はあちゅうと #metoo への批判 ハラスメント社会を変えるために共感を広げるには
を読みました。
まず、はあちゅうさんの告発の経緯の部分の説明は簡潔で納得度が高いものだと思います。これ読んだらいい加減、「本の販促のためだ」というのはさすがにもう言えないと思います。悪意を持ってとらえるにしても「岸勇希さんへの対抗策を講じなかったBuzzFeedさんが無能」くらいが限界であってはあちゅうさんの故意という意見は完全に否定されるべきです。今後、それでも「はあちゅうの販促だよ」って言う人は、もう事実なんてどうでも良くてはあちゅうを叩きたいだけの人、ということになるでしょう。
他に引用されている記事も素晴らしいです。引用されている記事はどちらも読む勝ちがあると思う。
When #MeToo Goes Too Far - The New York Times
#MeToo が嫌いなあなたへ
引用されている記事そのものは素晴らしいのだけれど、その記事を引用して書かれているbuzzfeed 古田さんの記事についてはあれれ?ってなる
繰り返しますが、引用されているふたつの記事自体はどちらも素晴らしいと思います。
ただ、私は先にBUZZFEEDの記事を読みました。そのあとに、この2つの記事を読むと、明らかにbuzzfeedの記事の主張とズレを感じたんですね。
あれ、「buzzfeedは、この記事をそんな風に紹介してなかったよな?」って思ってあれれ?となったんです。
BuzzFeed編集長である古田さんは、それぞれのこの記事の主眼部分と違うところを抜き出して、自分の主張に利用していると感じました。
そういう引用の仕方をするのは必ずしもダメと決まってはいないかもしれませんが、こういう変なことをされると、「なんか意図があるな」って考えちゃいますよね。
1 記事の趣旨を無効化するような引用の仕方
1つめのNew York Timesの記事の主眼はこの部分だと思います。
記事のタイトルだって「#MeTooが行き過ぎた時には」だし、記事の趣旨は「重大な犯罪と小さなものは区別されるべきだけれど、自分たちのことだけいいすぎて、他の人の意見を黙らせようとすると(STFU)運動自体が上手くいかなくなるよ」って言ってるわけですよね。私が「佐々木俊尚や糸井重里さん、深津貴之さん、フミコフミオさん」など、今まで活動をダメにしてきた人に共通して見られた態度と指摘した部分です。
やっぱり、アメリカだとそういうアタリマエのことが指摘されるわけですよ。日本のネットインフルエンサーはなぜかそういうことを指摘すると感情的でロジカルじゃない、などと見下す人ばかりで残念です。
It will not serve the interests of women if #MeToo becomes a movement that does as much to wreck the careers of people like Henderson as it does to bring down the Weinsteins of the world. Nor will it do much to convince men that #MeToo is a movement that is ultimately for them if every sexual transgression, great or small, vile, crass or mostly clumsy, is judged according to the same Procrustean standard.
Now to the inevitable rejoinder: You’re a guy. What do you know? Or, as Minnie Driver told The Guardian: “The time right now is for men just to listen and not have an opinion about it for once.”
Listening is always essential. But one-way conversations go down about as well with most men as they do with most women, and #MeToo isn’t going to succeed in the long run if the underlying message is #STFU. Movements that hector and punish rather than educate and reform have a way of inviting derision and reaction.
Every woman, and every thoughtful man, is rooting for #MeToo to succeed, not just by exposing male misbehavior but also by transforming it for the better. It won’t get that far if people like Gillibrand and Driver drive its high ideals and current momentum into the ground.
で。
いちおうBuzzFeedさんもこの部分を紹介はしています。ただ、この部分が記事の主眼部分のはずなのに、「一方で、前述の「When #MeToo goes so far」 には、こうも書かれている」と、この部分より前半の導入部分のほうが大事であるような引用・紹介の仕方をしている。
まぁいちおうNew York Times自体が両論併記的な記事だからいいのかもしれないけれど、「順番」が気持ちよくない。
2 唐突に引用して何の言葉も添えない。しかもやっぱり主眼部分と違う
2つ目の記事についても引用の仕方に違和感があります。
そして、もしもあなたが#MeTooに興味がないなら、ブラックな働き方やセクハラやパワハラや人権侵害が横行しても声をあげることができない世の中に住み続けたいか、助けを求めると袋叩きにあう世の中に暮らしたいか、自分の子どもをそこに送り出したいかを考えてみてください。答えがYESなら、あなたはそうやって暴力を振るってきた人間でしょう。もしもNOなら、あなたは #MeTooの一員なのです。そう、あなたが男性でも、性暴力の被害者でなくても。
buzzfeedはこの部分を引用しているが、これは小島慶子さん的に望ましい引用の仕方だなんでしょうか。そもそも、BuzzFeedさんの文章を読んでいたら、小島さんの記事の引用は必然性がなく唐突な上、それに対する古田さんの意見もない。なんのために、この記事からこの部分を引用したんですかね? 少なくとも、私は自分が小島さんの立場だったら、自分が書いた文章についてこういう引用のされ方をするのは嫌だなぁと思いました。
サブタイトルに「男性が女性を叩き、女性が男性をなじっても、世の中は変わらない」と書いてあるわけだし、小島慶子さんの記事を取り上げる時、特段の理由がないのであれば引用すべきは「MeTooは男も女も区別しない」「男と女でいがみ合わないで欲しい」という部分を引用すべきだと思うんですよ。
「男を悪者にするな」と男性が女性を叩き、「女をひどい目に合わせたのはお前だ」と女性が男性をなじっても、暴力と支配に泣き寝入りする世の中は何も変わりません。ますます声があげられなくなるだけです。なぜ、声があげられないのか、なぜ、暴力や不正がまかり通るのか。それを可能にしているのは、社会のどんな仕組みや慣例なのでしょうか。「男も女も老いも若きも、どんなにひどい目にあっても黙って耐えるのが美徳です」と刷り込んで、一番得をするのは誰なのか、よく考えなくてはなりません。「もう、そんなのたくさんだ!」と声をあげるときが来たのです。今の日本にこそ、それは必要ではないでしょうか。
「男の人であるあなた方も声をあげてええんやで」っていう趣旨の部分を引用するのが自然だと思うんですよ。なんで、あえてその「人の分断を狙っているような表現」の部分だけを切り出したんでしょうか。読み手からすると、唐突に今までとつながりがあまり感じられない引用をした上、それについて古田さんは一切補足説明もしない。それってもう本当は古田さんの意見だけど、なんか反発されそうだからあえて小島さんの記事を引用して小島さんに盾になってもらう、ってことなんでしょうか?
そもそも、その点について小島慶子さんがOKと言ったとしてもまだ違和感があります。
BuzzFeedさんは、NewYorkTimesの記事から
一方的な会話は、多くの男性が女性にそうしているようにダメになる。「#MeToo」も、それが「黙れ。私の言うことを聞け」ということを意味するようになるなら、成功しないだろう。
という部分を引用したわけですよね? 意見の押しつけになるようなことを言ったら反発を招いて運動が失敗する、という知見を引用したんですよね?その後で、「MeTooに参加するか、そうでないならあなたは暴力をふるってきた側の忍伝です」などという二択を迫るような部分を引用するのは、記事内で矛盾が起きていませんか?
小島慶子さんの記事自体はまともなのに、この部分だけ抜き出したら「異論があるやつは敵だ」=「黙れ、私の言うことを聞け」ってメッセージになっちゃうじゃないですか。なんで「こういう態度はダメですよ」って記事を紹介したその記事内で、古田さん自身がそのダメなことをやってるんですか? それって矛盾じゃないんでしょうか。
とはいえ、私もマンガからよく記事を引用するけれど、こういう風にあちこちから引用する時に、バッティングが起きるのはよくあるので、そのあたりはプロの編集者でも難しいのかな、くらいの理解でいいのかもしれません。
小島慶子さんは聡明な方だと思うし、今後は彼女を中心にして運動するのは良いことだと思います
とりあえず、海外の動きとしては
#MeToo 運動について思うのは欧米では言論社会が男女や左右の対立から上下の戦いに完全に移行したということ。日本もじきにそうなるだろう。そういう意味で、はあちゅう氏やヨッピー氏、田端氏はむしろ駆逐される側
ということのようです。
小島慶子さんはそのあたり理解されてて「まずは岸を叩く運動に協力しろよ」といったり、男女の間どっちもどっち状態に陥りそうなところを、ちゃんと男性も女性も、弱者どうし連帯しましょう、という話をされている。(古田さんが引用した部分だけは、分断を煽るような文章になっている)
BuzzFeedはその彼女の主張を真っ直ぐに伝えればいいと思ってます。 今回の古田さんのような記事はあまり好きじゃないです。いろいろ難しい状況だとは思いますが、ただでさえ不信感が高まってる時にこういう記事はあかんでしょ、、、