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「ヘンタイ・プリズン」のゲーム制作エピソードが「面白くない企画が面白くなっていく過程」を丁寧に描いててすごくよかった

「ヘンタイ・プリズン」の「ゲーム制作」エピソードが凄くよかったので紹介。


最初にダメな企画の例を出し、その後でよくなった後の企画の話と比較できるようになっているのでとてもわかりやすい。



特に前後の展開は見なくても、この20分くらいの動画だけ見れば把握できるのでぜひ見てほしい。
www.youtube.com




作者が表現したいものを詰め込んだストーリーは、作者にとっては面白いが、「まだ」作者にとって「だけ」面白いものに過ぎない

このゲームでは、みんなで協力してエロゲーを作る展開になる。

主人公はディレクターとしてゲームの企画書を考える。

なかなかアイデアが浮かばなかった主人公だが、「自分が表現したいもの」を素直に表現すればいいんだと気づいてからは一晩で企画書を完成させる。

その時の主人公にとって、この企画は「世界で一番面白い企画」であった。


しかし、仲間からの評価はさんざんだった。

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面白くないと感じる仲間も、面白いと感じている作者もどちらも間違いではない

この時点でも、仲間からは「アイデアや着想の一部」は面白いと評価されているのである。

それでも、仲間にとっては作品はつまらないのだ。


主人公は自分が最高だと思ったものを酷評されて最初は否認する。

「仲間にセンスがないからわからないのだ」といって受け手のせいにしようとする。

否認→怒り→取り引き→抑うつ→受容

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なかなか「自分の作品がクソ」であるという事実に直面できなかった。

そりゃそうだ。自分では最高と思っていたのだから。


「作者だけが感じている面白さ」を伝えるのに必要なものが欠けているのだが、コレガワカラナイ

しかし、仲間からの具体的な指摘を聞くうちに、

「自分が表現したい部分」がまったく伝わっていないことが判明してくる。

「面白くない」わけではなく、何かが足りない、何かが間違っている。

しかし、それがわからなくて悶々としていた。



「どうしても表現したいもの」を再確認し、それ以外の「ごちゃごちゃ」や「違和感」を取り除いていく過程が大事

しかし、ここでチサトという人物と話をするうちに、企画が見違えるようによくなっていく

・導入がすっきりしていて
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・主人公の動機がしっかりしていて

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・フックとなる要素があって

・共感できる展開があり

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・浮いた存在を作らない

などなど、企画を掘り下げていった結果、「テーマ」が読者にも伝わる形で表現できるようになる。


根本は何も変わっていないけれど、見せ方を変えることでさっき酷評していた仲間も面白いと言ってくれる

この状態までしっかり作者側で掘り下げた後で企画書を練り直したところ

仲間たちも「なんだよ……結構面白いじゃないか……」という反応を返してくれる。

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そして、その変化に感動する主人公。

いやこれはほんとに感動するよね。自分は読んでるだけなのに、主人公と同じ気分になってて、めちゃくちゃ心をつかまれました。



ここから先も紆余曲折ありながらゲームを作っていく展開が丁寧に描かれていてとても面白いです

エロゲ制作をテーマにした作品は「らくえん」などいくつかの作品ですでに描かれていますが、

本作品は「メインテーマではない」がゆえに登場人物との色恋沙汰とか抜きにして

淡々と作品作りの面白さが語られており、それが逆にすごく面白かったです。



前作は「性的マイノリティ」の権利獲得のための戦いを描いた話でしたが、今回はそこから一歩進んで「マイノリティたちの表現の自由」を取り扱った作品になっています。

体験版だけで10時間近くある本作ですが、これでもまだ共通パートが終わったばかりというから恐ろしい。


体験版のおかげで作品のテーマははっきり見えてきました。

前作「ぬきたし」は「性的マイノリティ」が体制に逆らって権利を獲得するための戦いでした。

www.tyoshiki.com

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「ぬきたし2」は、逆に自分たちが体制側になって、その他の「性的マイノリティ」からの攻撃を受け止め、受け入れていくかという物語でした。

このあたり「グレンラガン」が好きな人にはたまらなく面白いお話だと思います。

特に2は現実のフェミニズムが完全に失敗しているトランスジェンダーとの向き合い方なんかも描かれていて非常に面白いです。

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そして最新作の「ヘンタイ・プリズン」では似たようなテーマではありますがさらに踏み込んだテーマとして「マイノリティたちの表現の自由」を扱っていくようです。


本作品では「表現の自由」が一切認められない箱庭の世界として「チューリップ・プリズン」というディストピアを舞台を描いています。

外の世界で多数派から許容されない性的嗜好を持つ主人公たちは、社会から否定され、人権も奪われた状態で物語はスタートします。

そこで表現の楽しさに目覚めるものの、このディストピアでは表現の自由など認められていないという残酷な現実を丁寧に描いています。

そんな社会で、主人公はどういう選択をするのか。どうやって戦っていくのか。体験版をプレイしたことで、先の展開が楽しみになってきました!


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ヘンタイ・プリズン(1月28日発売予定)

ミンナモ、ヘンタイプリズン、ヤロウ 

これ絶対面白いと思うよ。