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「ホーキーベカコン(春琴抄より)」  原作既読の人ほどあっと言わされる素晴らしい二次創作作品。二次創作やってる人は全員読んで打ちのめされてほしい

評価★★★★(お薦め度★★★★)

マシュマロでご紹介いただいた作品です。


だいーーーぶ前に紹介していただいてたみたいなんですが、募集しておきながらマシュマロの存在をすっかり忘れておりました。
今更ですがこちらの作品と「銀色のジェンダーズ」購入しましたのでさっそく読んでいきます。



春琴抄は、名前だけは知ってたのですが学生時代は未読でした。
わたしが大好きで何度も紹介している瀬戸口廉也「CARNIVAL」の第二部でとりあげられていましたのをきっかけに興味を持ち、そこで初めて読んだのを記憶しています。
www.dlsite.com
確かに、この作品の「理沙」は、男女性別を反転させた形での春琴抄的な感じがあるなあ。



原作「春琴抄」を読んでいる人ほど、原作からの変化にうならされる作品

原作の時点ですでに「元祖暴力系ヒロイン・女王様系ヒロイン・元祖ツンデレ娘」などなど複数の属性を獲得していたヒロイン鵙屋琴さんですが、本作ではさらに新しい解釈がされています。

yagi.tc

本作のヒロイン。大阪の薬屋に生まれた女性。
少女時代に失明するも音楽の才能を発揮し、三味線の師匠の元に通っていた。のちに佐助と共に家を出て三味線教室を開く。

並外れた美貌を持ち、37歳の時でさえ二十代に見えるほど。
甘やかされて育ったのと病気の影響で性格が歪み、わがままで誰に対しても高慢で暴力的。そしてドS。
自分の弟子に「お前達の演奏より私が飼ってるウグイスの声の方が綺麗」とか言ったり、バチで頭をぶん殴ったりする。その性格が後年の悲劇を招くきっかけに。

佐助に対しては重度のツンデレで、暴力の度合いも他人よりレベルアップする。暴力系ヒロインの元祖とでも言うべき存在。しかし後年起こった火傷の事件以降はやたらとデレるようになる。
佐助とは両親公認の仲だったが、「別に奉公人のことなんか全然好きじゃないんだからねっ」と言い張り籍を入れなかった。でも子供四人作った。

https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/4781.html

すでにいろんな人が絶賛しているように、本作は根っこの部分から大幅に原作が改変されております。2巻まではその変化がさりげないので気づきにくいのですが、2巻の最後、そして3巻の冒頭で一気に化けます。
なので、原作を知っている人ほど(せめてあらすじを知った上で読むと)感動すること間違いなしです。「そうはならんやろ」「でもこの二人なら……」という感じで戸惑いつつも、もともとこういう話だったような気がするような、そんな絶妙な改変になっています。


原作はなんというかとてもじれったい感じだったんだけれど、本作では「命以上に美を愛するやべーやつらの共感関係」とい感じで「他の誰にも理解できない結びつき」に昇華されている

原作はなんというか佐助があまりにドMすぎて「なんでそこまでしてこいつに尽くすんだろう?」ってのが今一つしっくりきてなかったし

琴さんも琴さんで、ツンデレって言われてるわりには一定の線を引いて絶対にそこから先には踏み込んでこないので

なんか二人の関係は「わかったようでわからん」という感覚でとてももどかしい気持ちになりました。

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そういう「想像の余地」を感じさせるのが文学作品っぽいところなのかもしれませんが、本作では作者なりに明確にその理由を描いてくれています。

これは「春琴抄」にとっての唯一の正解ではないという点は注意すべきですが、「二次創作」としての完成度が非常に高いです。



本作のタイトルがなぜ「ホーキーベカコン」なのかということがわかる3巻の展開は必見

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これも瀬戸口廉也の作品ですが「SWAN SONG」というものがあります。(同名のタイトルの作品は他にもたくさんあります)

ヨーロッパの伝承で、白鳥は死ぬ時に美しい声で鳴くと言われている。「白鳥の歌」とはつまり「瀕死の白鳥の歌」であり、人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すことを例えで指している。
紀元前5世紀から3世紀にこうした伝承が生まれたと言われていて、ヨーロッパで繰り返し使われてきた表現である。

人が災害の中で疑心暗鬼に陥り、争いに発展し、傷ついて倒れていく様を抒情的に描いた名作です。(なお現在500円で販売してます。2万円で買った私涙目




このように人の人生で一番美しい瞬間は何かというのは文学作品のテーマとしてとてもメジャーであり、いろんな作品が動物の鳴き声にたとえ、考察したり描いたりしてきました。



本作のホーキーベカコンもその系譜です。本作の場合この鳴き声は「天鼓」と呼ばれる極上の鶯のさえずりの音を指しています。本作はまさしく、この「ホーキーベカコン」をめぐる物語になっていました。



美を人間より高みに起き、その美に奉仕するためであれば自分も他人の命も惜しまない異常者たちによる狂った物語。


原作の時点から「マゾヒズムを超越する耽美主義」を描いた作品と評されていましたが、その耽美主義の目指したところをより具体的に、私のような人間でもわかるように視覚化してくれています。



マンガという媒体だからこそできた作品だと思っていて、めちゃくちゃ読んでて面白かったです。



3巻でサクッと読める上に満足度が非常に高い作品なので、かなりお勧めしたい作品です。
原作を知ってる人でも3巻だけは絶対に読んでほしい! ちょうど現在Amazonでもセール中です。




参考
blog.livedoor.jp
DG-Lawsさんがさらに詳しい補足などを書いておられる記事。


Y!mobileユーザーの人はeBookJapanでさらに安く買えます。
www.tyoshiki.com

まぁ私はDLSiteで買ったけどね笑。 DLSiteポイントが5万くらい余ってるので、KADOKAWAのマンガは優先して買っていきます!KADOKAWAから出てるマンガでお勧めの作品あったらどんどん紹介してください!