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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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フランスのいじめ対策の記事を見て、「いじめは犯罪」だけなら誰でもいえるけど、実際にいじめを「犯罪化」するための運用を考えるとここまでの積み重ねが必要なのか……とため息が出る

gendai.ismedia.jp


実際フランスでは18歳以下の少年犯罪の数値はかなり良好のようだ。
hakusyo1.moj.go.jp


なお、以下の議論についてコストどうするんだという話になると思うが日本は教育支出のGDP比は、高くはないが決してそこまで低くない。

ひたすらに低いのは「公費支出」である。
f:id:tyoshiki:20210425170046p:plain

日本は「政府が学校に対して公的に支払う支出」が低く、その分「一部の人間だけがめちゃくちゃ高い金を払って塾などに通わせることで良い学校環境を手に入れている」という仕組みになっている。

理想を言えば国が本腰を入れて学校教育を充実させることで、各家庭が個人的に学習塾などに払っているお金を学校教育に回るようにしたいのだが実際は教育熱心な親ほど学校に全く期待せず、塾などに通わせるという「学校軽視」が強い。

そのため絶対的に予算が足りない中で学校の教師はろくな投資もサポートも得られずに問題児の対応を迫られる。教師自体が二重三重にブラックな環境に置かれ、子供の世話を第一に置けない状態になっているため、その空隙を埋めるようにいじめが起きるのは構造的な問題だが未だにはてなの反応を見ていても、「何か問題が起こったときに学校や先生を責めるだけ」「いじめは犯罪」と教科書通りに繰り返すだけで、学校教育の苦境は全く無視され、打ち捨てられている。


私はゆたぼん君に対しては否定的な立場であるが、だからと言って学校教育を肯定する気持ちもない。


私は時々起きる悲惨ないじめ問題は、一般の人たちの学校教育への無関心がもたらしているものだと思っているし、それに対して無謬な存在として偉そうに「いじめは許せない」とか脳死したみたなコメントを書いてる人を見ると、その人が悪人ではないにせよちょっとイラっとはするよね。




その1 少年法の改正、少年犯罪の厳罰化

ovninavi.com

フランスの少年法は1945年令に基づき、1963年以来31回も手を加えられてきている。が、「13歳未満は処罰できない」という条文を改正できないジレンマのなかでラシダ・ダチ法相は4月15日、1945年令改革委員会を設置、「刑事責任を科せる最低年齢を設定すべき」と同委員会に検討させる意向だ。また2007年制定の刑法は16~18歳の累犯者には責任免減を認めず成人と同じ刑事処分を科し、未成年者犯罪の厳罰化に踏み切った。

遠地にある更正施設は非行に陥った少年少女に第二のチャンスを与えるため、軍隊生活に近い規律の中で6カ月から1年の再教育と職業訓練を課している。このチャンスを活かせる少年たちだけが社会に復帰できる

その2 学校内に児童福祉の様々な専門職を配置し、教師以外のケア要員がいる状態にする

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https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81286

是非やってほしいが、どう考えてもコスト的に無理なんだよね……。文科省がどれだけ権力が弱く、どれだけ毎年予算を削られているかをちゃんと認識してほしい……。


その3 問題児の世話を学校だけに押し付けない。学校は問題児を一時外に出すことができ、地方自治体側が問題児の世話のコストを負担させる

子どもが安心して通える環境を重視し、嫌がらせや暴力、先生へ暴言を吐いたりすると中学生でも退学・転校処分になってしまう。

学校の代わりに市のサポート機関に通い心理士や指導員のもと過ごす。
トラブルがあったりして警告を受けた子どもは退学にならないよう「ティーンエイジャーの家」でケアを受けることもある。

ここがおそらく最重要と思われる。「いじめは犯罪」とだけいう人たちは、問題児のケアのコストを負担する気がさらさらなくて「学校から追い出せば問題が消える」と考えがちだと思うが、実際は学校の外に出したら余計に問題が大きくなるんだよね。結局のところ、こういう問題児をどこが引き取るかという問題で、現状は学校に大部分を押し付けているという自覚は持ってほしいなと思う。

我々は、子供を犠牲にして、問題児たちを学校内に囲い込み、教師にその世話を全て押し付けている。そのうえで、何か問題が起きた時だけ善良な人間の顔をして「まあなんてひどい」「いじめは犯罪だ。警察に介入させろ」と言ってるのが現状である。公立高校を見出し、自分たちの子供だけは私立高校に入れたいという気持ちを隠そうとせず、荒れた学校についてはとりあえず教師のせいにしておけば自分たちだけは善人のふりをできるという面の皮が厚すぎるはてなのコメントを見ると「どのくちで上級国民批判とかやってんの」って思いますけどね。まじで教師の人はみんな仕事投げ出して偉そうに言ってる保護者やはてブ民に教育の責任を投げ返しても全然おかしくないと思うんだよね……。

税金を負担しろっていうことじゃなくて、保護者として考えるなら、教育政策を重視してる人にちゃんと投票しないとだめだと思うよってことです。自民党の方々の教育への無関心ぶりというか関心のずれっぷりは異常であり、教育制度改革やら試験制度改革なんか言ってる場合じゃないと思うんですけどね。




その3.5 学校の先生の立場を守ることは子供を守ることにもなるという意識を持つ

極論すると、加害者に対しては平等主義を捨てろということになる。

加害者の退学処分についてはメディアでも現場でも度々論争になっている。

調査先の中学校の校長先生は「学校を移ることで新しく中学生活をやり直すことができ、嫌がらせをしなくなる子どもがほとんどで、かつその過程でサポート機関で手厚いケアを受けるので生徒にとってプラスに働くことが多い」と話す

きれいごとを書いてるけれど、「学校が対処しきれない問題児は学校が追い出すことを認めろ」と言ってます。「学校以外に子供の面倒を見るコストをちゃんと負担して、サポート機関などを充実させる」ことが前提だからです。

これ一朝一夕でできますか?これのコストをちゃんと保護者が負担するんですか?しないよね?なんだかんだ言って「学校が頑張って問題を解決しろ」「問題な奴は警察に逮捕させてその後は知らん」以上のことなんか考えてないと思うよ。



その4  警察への報告を「義務」化することとセットで「いじめを警察に報告した学校の方が安心である」という保護者側の意識変革が必要

校長は、学内外で生徒間のトラブルがあり病院に連れて行く必要があったとき、生徒が暴力を受けたとわかったとき、親から学校への攻撃的な発言があったときなど警察と県の担当部署へ規定の書式に書きEメールで報告する義務がある。

受け取った警察は校長に即日電話し、未成年の被害者がいる場合は子ども専門裁判官に連絡し行政上の記録に止めるか捜査を開始するか指示を受け、未成年の被害者がいない場合は学校内で対応するか警察が動くか決める

これに関しては日本でも平成2019年の改正で警察との連携強化を打ち出してはいるけど、当然努力目標なので守られてないですね。
www.mext.go.jp

なんでかって当たり前だけど「集客」のためにトラブルは極力隠蔽したいからです。日本はケガレ思想が強すぎて、問題を公表した時点でもうアウトです。翌年度の志望者が半減します。オーナーシップを持たない校長の最大のKPIはこの志望者数になっている以上、警察に報告するインセンティブはありません。問題を公表した校長はキャリアが閉ざされるのも痛い。現状を変えるためには義務化というか、もっと細かいレベルでの報告義務を課す必要があるでしょうが、これはこれで副作用がでかいです。



その5 警察側にも子供被害対策の専門家を用意する

警察には未成年保護班(県によっては家族保護班)という特別部隊があり、彼らは小さい子どもやティーンエイジャーの聞き取りと支援について専門的な訓練を受けている。

未成年保護班に集まる情報については、被害者がいる限り被害届がなくても子ども専門裁判官に連絡の上、指示があれば捜査を開始する。子ども専門裁判官が指揮官で未成年保護の要であり、警察が裁判官の目となって指示を受けた内容について調査する。

これは以前痴漢の問題の時にも同じこと書いたけれど日本における専門家軽視ぶりは異常なレベルであり、スペシャリストに敬意を払わない文化が根強いのでこういう対策が進まない。あと当然だけれど「警察権限にメスを入れる必要がある」のも厄介な問題の一つ。


その6 いじめ問題のケアを専門家でもなんでもない学校の教師に求めない

日本では学校内のトラブルに警察が介入することを教育的ではないという意見もある。その結果教師に加害生徒のケアも被害生徒のケアも求めている。

そのような場合、学校がその責任を問われることになってしまいます。日頃から細かいことも警察に伝えて警察が被害者と加害者に聞き取りをしてケアにつなげ適切な対応ができていれば被害者を出さずに済んだはずだったのに残念です。

これは要するに、「問題の対処は専門家がやるから、学校は問題があったらきっちり外部機関に報告してください」という仕組みになっているということである。学校の先生になんでもかんでも対応しろという無理ゲーを求めない。教師の立場もちゃんと法によって保護されている。

日本の場合、学校の先生は専門家でもなく訓練も受けてないのに難しいいじめ問題への対応を求められる。そしてキャパシティオーバーでも誰にも助けを求められず、問題が起きたら問答無用で「大して関心もないが善人ぶりたいだけのやじ馬」「人権意識だけが高いが実際は子供たちのことなどどうでもよくて自分が立派に思われたいだけの人権派気取りのゴミ人間」から寄ってたかって石を投げられる。ほんとこいつら何もわかってないくせになんであんなに偉そうなんだ死ねばいいのに。


その7 専門家の揃ったサポート機関を充実させる

正直このあたりの説明を読んでて「これほんとにできてるの?できてるとしても首都中心だけじゃないのかな?」って眉唾な気持ちで読んでるんだけれど……。

フランスのある中学校の校長は「問題を起こす子どもはそれだけケアを必要としていることを問題として表現しているのだから、最高の人材を雇って最高の教育をすることが求められている」と言う。日本でも全ての役割を教師に押し付けるのではなく、子どもや親に自己責任を押し付けるのでもなく、子どたちが安心して楽しく通える「子どもを守り支える学校」を整備する方向に議論が進むことを願う

まずどこから手を付けるべきか

この記事読んだ人、なんとなく「フランスは素晴らしい」「それにくらべて日本は」くらいに思ってるんじゃないかと思う。

じゃあ具体的に日本でもまずここから支援していこうって考えてる人どれだけいるんだろうか。

フランスはこの状態に行き着くまでに、数十回の少年法の改正の論議を行い、長期間かけて少しずつ機能を整備してきたらしい。

もちろんその間で国民たちの意識も変わってきたのだろう。

今から日本がこれに追いつこうとしたら、それこそ途方もない時間がかかる。

それでも日本でもできることが有るだろうか、だとしたらまずどこからだろうか。

言うまでもないが、「いじめは犯罪にしろ」は後ろの方である。

その前段階としてこれだけの準備が必要だという話を書いてくれてるわけだ。

しかし、はてなブックマークのコメントを見る限り、この記事を読んでなお「いじめは犯罪」というだけの人が多い。

この記事を読んでそういう反応になるならその人は「私は思考停止してます」っていってるのと同じだと思う。





とはいえ、私も今までこの問題について真剣に考えてなかった側の人間で他人に偉そうなことを言える立場ではない。

これからも考えていきたいと思っている。

www.tyoshiki.com

今のところ、これに関連する書籍はなく、論文がいくつか上がってるだけで情報が全然手に入らない……