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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「鬼滅の刃」 鬼と人間の境にあるものはなんだろうか?

個人的評価★3 (今後さらに期待)

「人外のものと戦う」作品として広く捉えれば無数に作品がありますが、
その中でも「コミュニケーション重視」型ですね。

最近読んだ作品の中からぱっと思いつくもので言えば

★★★★★ヴァンパイア十字界
★★★★★ハンターハンター キメラアント編
★★★★ ワールドトリガー
★★★  進撃の巨人
★★★  クロノクルセイドワールドエンブリオ
★★★  つぐもも
★★★  青の祓魔師
★★★  双星の陰陽師
★★   屍姫
★★   甲鉄城のカバネリ
★★   終わりのセラフ
★    デストピア

あたりでしょうか。

特に「終わりのセラフ」と「双星の陰陽師」が近いと思います。
昨今のトレンドとしてど真ん中を抑えている感じがしますね。



鬼と人間の間で、共通している部分と、明確に違う点の両方を描いているのがとても良い

この作品、人も鬼もどちらも自分の大切なものを失っている。どちらも悲しみを背負っている。


そのうえで、人側は、人間としてとどまるために必要なものをとどめ続ける。

親のいない俺は誰からも期待されない。
誰も俺が何かを掴んだり何かを成し遂げる未来を夢みてはくれない。

誰かの役に立ったり一生に一人でいいから誰かを守り抜いて幸せにする
ささやかな未来ですら、誰も望んではくれない。
一度失敗して泣いたり逃げたりすると、あぁもうこいつはダメだって離れてく。
でもじいちゃんは、何度だって根気強く俺を叱ってくれた。
何度も何度も逃げた俺を何度も何度も引きずり戻して。
明らかにちょっと殴りすぎだったけど、俺を見限ったりしなかった。

(中略)

諦めるな。
痛くても苦しくても楽な方へ逃げるな。じいちゃんにぶっ叩かれる。
そうだ… たんじろうにも怒られるぞ……


鬼側は、そのことを忘れてしまっている。
戦いに敗れこの世から消滅する間際にそれを思い出す、という構図になっている。

優しい目、透き通るような
人間だった頃、誰かに……優しいまなざしを向けられていた気がする。
あれは誰だった?思い出せない。いつも私を大切にしてくれていた人。
あの人は今どうしているのかしら。

毎日毎日父と母が恋しくてたまらなかった。
偽りの家族を作っても虚しさがやまない。
結局折れが一番強いから、誰も俺を守れないし庇え無い。
強くなればなるほど、人間の頃の記憶も消えていく。
自分が何をしたいのかわからなくなっていく。

俺は何がしたかった?
どうやってももう手に入らないキズナを求めて、
必死で手を伸ばしてみようが、届きもしないのに。
(中略)
僕は、謝りたかったんだ。
ごめんなさい僕が悪かったんだ。どうか許して欲しい


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さすが富樫、、、上手いこと言うなぁ……


主人公は鬼に家族を殺されているが、それでも鬼に慈しみを持って接する

殺された人たちの無念を晴らすため、これ以上被害者を出さないため、
もちろん俺は容赦なく鬼の頸に刃を振るいます。

だけど、鬼であることに苦しみ、
自らの行いを悔いているものを踏みつけにはしない。
鬼は人間だったんだから。俺と同じ人間だったんだから。

足をどけてください。醜い化物なんかじゃない。
鬼は、虚しい生き物だ。悲しい生き物だ。

妹が鬼になったから、というのもあるけれど
そうでなくとも、家族が皆殺しにされ、復讐を原動力として戦ってもいいはずなのに、
鬼のことも理解し、哀れみの目を持ってみることができるこの主人公なんかすげえ。

みんな、たとえ理性で分かっていても、心からそれを納得することは難しいんですよね。
だからそれができる主人公に、他の人も夢を託す。

それが姉の想いだったなら、私が継がなければ。
哀れな鬼を切らなくて済む方法があるなら考え続けなければ。
姉が好きだと言ってくれた笑顔を絶やすこと無く。
だけど少し…疲れまして。

たんじろう君、がんばってくださいね。
どうか、いもうとさんを守り抜いてね。
自分の代わりに君が頑張ってくれていると思うと私は安心する。きもちが、楽になる。

人ってそんなに冷たいわけじゃないけれど、それでも気持ちってそんな簡単に制御できるものじゃないから。「かくあるべし」を本心でそうだと思ってたり、強い意志のちからでそれを実践している人がいたら、応援したく成る。


「鬼で有りながら人を襲わない存在」 主人公の妹の禰豆子がこの作品のカギ

鬼と人は相容れない。
主人公も、鬼は悲しい生き物だと認めつつも
人のためには鬼を殺さねばならないと認めている。

しかし、彼が命をかけて守りたい妹は
敵の首領の手によって鬼に変えられてしまった。
さて、この妹の存在がこの作品において重要に成る。

この子、しゃべれないんだけれど、
要所要所で体を張って兄である主人公を守るんですよね。
もうそれがかわいくて可愛くてたまらんです……。



しかし、いくら兄と妹の間で通じ合っていても、社会は、特に
主人公が所属する鬼殺隊がそれを認めるはずはなく
6巻で、禰豆子を巡って裁判が行われる。

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これは「進撃の巨人」で主人公エレンが辿った道と同じである。
エレンの場合は自分で自分の弁護ができるし唯一無二の利用価値を証明することで認められた。
しかし、本作品の場合禰豆子は喋ることが出来ない。利用価値が無いわけではないが必要というわけではない。
むしろ、全体の影響を考えると処分したほうが簡単である。

主人公の思い以外に、どうやって妹の存在を他の人に認めさせることなどできるだろう……

という絶望からの逆転シーンはグッとくるものがありました。今後も、ひとこともしゃべらないだろうけれど、禰豆子は身をもって雄弁に語ってくれるんだろうなと思います。

この作品の厳しい世界観では、ハッピーエンドとはならないと思いますが、できれば生き残って欲しいなぁ……。



「組織の中で自分の大切なものを守る」ためには何が必要か。

禰豆子が二年以上もの間、人を食わずに要るという実績が有り、禰豆子のために二人のものの命が賭けられている。
これを否定するためには、否定する側もそれ以上のものを差し出さなければならない

それでもまだ快く思わないものもいるだろう。
これから証明しなければならない。きみと禰豆子が役に立てることを。そうしたらみんなに認められる。言葉の重みが変わってくる。

この作品、肉親や仲間との絆を強調しつつも、組織や社会においては、ちゃんと理や実績がなければ通じない、ということも同時に示していて、ちゃんと世界が描かれているなぁ、という感じがします。



おまけ

この作品もまた、なんというか今の社会を暗示してるように勝手に読み取ってしまってツライ。

この作品世界、強い人と弱い人はいても、基本的に幸せそうな人はいない。
生き残るために人と鬼で殺し合ってる。しかも、鬼は人の中から生まれるからキリがない。

社会が貧しくなればなるほど、実際にこういう構図がアリ得るわけで、
そんななかで頼れるのは、家族や仲間の絆とか、絶対的な力しか無いのだろうかね……。

単に鬼を倒して終わりとかじゃなくて、なんかもっと全体が幸せになるような終わり方を期待したくなってしまいますね。

私が★5をつけた「ヴァンパイア十字界」は、反則ではあるけれどそこまで到達している作品だからすごい好きなのです。

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