1巻から3巻は完全にエンタメに極振りしたB級路線だし、4巻以降もひたすらバールが出てくるので真面目に読むような作品ではない雰囲気なのだが、「あえて真面目に読むと面白い」
まじでバール万能すぎるな pic.twitter.com/pEoQEuZMgU
— ゴールデンハニワ@ (@golden_haniwa) 2024年3月23日
一行でいうと「苛められっ子が復讐のために他のアイドルを皆殺しにしていく話」です。
基本的には彼岸島チックなB級マンガなんですが後半は結構ちゃんと「視点によって加害者と被害者が入れ替わる構造」を扱う物語やってて好みの展開でした。
私は、4巻~6巻がめちゃくちゃ好きなので「前半が合わなかった人にも後半を読んでほしい」わけだけれど、無理か・・・
Amazonレビューをみると3巻までの「いじめっ子を虐殺していく展開」が面白かったのに4巻以降は失速した・・・という風に受け止めている人が多いようなのですが私は逆の感想です。
いやいやいや。これどう考えても4巻以降が面白いって!
私としては3巻までって展開としては全く予想外のところが無くて全く頭を使うところがなかったのでそんなに盛り上がらなかった。でも4巻以降、何が起きるのかがわからなくてドキドキしながら読み進めてたら、とんでもないところまで突き抜けていった、という感覚です。
なお、ほとんどが超人アイドルたちの荒唐無稽バトルになってますが、たまにあるアイドルとしてのライブシーンはすごくきれいで好きです。
私は、FF16でこういうストーリーが見たかったんや・・・いや割とマジで
私はFF16でこういうストーリーが見たかったんですよ・・・。自分が見たかったものを見れなかった無念が、すごい意外なところで実現してすごいびっくりした。
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本作品は3巻までは割と軽いノリでしたが、途中から「いじめ」「搾取」について結構真面目に考えさせられるような内容になってます。
3巻まではあくまで主人公は「アイドル業界」といういじめが蔓延する業界構造の被害者として自分を攻撃してくる奴らに対してやり返すのがメイン。
だから、爽快感はあってもストーリーに意外性は全然なかった。
復讐と言いつつ実際は迎撃していくだけだから、誰が敵で味方で誰が敵かも考えなくていいしある意味受け身的なんですよね。
でも4巻からは違う。主人公は「アイドル業界」そのものをぶっ壊しに動き始めるのですが、
一転攻勢になり目的を持って能動的に動き始めると、主人公の行動にも責任が生じる。
倒していく敵もちゃんと人間だし、ある意味主人公よりはるかにエグい境遇の、よりかわいそうな被害者もいる。
決して主人公がかわいそうランキング1位の絶対的優越権を持っているわけではない。
こうなると「わたしが一番かわいそうだから何をしてもいい」というネトフェミのノリは通じない。
被害者性だけでは自分の正義を正当化できない。
ここから自分の加害性に向き合い、それでも自分の道をブレずに胸を張って進めるのか。
そういうことを考えさせられたりします。
当然敵側も単なる倒すための通過点でなくなるし、主人公以外の人間がちゃんと考えて行動するようになったりと話に厚みが出てくる。
その結果、主人公は復讐だけではない己の信念を語ることになり、通じ合った何人かの人間とは共闘するようになっていく。
いやもう普通にバリバリに私好みの作品になってました。大好き。
(※まあ 当然B級マンガだから過度な期待は禁物です。バールがすべてを解決するし、ぶっ壊す対象である「アイドル業界」もひたすら悪で単純だったりと駄目なRPG感もあります。でも、少なくとも言えることは、この作品のストーリーのほうがFF16よりも完成度が高い。私はFF16でこういうストーリーを見たかったということです)
エロゲとかアニメとかマンガとか、今まで自分が楽しんできたオタク的なストーリーをしっかり積み重ねててすごく面白い
「汚いアイドルマスター」くらいの感覚で読み始めたら、「フラテルニテ」を経由して進撃の巨人のレベルまで突き抜けていった、みたいな感覚です。
作者のあとがきなんかを見ても、最初は3巻までのつもりで構成してて、4巻以降は連載継続が決まったあとに色々とつけたしていったように描かれているのですが、4巻以降の展開は今まで自分が好きだったオタク向けコンテンツがこれでもかと散りばめられており、読みながらだいぶテンション上がりましたね。
ちょっとネタバレになりますが特に作中に登場する「鳥籠」の設定はフラテルニテそのまんまやんけ!と言いたくなるような内容だし、13と31の関係は「まどマギにおけるまどかとホムラ」の関係、あるいは「進撃の巨人におけるエレンと◯◯」の関係のようで、このあたりピンと来る人にはゾクゾクするものがあると思います。もちろん「要素」であって名作クラスと同じまで描けているかといわれると厳しいかもしれませんが・・・
ある作品を自分が知ってる他の作品で「◯◯みたいな作品です」という風に説明するのって作者にとっても失礼だし語彙力がないゴミオタク仕草であることは重々承知しているし自分もできるだけやりたくないのだけれどこの作品は普通に紹介しても絶対に興味持ってもらえないと思うのでこれで一人でもいいから伝われ・・・!
結構読み手側によって評価が変わりそうな感じですが、私はこの作品の4巻~6巻は、すっごい読む価値あると思ってるし、「4巻~6巻おもしれえ!」って感じる人と話がしたいよ・・・。
というわけで、以上が前置きでここからが本編なのですが・・・
【ここからFF16ネタバレ注意】クライヴくんが女性アイドルだったら・・・
アルテマやバルナバス達がクライヴのことを称する際に使う名。イフリートを宿しながら他の召喚獣の力を扱える特別な存在で、アルテマの最終目的である「完全生命魔法レイズの発動」を達する上で必要な「レイズ発動に耐えうる肉体」となる者。アルテマは「器」とも呼んでいる。
https://wikiwiki.jp/ffdic/%E8%A8%AD%E5%AE%9A/%E3%80%90%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%88%E3%82%B9%E3%80%91
この世界はすべてアルテマ(クライヴの厄介オタク)という神ならぬ超越的存在の作り出した箱庭でしかなかった・・・。
その箱庭の中でクライブはアルテマから「神の器」の役割を与えられる。
クライブは、アルテマの望む通りすべてのアイドル(ドミナント)をひとりずつ殺していく。そのたびにアイドルとしての力を吸収し、人智を超える力を取り戻していく。
クライヴは、自分ではアイドルとして人を幸せにするため戦ってきたつもりだったが実際はただアルテマの望み通り「神の器」となるために行動していただけだった。
その過程で、だんだんとクライヴの本性が明らかになっていく。
旅の途中では何人もの仲間がいたが、どんどん強くなっていくクライブについていける存在はもはやいなくなっていった。ヒロインのジル(フィア)は己の身を捧げてでもクライヴが遠くにいくのを止めようとしたが、それでも止まらなかった。
結局クリスタルタワー(アイドル業界)をすべて壊し、最強となったクライヴは仲間の手を一切借りずに一人でアルテマ(クライヴを神にしたかっただけの厄介オタク)をぶっ殺してしまう。
もはやクライブは仲間を置き去りにして一人だけ強くなりすぎてしまった。アルテマを越えるミュトスの住人になってしまった。
もはや神(ミュトス)として完成してしまったクライヴ。アルテマを倒しても、自分が神となっただけではアルテマの思惑通りである。ここからどうすれば、神話の物語(ミュトス)から脱することができるのか、どうすれば神のきまぐれによって苦しみだけしか与えられなかった人を救い、幸せを人に返せるのか。残酷な神(アイドル業界)が支配する世界を終わらせ、世界を人類に手渡す(ロゴス)ためにはどうすればいいのか。 ここでクライヴが取った決断とは・・・
FF16ではここからの終わり方が投げっぱなしすぎて本当にダメダメでまじでふざけんな時間返せと怒る気力すら湧かない虚無すぎるエンディングでもう呆れるしかなかったのだけれど、「イジメカエシ」はちゃんと納得の行く終わり方になっている。
それが可能だったのは、途中までFF16と同じような構造のように見えたけれど、ちゃんとジル(フィア)との関係を描いていたから。
私は、せめてこの作品のような展開をFF16でもやってほしかった。もっとジルとの関係をきちんと育んでほしかった。おそらくバトルシステムが違っていたら可能だったんだろうと思うととても悲しい。
FF16をプレイしてそのストーリーに嘆いたみなさんは、是非この作品を読んでほしい。