炎上対策に関しては、「他人をどうこうしようとする」記事ばかりが目立ちますが、それを炎上した時に実践できている人は見たことがありません。というか不可能です。不可能なことを自分だけはできると思っているからそういう記事を書くのだと思います。
それよりも「炎上した時に自分の心理状況がどのように変化するのか」を理解しておいたほうが良いと思います。炎上時に生死を分けるのはイナゴの群れをどうこうすることよりも、非常時に自分を制御することができるかどうかにかかっているのだから。
そんなわけで災害にあった時に人に起きる心理変化について「否認」「思考」「決定的瞬間」という3段階にわけて分析している本がこちら。
◆炎上時に「生き残る判断、生き残れない行動」
この本の内容を「炎上」に当てはめてみると。
否認
人はこの状態になることによっていきなりパニック状態になることを防ぐことができる。そういうメリットがある反面、この状態では動きや対応がのろくなり、判断を誤るきっかけになるため、このステージで起きることを理解し、できるだけ早く「思考」にたどりつくことが必要。
・正確に事態を把握することを拒否し、何もおきていないと自分に思い込ませる。
・普段よりハイテンションに振る舞い笑いが目立つ人と、極端な沈黙状態に陥る人に二分される。
・不自然なほど余裕ぶった態度を取り、相手を挑発し始めることすらある。
・「解離現象」 起こっていることを起きていないかのように扱い、現実と違った認識を披露し始める。
・「レイク・ウォビゴン効果」という心理作用が発生し、根拠なく自分たちは特別だから大丈夫だと思い込もうとする。
・軽度の炎上を繰り返してきた人ほど今までの経験から「今回もこのくらいで収まるだろう」という楽観視を行う。
通常は人はリスクを確率×結果」で判断するが、災害時は「確率×結果×不安あるいは楽観」で考える。不安か楽観は「制御不能+馴染みのなさ+想像できること+苦痛+破壊の規模+不公平さ」でとらえられ、許容できない不安は否認される。
・徐々に恐怖に満ちた現状認識と機械的な服従の間を揺れ動くようになる
「なぜこの事態が起きているのか」がわからないと人は行動できないため、この時の「否認」がどれだけ「思考」を邪魔しないかによって、「決定的瞬間」における行動は変化する。
思考
実質的にはこの「思考」の段階は災害前の「訓練」や「生活習慣」に左右される。この時に落ち着いて考えられる人はそう多くない。「否認」に負けないように普段から災害時の選択肢をしっかり把握しておき、その中で何を選択できるかが生死を左右する。
・システム1とシステム2。迅速だが大雑把な処理体系であるシステム1と、遅いが精巧なシステム2があり、システム1は重要。ただしシステム1が「否認」に乗っ取られているとほとんど役に立たなくなる。
・人は恐怖反応によって肝要でないいくつかの体機能を放棄することで、残りの機能を強化する。
・「生存ゾーン=必要な行動を取れる領域」があり、これは経験と訓練で広げることができる。
・災害時にはシンプルな思考や行動指針が必要。複雑なルールを設定しても実践はできない。
事前にシンプルな行動指針を立てて、準備や訓練をしておかないと対応できない。
炎上時に立ちすくんだり誤った行動をする人は普段から
・「集団」になると冷静さを回復しやすい代わりに行動が制約されるリスクが大きい。
・災害時に思考を「回復」できる力がある人には3つの特徴がある
・人生で起こることに自らが影響を及ぼすことができるという信念
・人生に波乱が起きてもそこに意義深い目的を見いだす傾向
・いい経験からも嫌な経験からも学ぶことができるという確信
逆に、普段から無力感を感じ、嫌な経験からは学ぶことを避け、困難時に目的を持てない人は思考停止状態に陥りやすい。
決定的瞬間
実際に行動に入った段階の話だが、この状態で「死につながる行動」を把握しているだけでも、思考停止状態でそちらに向かってしまうことを防げるかもしれない。
・「否認」「思考」を経て以下の行動に辿り着いた人間は死ぬ。
・パニック =対策の誤り
・麻痺 =無策
・(悪い意味での)英雄的行動 =燃料の追加
助かるのは、
・普段から対策を準備し、それに従った行動を取ったもの(凡人にとってはガイドラインや訓練が必須)
・炎上した時でも冷静な思考を回復し、自由の判断で行動できるもの
「人々は生きているときと同じように死んでいく」(リー・クラーク)
まとめ
結局、炎上が起きてから思考を開始するような人は基本的に助からない。
炎上を起こす前に、炎上のリスクを軽んじないでしっかり対策を考えることが必要ですね。
ま、ネットの炎上で命取られることはないし、失うものがないと思うなら好きにすればいいと思います。
参考事例
http://megalodon.jp/2015-0716-1001-53/d.hatena.ne.jp/TM2502/20120707/1341614502