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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「オトコの娘ラヴァーズ!!」  同人業界からメジャー雑誌で連載持つようになった作家の苦悩

作品自体は、いろんな形で「オトコの娘」が好きな人たちが
それぞれの好きを持ち合ってあつく語り合うようなお話。
オトコの娘」が好きといってもそれぞれの好き、の形は異なっており、一人称視点、二人称視点、TS好き、コスプレ好きなどいろんな方向性がある模様。いわれてみれば当然なのだけれど、あんまりよくわかってない世界なので面白いです。

同類型の作品に「百合男子」があるけれど、私はあの作品はちょっと合いませんでした。「百合姫」という百合専門雑誌で連載されているせいか作品の具体名を知ってることを前提とした実にヲタらしい会話のやりとりが多く、私のように知識がない人間には読んでも語ってることがよくわからず、さらに主人公が暑苦しすぎてついていけなかった。好きな人はめっちゃ好きだと思いますが。

一方こちらの作品は、具体的な作品名に基づく濃さや、良い意味での暑苦しさは1話で終わっていて、2話以降は立場の違う人間同士が、お互いの立場を言語化していくという描写を取ってます。どちらかというと、かなりメタ的な視点で一つ一つの作品にのめり込まず、また、語る内容もジャンルといった大枠の部分であるため全然「オトコの娘」について知らない私でも分かるような形で説明されており、とっつきやすかったです。


オトコの娘」というニッチなジャンルの作家がメジャー雑誌で連載を持つことになって…

この中で、主人公ではないけれどこの作品に出てくる漫画家先生のエピソードが面白かった。

神埼リョウという作家は、「オトコの娘」ジャンルでは有名な同人作家で、ニッチな「オトコの娘」系雑誌などでも連載を持っていたけれど、ついに認められてメジャーなマンガ雑誌で連載を持つことになります。

しかし、いかに「オトコの娘」ジャンルで有名になった作家といえども、メジャー誌で自分のカラーをいきなり全面的に押し出せるわけではない。


①まず「オトコの娘」ものでいく、という企画を通すことに一苦労。
昔と違ってジャンル認知度があるから「オトコの娘」という概念そのものの無理解に苦しんだり、いちから説明する必要まではないとしても、雑誌としてはやはりリスクがあるためなかなか受け入れてもらうのが大変。


②また、連載が開始しても、同人誌時代や、ニッチな雑誌時代と同じように
オトコの娘」全開で勝負することにもまた困難が生じる。

確かにあなたの言うとおり描写はまだまだソフトかもしれない。そうはいっても、オトコの娘ってまだまだニッチなジャンルじゃない?オトコの娘をよくしらない人にも抵抗なく読んでもらうためにはいろいろ工夫しなきゃいけないわよ。そ、そりゃ今までの感覚で見れば多少は物足りなさを感じるかもしれないけど……。あ、もちろんさ。今後はもっとディープな内容になっていく予定よ!

③そうやって苦労して描いても、オトコなど知らない客層がメインのところに切り込んでいくわけだからアンケートで数字はとれず、むしろ心ない批判にさらされる。

私はわかったのよ。世間では、私達が思っていたほどオトコの娘は歓迎されてはいなかった。もちろん一時的にもてはやされはしたわ。しかし明るみに出てしまえば反対する人間も多くなるでしょ?

編集からはこう言われたわ。「たしかにオトコの娘のように特定のファンだけにウケるのも結構!しかし僕は先生の実力ならばより多くの読者に支持されるものを作れると思ってるんだ!実際、読者アンケートにも多いんだよ。ヒロインがオトコでなければってね」

それが多数の意見だったのよ。


そしてなにより一番の問題が

④「は、恥ずかしいのよ!オトコの娘マンガの神崎リョウと呼ばれることがね!」

同人誌やマイナー雑誌で描いている分にはよくても、メジャー雑誌において、そういう認知をされることは望ましいことがどうかは作家本人にしかわからない。ジャンルがジャンルなので、そこはもう作家の意思が尊重されるべきところだとは思う。
いくらファンが「恥ずかしがることはない」「それを隠すのはファンへの裏切りだ」と言ってもそんなの勘違いしたファンの勝手な要望に過ぎない。

こういう時一番容赦無いのは、自分が作家の味方だと信じて疑わない、それでいて相手を思いやる余裕を失っている必死すぎるファンだと思う。主人公はファンであることに甘えて、この作者に対して心ない声を浴びせかけてしまう

正直先生には失望したよ。本来なら僕達オトコの娘萌えたちを先導するような立場に立たなきゃいけないのに。
今になって恥ずかしいだなんて…

作家やアイドルは、こういうファンやアンチの相手しないといけないんだからほんとに大変だなと思う。


恥を捨てることでなく、ファンの要望に応えるでもなく、自分の描きたい衝動にこそ身を委ねる

恥ずかしさを断ち切れば良い物が作れる?本当にそう思うのか?

オトコの娘」たしかにこの言葉のおかげで、女装は今やブームを経て一つのジャンルになりつつある。
しかし一方で女装はまだまだ社会的にはタブーなのだ。
こういうものをテーマに置く場合、普通は理性がブレーキをかけるものだ。

しかしだ!
それでも描きたい衝動が抑えきれずどうしようもなくなり、思わず描いてしまった者こそ
他人の心を動かすものが作れるのではないか?

奴の顔を見ただろ?本能と理性の板挟みになり、もがき苦しむ良い顔をしていたではないか!
心配いらん。あいつは世間体や、一部の人間の声ごときにつぶされるほどやわじゃない

この作品では、作家は、誰の声でもなく、自分の力で立ち直ることに成功する。もちろんこんなにうまくいく展開ばかりではないと思うけれど、一つの物語としてこれはこれで有りなんじゃないかと思います。