お気に入り度★★★★★(おすすめ度は★★くらい)
多分伝わらないと思うので独り言みたいになってしまいますが。私はこの作品めっちゃくちゃ好きですね。
- 作者:ぴりぷん
- 発売日: 2020/03/03
- メディア: Kindle版
こういう百合作品もっと読みたい……。
私はゆゆ式とかまちカドまぞくみたいに「女の子がキャッキャウフフ」してる作品を見るのも好きですが。
同じくらいドロドロしている百合も好きです。
「クレイジーサイコレズ」「グラビティレズ」は大好物だし、そういう意味で「selector_infected_WIXOSS」とかよかったよね。
マンガでいうと「いつか私は、君を裏切る」って作品すごく気に入ってたんですが、打ち切りになってとても悲しかった。
www.tyoshiki.com
いつか単行本になってほしい。
「他人の不幸を喜ぶ昏い感情」と「百合」はめちゃくちゃ相性がいい
タイトルは作者の造語だと思いますが、どう考えてもSchadenfreudeを意識していると思います。
"Schadenfreude"は「損害」「害」「不幸」などを意する "Schaden" と「喜び」を意する "Freude" を合成したドイツ語であり[3]、意味合いとしては「他人の不幸を喜ぶ気持ち」もしくは「人の不幸を見聞きして生じる喜び[3]」をいう。
また、旧来の英語では「他人の犠牲において楽しむ娯楽」を意味する "Roman holiday(s)" が[4][5]相通じる表現と言える。この語は、ローマ人(古代ローマ市民)が休日に円形闘技場で行われる剣闘士の死闘や罪人の残酷な処刑などといった見世物を楽しんだことに由来しており[5]、日本語訳では「ローマの休日」あるいは「ローマ人の休日」という
さしずめ「Schadenliebe」はSchaden「不幸」+liebe「愛」で、他人の不幸を愛する気持ちといったところでしょうか。
片方の女の子から見たら美しい友情の物語だったのに、もう一人の女の子はどう考えていたか……という話
もともと「私と右腕」という身体欠損した女の子をもう一人の女の子が支える、という関係を描いた百合作品がありました。
こっちではみんなが「尊い…」みたいに言いながら読んでいたと思います。
でも、それはあくまで支えてもらっている側の女の子から見た視点でした。
一方で、その女の子のそばにい続けたもう片方の女の子の視点ではどうだったか。
こっち側の女の子はどういう感情で身体欠損した彼女を見ていたかを描いているのがこの「シャーデンリーベ」という作品です。
とても素晴らしい……。
誰にも見せないように心の中で抑え込んできた負の感情が、特定の相手を媒介にして噴き出してくる描写ってゾクゾクする……。
でも、私は単に昏いネガティブ一色な感情が見たいのではないです。
そうじゃなくて、こういう「昏い感情」を持ちつつそんな自分を嫌悪してるような「葛藤」が見たいのです。
誰それ構わず自分の負の感情を吐き散らしてるような人はただの下品な人であって、それはあまりに単純すぎて面白くない。
そうじゃなくて、「この相手にだけ」という部分が大事。
そして、そんな負の感情を持つ自分を嫌悪しているというのも大事。
この二つがあるからこそ、二人の関係性はとても強くて特別なものになるし、
感情の揺れ動きが激しくなって、読み応えのある作品になるのだと私は思います。
この作品はそういう意味において、とても素晴らしいと思います。
「私は君を泣かせたい」もよかったけど、この作品はもっと病んでる感じでとても私好み。
「相手の不幸を喜ぶ」ところから始まった関係性は、最終的にどこに着地するのか。どっちに転んでも俺得なので続きが楽しみすぎる
わかっている。ここにいる限り解放されることはない。
いつまでも傷口は開き、裏切りは重く、幸福はただあさましく。
そして私は全てを許せないまま許せないことをたった一つの証明として---
(papa told me 22巻 ep108 モーニング・グローリー)
負の感情を抱き続けるのは難しい。
他人に対して負の感情を持つことって一瞬だけならいいけど持ち続けてると自分にもダメージが入るから。
それでもその感情を味わいたくて、友人として一番そばで相手が死んでいく様を見守ることにした。
あとは、どこまでこの負の感情を自分の中で飼いならせるか、他人を嫌うという快感に耐えられるかの勝負になるんだろうなと。
これね。
そのまま相手が死ぬまで「ざまあみろ」っていう感情を持ちながら終わるのもよいし、
途中でその負の感情をガンガンぶつけてデトックスするのもよし。
どちらでも楽しめそうです。
Papa told me 22 (マーガレットコミックスDIGITAL)
- 作者:榛野なな恵
- 発売日: 2016/12/01
- メディア: Kindle版
余談 「一瞬だけの嫌悪」と、「誰よりも身近で友達のような顔をしてその人が破滅していくのを見届けないと気が済まないくらいに嫌い」はまるで違う
はてなブックマーク見ている人ならわかると思うんですが、
「他人に嫌悪感をぶつける」ってのはめちゃくちゃ強い快感があるみたいですね。
明らかにその快感の中毒になってる人いるよね。
日本は狭い国なので「あんまり人を嫌っちゃダメ。嫌うのはいいけどそれを表に出したらダメ」ってことになってるから
他人が嫌悪感を表明してるのを見ると袋叩きにする。
でも、そういう人たちって、自分は人を嫌うの大好きだよね。
だから、「嫌っていい」理由があったらカジュアルに嫌いの感情をブコメでつぶやく。
はてブを使ってる理由が、親しくない誰かに対して「嫌い」という感情をぶつけて責任を取らなくていいからだって人たぶん結構いると思うんだよね。
少なくない人たちが、本当は誰かのことを嫌いってはっきり言いたい欲求がくすぶってるだろうなと感じるよ。
これ別に当たり前のことだと思うんだけれど、「私は気持ちいいから人を嫌うことを毎日続けてるんだ」ってのを自覚しないと中毒症状がキツイと思うよー。
そんなわけで、ブコメで他人に対して他人に向けて嫌悪のコメント書くのが好きな人にはぜひ読んでほしい。
もっと「一人の人間をじっくり丁寧に嫌い続ける」ということの苦しさを知ってほしい。
「一瞬だけ嫌う」ってのはサルでもできる。そういう人間のいう嫌いは薄っぺらくてつまらない。
本作品における嫌悪は「もはやそれは愛では?」と思うレベルのクソデカ感情です。嫌悪感を持ちながら、強く強く関心を持って、誰よりもその人のことを知り尽くしたいという欲求。この感情をどこまで描き切ってくれるか、どこまでぐちゃぐちゃに心乱れてくれるのか。今から本当に楽しみ。
- 作者:ぴりぷん
- 発売日: 2020/03/03
- メディア: Kindle版