出演者としてマーゴット・ロビーがいるという、アドバンテージもありました。この映画は、彼女がつくりたい映画でもあった。もしマテル社がこの映画をつくりたくないなら別にいい、私は「バービーの映画」をつくりたいんじゃなくて、「このバービーの映画」をつくりたいんだ、という気持ちでした。

私の母はバービーが好きじゃなかったから、私が遊んでいたバービーは、近所の子たちからのお下がりでした。そのバービーは髪が切られたり、裸にされたりしたものでした。そういうふうに乱雑に扱われてきたバービーが、私のバービーだったんです。だからそんなキャラクターをケイトと一緒につくることはとても素敵なことでした

同じバービーについて語っても、解釈や思い入れは人によって大いに異なる。

ベースは女のコたちにとっての夢の楽園であるピンク色に染まった世界観であっても、監督や出演者たちにとっての「私にとってのバービーはこうだ」というノスタルジーや思い入れが合わさることにより、ある程度の多様性は表現できていると思う。

本作はそういう意味で「バービーオタク」たちによる二次創作であり、きわめてオタクとの親和性が高いとみることができる。

当然プロ中のプロが作っているから二次創作のレベルはめちゃくちゃ高い。 

映像も音楽もとにかくハイレベルで見ているだけで楽しかった。



ただし、この作品はオタクの同人誌とは決定的に2つの点で異なる

・出演者はみな何者かになった人たちであるということ。

・そして、出演者がバービーにのめりこんでいた時期は遠い過去であるということ

この二つが決定的に異なる。

ハリウッドで成功した監督や、女優たち。そういう人達からみたバービーしか反映させることができない。そして、現在リアルタイムではまっているキモオタたちほど熱量や湿度や視野の狭さは感じられなかった。

子供のころの思い出だから、それほど解像度も高くないし、妄想の力も弱い。 全体的に子供っぽくて、それゆえにキラキラしている。なので、基本的に「バービー」は素晴らしいし、良い思い出とともにあるし、争いもあんまりない。解釈違いで殺しあったりもしない。

あくまで子供のごっこ遊びのような空間が演出される。

普通の人はこれでも十分楽しいのかもしれないが、はてな村のサツバツさに慣れている私としてはこれだけでは面白くない。そもそもごっこ遊びで一番面白いのは「自分の妄想」である。どれだけきらびやかな映像や美しい音楽で演出されても、他人の妄想である限り100点満点にはならない。



なので、最初は楽しくても、30分とか1時間とか見ていると飽きてくる。



じゃけん、話を盛り上げるために闇の部分が導入しましょうねーって話になる。

まぁともかく、解像度が低いゆえに純粋で幸せで光にあふれていて完成されていたのが元のバービーランドだった。

ところが、主人公である「汎用バービーとケン」は、現実社会に旅をして余計なものを持ち帰ってきてしまう。これによって世界はどんどんほころびていってしまう。

闇の部分を担うのは「現実の人間社会における女性の苦しさ」だとか「非モテ男たちの悲哀やルサンチマン」みたいなのである。

バービーランドの解像度はやたらと低いが、こちらの描写はかなり解像度が高い。現実世界の母と娘はコミュニケーションがうまくいかなくて喧嘩するし、仕事でもうまくいかないことが多くてくたびれている様がおもむろに描かれる。バービーランドの女性は他者を肯定しあって誰とも争わないのに、男たちは支配欲が強く嘘つきでずるがしこい、それでいて女性の色気仕掛けに踊らされて簡単に争わされる間抜けな存在として描かれる。


これを見て「フェミ映画だ!」とか憤る人もいるんだろうけれどそうじゃないだろう。これは単に解像度が違いすぎるだけだ。


子供たちのおままごとの世界(元のバービーランド)に、現実の大人の解像度を持ち込もうとする終盤の展開は賛否両論ありそう

この作品を見ていて私が思い浮かべていたのは「マブラヴオルタネイティブ」「プリズマティカリゼーション」「パンドラの夢」「はるまで、くるる」などである。

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エロゲーでこの構造の話は何度も何度も何度も何度も何度も見てきた。




特にわかりやすいのでマブラヴを例にとって話す。

マブラヴは三部作である。「EXTRA」「unlimited」「Alternative」の3つに分かれている。

平凡だけれど幸せな日常が描かれていた「EXTRA」編からスタートする。こちらがバービーランドだ。

そこから宇宙外侵略種との戦争を描いた「unlimited」編に移行する。こちらが現実社会。

二つの世界は別々なのだが、主人公は「unlimited」社会の因果を持ち込んでしまう。これによって「EXTRA」編の世界も崩壊していく。

マブラヴの場合、主人公は「unlimited」編の世界に戻って世界の問題を解決しようと奮闘し、どちらの世界も救おうとする。これが「Alternative」編となる。




映画「バービー」は未完の作品である

物語の構造だけで見るなら、バービーとマブラヴシリーズは途中まで同じだ。


ただし、マブラヴシリーズの主人公はどちらの世界も救い切るまで戦い続ける。結果として、主人公は成長したうえで、元の世界のすばらしさを認識し、世界を愛しく思いながら幸せな世界を生きることができる。

一方で、バービーはここまで描き切ることはできていない。



EXTRA世界にとどまって、強引な方法でEXTRA世界の問題を一時的に解決するところまでは進んだが一人unlimited世界に旅立つところで終わっている。

物語としては「私たちの戦いはこれからだ」という打ち切りエンド的な終わり方になっている。

これだけだと社会への風刺映画としては弱く、物語としてはまだ本編の入り口に立っただけ。

だから、私はこの作品については「クオリティはものすごく高かったけれどバービーの二次創作合同誌」という評価どまりになる。


ただし、未完であるということは、これからの続きは観客が自分で考えてよいということだ。というより、この作品を作った人たちは、むしろ観客に考えてほしいからここで終わりにしているのだろうと思っている。



こういう作りなので、この作品をどう受け止めるかは観た人次第である。どれだけもっともらしく書かれていても、他の人の書いた映画感想は自分のものとは違うだろう。だから、自分で見に行ってほしい!



「ワーナーブラザーズの広報がやらかしたやばいやつが気に入らないから見ない!」という人は仕方ないけど、個人的にはかなり面白かったよ。



<その他参考にした記事>

shiba710.hateblo.jp
japan.thenewslens.com
www.gqjapan.jp
togetter.com
www.elle.com



(蛇足)本作品は、小野寺某や町山某のような存在を否定している作品といってもよいと思う

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