個人評価★★★★★
この日からずっと、この子とわたしは「チカちゃんとヒロちゃん」です。私はよく名前が変わるので、私をヒロちゃんと呼ぶのは今ではチカちゃんだけです
この作品すごく好き。面白いというか素晴らしいです。短いのですっと読めますが、それでいていろんな要素があって、すごく語りたいことが多い作品です。是非読んでみてほしいです。そんで感想共有したい。
最初は、ロボットである「プラハ」が人間であるチカちゃんとの交流を通じて人間に近づいていく話かと思ってた。「人間の証明」問題がテーマになるのかな、と。
つまり「これはロボットにはできない。人間でなければできない」といえる行為をプラハが行う、そんな展開になるのかな、と。*1
でもそうじゃなかった。そういうSF的な設定も決して疎かにはしてないけれど、大事なのはあくまでプラハの成長を見守ることであり、それ以上にチカちゃんとプラハとの関係だった。
チカちゃんという、賢さと意志の強さの同居したヒロイン
チカちゃんはとても賢い。賢いから、人間とロボットの違いをよく理解して、それに合わせて対応できる。だからこそプラハの「教育係」のようなポジションになる。人とロボットの違いも理解しているから、関係性に一線を引いている。だから「高校を卒業して大学生になったらプラハから離れる」と決めている。
「ヒロちゃんの好きは、評価しているとか選択する可能性が高いとか好感度が高いという評判を知ってて同意スべきとかそういうことでしょ。心とは別物でしょ?」
「なかなか正しい。でもひとつ教えよう。プラハが自分自身に一番高い評価点をつけるのは沖島先生に褒められた時、二番目がチカちゃん、君が笑顔を向けてくれた時だよ。」
「・・・・そういう計算の結果でしょ。私がヒロちゃんのことを好きっていう気持ちとは違う。一緒にしないで」
しかし、そういう賢さも持ち合わせながら、一方で純粋にプラハのことを好きで、二人でいる時間をとても大切にしようとする。その結果、この作品ではプラハは期限が切れたら記憶を失う、などの設定は持っていないのだけれど、チカちゃんの中では限られた時間しか共にいられない、それでいて誰よりも大切な存在、になっている。
これは現在放映中のアニメ「プラスティック・メモリー」のギフティアとの関係に似てますよね。
しかも、この作品の場合、チカちゃんとプラハの関係は4歳の時から始まっており、ずっと一緒に過ごしてきたし、プラハはチカちゃんの影響を受けて成長してきているので、もう二人の関係は姉妹でもあり、母と子でもあり、友達でもあり、そして愛する存在でも在る。いや、もうそういうものすら超越している。決して誰もかわることのできない唯一無二の関係性になっている。
この子とわたしは「チカちゃんとヒロちゃん」です。
だから、別れが近づいてきた時の「チカちゃんの」切なさはひとしきり強い。
人とロボットの気持ちのすれ違いが切なさを加速させている
しかし、一方のプラハはその別れがよく理解できない。作品中で「大切な人」との別れを体験して学習するけれど、チカちゃんとの別れ、はよくイメージ出来ない。だからチカちゃんの切なさをプラハは共有することが出来ない。そこには人とロボットの明確な壁がある。
繰り返すけれど、チカちゃんはそういう壁をちゃんと理解してきちんと受け入れてしまうことができてしまうくらい賢くて、それでも途中で離れられないくらいプラハのことが好きなんですよね。
チカもプラハも、お互いがお互いのことを大事に思っているのに、その気持ちが大きくすれ違っている、そこが、切なさを加速させている感じあります。チカちゃんがすごく悲しい顔をしている時に、プラハは笑顔をしているコマとかもう胸がぐっとしめつけられる感じでした。
ロボットの愛し方の表現がすごく良い
チカちゃん、君は知らない。
プラハがロボットなりに君をどれほど愛しているか
ここからは実際に見て欲しいのですが、
今までプラハはチカちゃんの影響を受けて、ロボットとして独自の成長を遂げてきています。
感情の表現も、人と全く同じではないけれど、かなり豊かで個性的な
まさに「プラハならでは」のものになっている。
そんな今までの蓄積がチカへの愛となって表現されるシーンは
実にロボットらしく、それでいて人間以上に人間らしく感じられるものになってます。
この作品ほんとに1巻とは思えないくらい中身ぎっしり詰まってて読み応えあるので
ぜひぜひ私以外の人にも読んでみてもらいたいです。
樹なつみ「OZ」とか相田裕 「ガンスリンガー・ガール」とか、もういろいろと話膨らむ。