500円ならまあええやろと思って気楽に購入。
軽い気持ちで読んでみたら、思った以上に面白かったです。
この手の「漫画で解説」として日本書紀を取り扱ったシリーズ作品の中では今までで一番よかったのでおススメしておきます。
「日本書紀」は40代目天皇 「天武天皇」の命によって編纂された神話・歴史をまとめた本であり、42代目天皇(697年)までの記述がある歴史書となっている
この作品の大事なところは「歴史」ダイジェスト部分ではありません。
それぞれの神々や天皇たちがどういうマツリゴトを行ったかという具体的な部分が面白いです。
下にざっくりとしたダイジェストはまとめてみますが、この記事だけ読んでも日本書紀の面白さは全然伝わらないと思います。
面白い部分は是非実際に読んでみてほしいです。
日本書紀や古事記は「日本人の教養」として一番大事な「日本の創世神話」的な部分です。
しかし元の文章が漢文であるせいか極めて難解でとっつきにくい。
そのため、入門書として入り口としてマンガで絵解きしてくれている本作品はとても貴重です。
自分が子供の頃にあったらうれしかったのだけれど、今まで決定的な本がなかった。
そんな状況で、「神社検定」の監修によって大事なポイントを押さえつつ
わかりやすくまとめてくれたこの本が出たのはとても良いことだと思います。
最初はパラパラとめくりながら流れをつかんでもらいつつ、何度か繰り返し読んでみてください。
絵柄的にもまず親が読んで、それから子供に読み聞かせしやすい内容になっていると思います。
270ページのボリュームで丁寧に説明してくれていることもあり、元の値段は2200円とちょっとお高いですが、今は75%オフの550円で売っていて非常にお買い得だと思います。
ざっくりダイジェスト
自分で一回目を読み切るのがハードルが高いなという人のために、まずこの記事でサクッと大筋を紹介します。
歴史というのはいきなり細かく見ようとすると大変に感じますが、一通りダイジェストを目に通しておくだけで、すごくとっつきがよくなりますよ。
①「イザナミが死んで昼と夜が分かれる」までの経緯について
神社検定公認テキストということで読んでみたのだけれどこのあたりも監修者が表現チェックしてたんだろうなとおもうとクスってなる。
6つの説を並べています。一応正史みたいなものは決めてくれてるんですが、外の5つも同列の扱いになっています。実際、日本の神話が人気がないのは聖書と違って中心となる正史がわかりにくいせいだと思うんだよね……。
このあたりが最初ちょっと読み進めるの大変だと思うので、しんどかったら初回は読み飛ばしても良いです。
②アマテラスが天石窟にこもって出てくる経緯について
こちらも2パターン載っています。メインではスサノオが大暴れしたせいということになってますね。
③スサノオは話によって結構印象違う
ヤマタノオロチ退治もそうだし和歌山での活躍もそうなんだけれど人格が全然一定しておらず、神という概念が人では計り知れないものであることがよくわかります。
このあたりから話が格段に分かりやすくなっているので、最初はここら辺から読み進めると良いかもしれません。
④オオナムチ(大国主命)の活躍。
この部分は「安彦良和」先生の神作品があります。
まずこのマンガで興味を持ったらさらに安彦先生の漫画で掘り下げるとより具体的なイメージをつかめると思います。⑤ニニギノミコトの「天孫降臨神話」。ここも諸説あって面白いです
どのルートでもおの天壌無窮の神勅だけは共通しているのですがそれ以外に「五大神勅」と呼ばれるものがあります。
⑥イワレビコ(神武天皇)の話が最初の「戦争」のようなお話。
ここも「安彦良和」先生の作品がめちゃくちゃ面白いので、まずこのマンガ読んだ後興味持ったら続けて読んでみてください。
⑦欠史八代についての公式見解が語られているのは良いですね。
⑧10代目天皇のころになるとはっきりとした歴史的事実が記録に残り始めるが、まだ人と神は交る形で政治がおこなわれていた
⑨ヤマトタケル(日本武尊)の物語は12代景行天皇の時
ここで一気に九州平定→関東も平定する。
⑩神功皇后による「三韓征討」という謎神話
4世紀後期頃から倭国(ヤマト王権)が朝鮮半島南部へ進出したことを示す文献史料・考古史料は少なからず残されているため、三韓征伐神話を根拠として用いずとも4世紀後半以降の倭の朝鮮半島進出は史実として立証されている。
このあたりは日本書紀だけ見てても意味不明なので注意。
この神功皇后の時代に、「魏志倭人伝」で卑弥呼が語られており、両者が重ねられることもある。
高校生の時にも思ったけど、14代目天皇が死んで、15代目に100歳で神功皇后がなくなるまで天皇が空位になっているなど全体的にこの神功皇后絡みの歴史は無茶苦茶すぎるw
⑪神功皇后の息子「応神天皇」が15代目、その長男が16代目「仁徳天皇」
このあたりから「神話」ではなく「歴史」の世界に入り始める。
とはいえ、21代の雄略天皇の時代にいろいろ面白いことが起きていてまだ「歴史」にはなりきれていない。
⑫天皇といえども25代目のような暴虐な行為が記録に残っている人物もいる
26代目あたりからようやく完全に「歴史」になる。
正直ここから先は普通に日本史やな。
29代目の時に仏教が百済から伝播してくる。
この後はみんな知ってる仏教と神道の権力争い。
蘇我家と物部家のつぶしあいなどが起きる。
⑬33代目の天皇が初の女性天皇(29代目天皇の娘)である推古天皇
この時に蘇我氏が物部氏を駆逐して権力を握り、聖徳太子が活躍する。
聖徳太子は「天皇記」や「国記」などを編纂するのだが、大化の改新時に焼失する。
⑭35代目も女性天皇(皇極天皇)
・この時に蘇我入鹿が聖徳太子の子孫を襲撃する。
・中大兄皇子が大化の改新により蘇我家を滅ぼす
⑯36代目は皇極天皇の弟の孝徳天皇
しかし中大兄皇子が実権を握っていて、天皇を置いて遷都したり政治改革を行うなどやりたい放題。
⑰37代目は35代目の皇極天皇が再び即位(斉明天皇)
という感じで女性天皇が立つ時ってだいたい政治が乱れていて気の毒になる。
その後中大兄皇子は皇極天皇がなくなった後に即位して天智天皇となるが、
親バカによって息子を跡継ぎにしたところ、弟が反乱を起こして息子は破れて自殺。
弟が即位して天武天皇となる。
⑱40代目 天武天皇により政治体制が固められ、かつ天武天皇の命令で歴史書が編纂が始まる。
⑲41代目 天武天皇の妻が即位して持統天皇となる
そして最後にその息子文武天皇が即位するところまでが「日本書紀」の内容となっている。
他にも類似の本はいくつかあるみたいなので一応紹介。
うん。やっぱり今回紹介する日本書紀が一番充実してる気がする。
おまけ。記事中で安彦良和先生の作品を紹介してますが、ほんとに安彦先生の作品は絵が綺麗な上に漫画としても面白いので超おすすめです。