この作品、アニメ化するときは、これを第一話に持ってきてほしいな。
俺がフットボールにハマったきっかけは、小さい頃に見たトヨタカップだった。
初めて見たトヨタカップがきっかけで、組織的で流麗なヨーロッパのフットボールにひと目で夢中になった。
だがまだ海外組という言葉もなかった時代。
周囲にヨーロッパのフットボールが好きなんて人間はおらず変わり者扱いされた。「トータル・フットボールとかしらねえよ」
「FAカップって何?」
「…てか御手洗、ウザいよ」そうしてヨーロッパフットボールごと、自分も切り捨てられた。
…ただ、それでも俺は、ヨーロッパフットボールの虜であることをやめようとしなかった。
まだTVの専門チャンネルもなかった時代、海外フットボールを扱った雑誌を夢中で読みふけった。そんな自分を夢中にさせてくれる文章とともに、「ライター」の文字を見つける。
……ああこの人は、俺の好きなモノが「そこにある」と教えてくれている。
そして、そんな俺が「ここにいること」を肯定してくれている。この「ライター」という職業の人間だけは、自分をわかってくれる、と思っていた。
この御手洗は、その後サッカーのライターになるが、
自分の希望と違って、ヨーロッパではなく、
アメリカのサッカーリーグでプレイする日本人選手を取材するよう命令される。
ふてくされた気持ちでアメリカに向かう御手洗。
そこで御手洗は、安藤ソラに出会う。
彼は日本代表選手としても活躍し、将来を期待され、ヨーロッパリーグで活躍する道もあった。
にも関わらず、サッカーの本場ヨーロッパではなくアメリカのプロチームをあえて選んだ。
しかし、自分が属するチームを強くしたいと願い努力するも、
チームメイトには誰にも理解されず衝突するばかり。
チームメイトと噛み合わないから成果も出せない。
はたからみていると、愚かで、割にあわない選択をしているようにしか見えなかった。
そんな彼をみて、御手洗は最初彼をバカにしていた。
そんな中、安藤はケガで一時戦線離脱を余儀なくされ、
ついに日本のファンも安藤はもう終わったとして見限り、
御手洗以外のメディアも、安藤を取り扱うことをやめて撤退していった。
御手洗も会社から「安藤はこれ以上おいかけなくてよい」と言われる。
そらみたことか、と最後のつもりで安藤を見に行く御手洗。
しかし、愚かな選択をした結果、こういう結末になり、さぞ後悔しているのだろうと
思って見に行った安藤は、諦めていなかった。
チームの為に頑張るという目標を捨てようとせず、
復帰を目指してただ一人孤独にトレーニングを続けていた。
安藤を見て御手洗は過去の自分を思い返す。
俺だ――― 目の前に 俺がいる―――
誰もわかってくれなかった
ずっとひとりぼっちだっただが、それでも、なお「自分はここにいる」と声をあげ続けている
そんな俺を救ってくれたのは、何だったか……?
そして、御手洗は、この時から初めて安藤ソラについて真剣に知ろうとするようになる。
俺はお前のことを全然知らなかった。
わかろうともしていなかった。
なぜお前は、順風満帆だったキャリアを捨て、こんなところに来た。
なぜこのチームを選んだのだ。…お前の口からきけないのなら こっちから調べてやろうじゃないか。
…そして、俺が世界に知らしめてやる。安藤ソラ、お前が「ここにいる」のだということを…!
ちょっと前は、こういう機能はmixiが担ってたりしたのかな。
それとも、やはり今でもこういう機能は雑誌が最強なのだろうか。
今はどうなんだろう。ネットはこういう人たちをすくい上げることができてるんだろうか。