お勧め度★★★★
一般誌の「イブニング」で連載されていたエッセイコミックです。女性の漫画家さんが、友人に誘われてストリップ劇場を見に行き、その魅力にハマっていく、というお話。
この作品は「第一回の訪問体験までの内容は全部試し読みできる」太っ腹仕様なので、ぜひ試し読み部分だけでも読んでみてください。
- 作者:菜央こりん
- 発売日: 2020/07/20
- メディア: Kindle版
女の子のためのストリップ劇場入門 - 男性コミック(漫画) - 無料で試し読み!DMM電子書籍
当たり前だけど女の人だって他の女の人の身体をじろじろ見るなんてことはできない
私の知り合いでアダルトビデオが好きな女性がいます。はっきりいってめちゃくちゃ詳しいし、作品の魅力について聞いてみるとめちゃくちゃしゃべります。最近は「夏目響」さんという女優さんをめちゃくちゃ推しているみたいです。
当たり前だけれど、女性からしてもキレイな女性の身体というのは魅力的なんですよね。ただ、これも当たり前だけれど女性だからと言って女性の身体を見ることはできない。そう考えたら女性にとってもストリップ劇場はすごく魅力的なのかも。
私は趣味でよく銭湯に行く。
その時についつい他の女性の身体を観察してしまう。
とはいえ、他人の身体。あまりじろじろ見るものではない。男の人に、女湯うらやましい!なんて言われることがあるけど
女の人もあまり女の人の身体をじっくり見たことがないと思う。
そんな女の人の身体を、お金を払えば観ることができるのである!行くしかな~~~い!
しかし、興味はあってもなかなか女の人一人で行くのは怖いもの。男性でも風俗に対して偏見があるくらいだから、女性はもっと性産業に警戒心が強いという人もいるでしょう。
そこでこの作品では、作者は友人の導きでストリップ劇場に足を運ぶことになります。
ルールその① 劇場内では絶対に携帯電話・カメラ等撮影危機を出さないこと!映画館と一緒です!
ルールその② ストリップ嬢がいわる御開帳をしたときは盛大に拍手すること!
あとは、空気読んで合わせろ!
あとは実際に足を運ぶだけです。
実際に足を運んでみると、女性が来るのは珍しいことではなく受付は何事もなくあっさり入れてくれます。
そして劇場に入ると、舞台と観客との距離の近さに驚きますし、パフォーマンスも意外なことづくめで驚きっぱなし。
御開帳のポーズ!
ポーズが決まると劇場内から拍手が。
このポーズがなかなかにアクロバティック!
想像していたよりもずっと芸術的!
ストリップ嬢の鍛えられた筋肉がすごく綺麗!そして、本当の本当に身体の隅々まで見える衝撃&戸惑い&感動!
女の人の身体って、こんなにきれいなんだ……!
そしてパフォーマンスの後は写真撮影タイム。
→オープンショー(ここでチップを渡す)
→コミュニケーションタイム(写真撮影タイムと一緒の場合がある)
ここまでがお試し版の内容です。
ストリップショーの深みにだんだんはまっていく作者さんが面白い
とりあえずストリップ劇場がどういう仕組みかを理解するだけなら、お試し版のところを読むまでで十分だと思いますがその後もどんどん面白い情報が出てきます。作者が本当に楽しそうにしててこっちも引っ張られます
この後作者さんはいろんな劇場を見て回る。
渋谷の劇場はミニシアターだけれど、「浅草ロック座」は客数が多く初心者向け。本舞台が広く、ダンスも本格的で楽しめるらしい。(ただし写真タイムは無し)時期によりテーマもガラッと変えてくるので何回いっても楽しめるようになっている。
とはいえ浅草でも席数は130くらい。
なので、どこかのタイミングで必ず演者さんが目を合わせてくれるらしい。客も嬢から見られる立場であることから、常連客のレベルがすごく高い。客が劇場に許可を取って演出に参加し(リボンを投げたり花びらを投げたり)た後で、後片付けまで一緒に行うという連係プレイを見せたりする。
本作は「女性のための」ストリップ劇場入門なので、女性ならではの視点の紹介が面白い
いろんな身体の形を続けてみることになる。
かりかりな人もいるし、肉付きがいい人もいる。
若い子もいるし、私よりずっと年上に見える人もいるけど、みんな綺麗!
(彼女たちの)身体をじっくり見ていると、それぞれの身体のパーツの綺麗な面が見えてくる。
例えば、私はおなかがポチャッとしているのが気になっているけれど、
「あれ、おなかがポチャとしててもセクシーでいいじゃん!むしりおこのムッチリがエロくていいな」
なんて自分を受け入れるヒントがあふれている。そして、どの踊り子さんも堂々としている。
「裸になることが恥ずかしいこと、エロいことは恥ずかしいこと」そんな概念が吹き飛ぶ。
自分を最高に美しく飾って、余裕の笑顔で脱いで踊る。
その姿に、常識を覆させる衝撃を受ける。
これだけパフォーマンスがすごいのに、「入れ替え無し」なので時間さえあれば一日入りびたることも可能らしい。
この漫画見てると、めちゃくちゃ劇場に行きたくなってくる
というか行きたい。チップはさむのもやってみたい!ポールダンスのお店の時に行ったときにチップはさむのもやったことあるんですが、あれはもうなかば強制みたいな感じだしいまいち盛り上がりがなかったんですよね。(パフォーマンスはものすごくよかった)
ストリップ劇場の方だとどうなるのかとても気になる。
「推し」の踊り子さんを見つけてからが本番!!
そんな感じで、この本の半分くらいまでは淡々とストリップ劇場の魅力を紹介してくれているマンガなのですが。真ん中くらいまでくると作者さんは「推し」の女の子を見つけてしまいます
そして、彼女を追いかけて全国の劇場に行くのですが……。
劇場によって個性が全然違う!広さも照明も違うから見せ方も一つ一つ違うので毎回新鮮。そして、推しの踊り子さんが自分を認知してくれている……ああ、これは沼ですわ。
というわけで、そのあとなじみの劇場ができたり、お客仲間の知り合いが増えたり劇場の人と知り合いになって劇場の歴史を聞いたり、といろんなお話を読ませてくれます。
ほんとに1冊の中でてんこ盛りなのですごいお得な本だと思う。
長年ストリップ劇場でつとめている人の言葉はすごく重たいよね。
接触するでもなく女の「からだ」と対峙するところって他にないと思うよ
通底しているものとして「スケベそのものが悪なのではない」という感覚があって良いなと思う
一番最後の章では、劇場仲間になった人たちに対して
「あなたにとってストリップとは?」
「なんでインターネットで裸を見るでもなく、アイドルでもなくストリップなのか?」
っていう質問を投げかけていろんな答えをもらう回になります。
その答えがまた一人一人面白いです。
作者さんの答えだけ引用しておきますね。
ストリップ劇場に行く前は、男も女も若くなきゃダメで。おじさんおばさんになったら「価値」がなくなるって世の中の風潮を信じて時が過ぎることを怖がっていた。他にも、女でエロいことを考えるのは恥ずかしいことなので隠すべきだと思ってた。
でも、ストリップ劇場にきたらそれが覆った。
女が脱いで、それがどんな年齢でどんな外見でもそれをバカにする人はいないし、むしろ尊敬の空気を感じた。踊り子さんも観客も目がキラキラ輝いてて、自分が肯定されるように感じて。そんな空間がとにかく楽しいな、と。
https://anond.hatelabo.jp/20200728192915
こういう増田で指摘されるように、自分にコンプレックスある人が見に行くといいのかもしれたい。
私の観測範囲の問題かもしれないけれど、まぁ何というか今のネットって「女でエロいことを考えるのは恥ずかしいことなので隠すべき」どころか「女は性欲を持たない」(性欲を肯定するやつはは名誉男性)くらいの過激な価値観の持ち主が割と暴れまわってるじゃないですか。実際には男性より女性の方がはるかにエロの消費を拡大させてるのにね。 大っぴらにしろとまでは言わないけれど過剰に否定するのはどうかと思ってしまう。
性の問題に「正解」なんてないのだから、価値観が違ってもこういう価値観の人たちがいるんだなって感じでみんなが相手のスケベを肯定しあえたらいいのにね。
それはそれとして今はコロナが大変で見に行きたいのに見に行けなくて無念……。
なお、巻末のおまけでは
コロナ災禍を受けてストリップ劇場の現在は…っ!ってコラムが7ページほどついています。
ただでさえ厳しい状況においてこのコロナは本当に厳しい。
至近距離でのコミュニケーションが売りなためコロナによる打撃が一番厳しいところです。
今はクラウドファンディングやネット配信の方に切り替えてるらしいですが、こんなマンガを読んでしまったらやっぱり実際の劇場も見に行きたくなるよね。コロナ、早く収まってほしいな……。
というわけで、ほんとに内容てんこ盛りなわりに700円で買えるめちゃくちゃお得な本なので、これはぜひ読んでみてほしいです。んで、コロナ収まったらみんなも見に行こうぜ。
- 作者:菜央こりん
- 発売日: 2020/07/20
- メディア: Kindle版