ここが原作におけるクライマックスシーンなんだけど
ずいぶんあっさりと終わってしまったな、と。
多分「感受性」だけをいくら鍛えようが、必要な情報が足りなければ
わからないものはわからないと思いますので9話をより楽しむために微力ながら補足解説をば。
カットされたシーン
尺的にしょうがないとはいえ、まさか
①「エンジェリックハウル」の真相
②一姫はどのようにして助かり、なぜ「タナトス」になったのか
③一姫はいつどのようにして「タナトス」として覚醒したのか
④というか「タナトスシステム」ってどういう仕組で何ができるのか、なぜ重要なのか。
⑤「タナトス」として覚醒した後の一姫は何を考え、どう行動していたのか
⑥5人衆が救出作戦してい間、一姫は何と戦っていたのか。雄二を助けるということはどれほど厳しい状況だったのか。一姫はそんな状況にどう抗ったのか
が全部カットされてしまうとは……。
確かに純粋に雄二の物語として考えると必要ないとは思うのだけれど、これ全部すっ飛ばされて雄二と一姫の出会い見ても、すごくあっさりとした感じじゃなかったですか?
このあたりを是非想像でいいので考えてみてください(需要あれば解説します)
二人の再会シーンまでは「一姫」の物語
根本的に、ここまでの物語を雄二の物語だとか、5人娘が活躍する物語だとして扱ってしまうと
どうしても物足りなさを感じてしまいます。
私は下記の記事でこう書いたとおり
グリザイアシリーズの一姫の生死について - この夜明けまでに
お姉ちゃんこと風見一姫が、全てをかけて愛する弟を救うために執念でありとあらゆる準備を整えて、雄二を救うために世界を敵に回して戦う。それが「グリザイアの楽園」、ひいては「グリザイアシリーズ」のスタートラインなのです。
「グリザイアの楽園」は、この再会シーンまでは「一姫」が主体の物語であると考えています。雄二は救出されるのを待っているヒロインであるし、5人の少女たちは個人の信念に基づいて行動しているけれど、それを動かしている根本はタナトスである一姫だった。
一人の天才が、恐るべきほどの才能とリソースと執念を注ぎ込んで紡ぎ上げた筋書き。
それがこれまでの「グリザイアの楽園」だったわけです。
完璧で在り続けた姉に、決定的な矛盾が発生した瞬間だった。
ここまで弟を溺愛してしまえば、もう変わることは出来ない。
変わることが許されない。
自分を帰ることが出来ないのなら、周りを変えればいい、世界を作り変えればいい。その瞬間、この世の全てが、何もかも、全部、どうでもよくなってしまったのだ。
新しく世界を作り変えることができればいいと思った。
この世に楽園なんてない。
なければ作ってしまえばいい。
弟と、自分の為に、新しい世界をつくろうと、姉は決めた。
そのために、ここまでの苦労を1から組み立て、実行したのだ。
しかもここまでやった上で、最後の決断は自分ではなく雄二に任せるところが憎い。
一姫だったら無理やり雄二を自分の思う方法で幸せにすることも出来たけどそれをやらない。
「雄二のために
雄二からずっと奪われていた、自分の人生の主人公でいる権利を取り戻し
それを雄二に返す」ということが一姫の目的だったから。
今まで選択肢を与えられなかった雄二が初めて自分のためだけにした選択
主人公チェンジのシーンはギャグ調で描かれていますが、最初から一姫はそのつもりだった。
今まで雄二は自分の意思で、自分のための選択をすることが出来なかった。
常に自分の意思を抑圧され続けてきた。
①姉に守られていた時は姉の言いなりだった。(一姫はひどいお姉さんですよ)
②姉がいなくなり父のDVに晒されていた時はもちろん常に父に脅えながら従うしかなかった。
③母の死に際でさえも、死の臭いを感じていても母が命じたとおりに行動するしかなかった。
④ヒース・オスロに引き取られた後は文字通りの地獄だったし
⑤そこから脱出して麻子に引き取られた後も、
命を救うためとはいえ、麻子の暗示によって縛られることになった。
「グリザイアの果実」編は実質麻子の命令に従っていただけのようなものだった。
そうやって、常に雄二を縛り続けてきた呪縛を、一番最初に縛り付けた姉が解放する。
(これで一姫が死んでしまったら1000th Summerなのだけれどそういう話ではない)
一姫は単に雄二を救うためではなく、
自分が奪ってしまった雄二の心を返すために、彼に自由を与えるために奮闘した。
お姉ちゃんキャラは数あれど、ここまでやってくれる人はなかなかおらんでしょ、と。
普通だったらドン引きするレベルでダダ甘なお姉さんなわけだけれど、
雄二の悲惨な遍歴を考えると、彼を救えるのは一姫しかいなかった。
また、その一姫をもってしても、単独では雄二をすくいきれなかった。
第一命だけ助けても本人に生きる意思や目的が無いとダメだからね。
生きる目的や理由を与える。これは麻子が成し遂げられなかったこと。
(麻子は緊急回避的に死ぬ理由を奪うという形をとったので仕方なかったのだけれど)
その足りない部分を、雄二が救ってきた女の子が補うという構造になっている。
助けてくれて感謝している。お陰で、俺にもまだ帰る場所があることがわかった。
心配するな。死ににいくつもりはない。必ず帰ってくる
単にお姉ちゃんという神様が自分を救ってくれるというご都合主義だけではないです。
どんな理由があっても生き延びて、力をつけて、
その力で人を助けて、そういうめぐり合わせがあればこそ成し遂げられる物語。
それがここまでの「グリザイアの楽園」だった、とかんがえると結構熱いと思いませんか?
一姫からの問いかけに胸を張って応える雄二くん
雄二……これからあなたはどうする?どうしたい?
選択肢は2つよ。
1つめは爆弾を腕ごと切り落として島へ逃げこむこと。
あとは私が全部なんとかしてあげるわ。
私が一生あなたを守ってあげる。
もう一つは、あなたが自分でヒースオスロとの決着をつける道。
戦うことも勇気なら、逃げることもまた勇気。
今の貴方なら、この言葉の意味は理解できるわよね?
そんなわけで、このシーンに対して
「今の貴方=雄二」にどれだけ入り込めてるかで結構違いがあるよね。
このあたりを考えながら9話を見返してもらえるとより楽しめると思いますがいかがでしょう。
さらに興味を持たれた方は、是非原作をプレイしてみてくださいませ。
参考:これまでに書いたグリザイア関連記事
グリザイアの楽園5話 風見雄二が壁に書いていた内容 - この夜明けまでに
グリザイアの楽園1話 「カプリスの繭」について - この夜明けまでに
グリザイアシリーズの一姫の生死について - この夜明けまでに
グリザイアの楽園 「エンジェリック・ハウル」における一姫への違和感について - この夜明けまでに
http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2014/12/23/204949 - 2014年12月28日 18:03 - ウェブ魚拓
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