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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「明日、私は誰かのカノジョ」 今やぴえん系女子のアイコンにまで上り詰めた強キャラ「ゆあてゃ」についていろいろ考察(妄想)してみる

お気に入り度★★★(お薦め度★★★★★)

名前はもちろん知っていたんですが、この手の生々しい話は読むのに体力を使うのでちょっと避けてました。

去年末にphaさんがお勧めしていたのとちょうどDMMブックスの半額セールだったのでエイヤで読んでみました。

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「Webで課金して読む人がメインなのにも関わらず累計200万部突破した超人気コンテンツ」は伊達じゃなかった

1巻から4巻くらいまでは「パパ活してる女の子」とか「整形女」とかの話で「ふーん・・・」くらいのテンションでちょっと距離を取って読んでたんだけど5巻から登場する「ぴえん系(地雷系)女子」こと「ゆあてゃ」が可愛すぎて一気にファンになってしまいました。

この子ぶっ飛び過ぎてて面白いので、普通に読解するんじゃなくて、ちょっと幻覚多めな感じで、やや脳内創作も交えてキャラクター解釈していきます。



ホスト狂いな「ゆあてゃ」という女の子、幸せそうでもないししんどそうなのに、なんでホスト狂いをやめられないのかが最初謎だった

好きなはずの「推しのホスト」と直で会ってるときは、ひたすらその男を試し続け、ケンカし、男をうんざりさせる。

そして、男がちょっとでもそっけない態度を取るとどうせ私のことなんか愛してないんだー!って喚き散らす。


こういう行動パターンは一般的には「演技性人格障害」とか境界例って呼ばれる人の特徴とされており、
最初はそういう感じなのかなーって思ってたんですが、読み進めていくとなんかそういう感じでもないんですよね。


終盤にゆあてゃの過去編とかが描かれるのですが、そのあたりの情報を加味すると……

彼女は、もともと田舎育ちでクソみたいな男に失望し続けてきたんですね。

田舎でそこそこ優等生でまじめに生きていたけれど、みんな彼女を人間として扱わなかった。

「少年のアビス」で描かれたような世界で生まれ育って、その中で、大人や、特に男というものに絶望していった。

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特に父親や都会からきて彼女の処女を奪ったチャラ男のように「約束を守らない男」は絶対に許せなかった。

そんな彼女にとってのキーワードはこの「約束」と「努力に報いる」の2つなんだと思います。


「ゆあてゃ」にとって大事なのは「愛してくれること」ではなかったんじゃないだろうか? 彼女はただ「本気で愛せる存在」を求めていただけなんじゃないか

彼女にとって、誰かを愛することができる、誰かを信じることができる、ということは生命に直結するくらい大事で、誰かを全力で愛してなければ生きてないのと同じ。

だから相手に「自分が全力で愛するに足る人間であれ」と求める。それさえがんばってくれれば自分の身体を売ってでも金を稼いですべて貢ぎ続ける

彼女は、男からの愛情など求めてない。「愛するに足る人間としてふさわしい存在である」ことだけを求めてる。そんな印象を受けました。

「推しホスト」であるハルヒくんが、自分が信じて愛するに足る存在でさえあれば自分のすべてを捧げることもいとわなかった。

というより、自分のすべてを捧げられる存在が欲しかった。そういうことじゃないかなと。

作品中で「ハルヒからの甘い言葉や賞賛にはピクリとも反応しない」描写からそんなふうに感じました。


これは、「春琴抄」「ホーキーベカコン」で描かれた佐助の恋に近い気がするなあ

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佐助と琴は、究極の美を求めていた。
だから、佐助は琴が「美のピーク」に至った時、彼女を殺そうとした。
そして、彼女の殺害に失敗して彼女の顔が醜く焼けただれてしまうと、佐助は彼女の姿を見ないようにと自分の両目をつぶした。

ゆあてぁも、このくらいの激しさでハルヒのことを「愛したい」と思ってたんじゃないかなあ。



結局作品中で登場するホストは、ゆあてゃにとって「自分の運営を捧げて心中する」に足る相手ではなかった

ゆあてぁが一番キレたのは、彼が浮気をしたり枕をしたことではなかった。
彼が「言い訳」をしたり「弱音」を吐いた時にガチギレしてた。
彼がよそのおんなと枕をしたり、彼女がいないところで他の女と寝ていることは問題にしてなかった。

とにかく「雑」なところにキレていた。



「ゆあてゃ」は「愛されたい女にとって完璧なホスト」には見向きもしなかった。


彼女が「愛されること」には全く興味がなかったんじゃないかと感じた根拠はもうひとつあって
彼女の推しである「ハルヒ」以外に登場した「楓」というホストの描写があるためだ。


この楓は、歌舞伎町No1ホストであるが、その数字が裏付けるように「愛されたい女にとって完璧なホスト」であった


自分に自信のない女性に等身大の存在として接して自信を持たせ

おしゃれしたり褒められる快感を満喫させ、
女性が傷ついていたら、どんなに忙しくてもスピーディーに細かいケアができる。
サービス業の極致ともいえるきめ細かい対応を苦も無くこなせる人物だった。

「金を払っている間は完璧にもてなして自分を愛してくれる」存在が欲しいだけなら

ゆあてぁは「楓」を選べばよかった。

でも、彼女はこういう「奉仕してくれる」男にはみじんも興味がなかった。


彼女は、「貢がせてくれる男」というか、ある意味「自分を傷つけるけど、この男に傷つけられるなら納得できる」という存在を求めていたのかもしれない

彼女のもう一つの特徴として、傷をこれ見よがしに見せびらかすことだ。

彼女は登場した瞬間からインパクトが強くていきなりこれ見よがしにリストカットを見せびらかす。
「この程度で引くような人間はこちらからお断り」だと言わんばかりに。


これ、普通だったら「承認欲求」って感じなのかもしれないけれど彼女の場合は「困らせた時の反応が見たかった」のかもしれないですね。

ゆあてぁは彼女が彼を困らせて、怒って自分を殴ったりするような男であればそれはそれでよかったんだと思う。

ただ、その時に日和った態度を取ったりごまかそうとすると、烈火のごとく怒りだす。

とにかく、彼女は、田舎にいるときに自分があまりにもないがしろにされ、適当に傷つけられてきたことが許せなかったから自分を傷つけるなら真っ向から暴力をふるってもらったり、言葉で真正面からバッサリ斬られるっていう形で真剣に自分と向き合ってくれる存在が欲しかったのかもしれません。


「金を介した関係でしかない」ことをわかってるのに、「自分が真剣に向き合ったら真剣に向き合ってほしい」と願う矛盾

彼女は頭が悪そうに見えるけれど、地元では優等生だったし

今でもものすごく頭が良い。

それ故に、嘘は嘘だとわかってしまう。

楓にハマった女性のように「嘘」自体に酔うことはできない。

それでも、嘘の関係の中で、真実を求めてしまう。

彼女にとって「自分に真剣に向き合え!」という要求は

愛されたいという気持ちよりもプライオリティが高い。

嘘にまみれた幸せよりも、

憎しみや怒りでもいいから、真剣な感情を自分に向けてほしい。

それが彼女の望みだったんじゃないかなって思います。

「ゆあてぁ」は、やはり「父」や「チャラ男」への憎しみを払拭してくれるような理想の男性を求めていたんだろうか……

彼女の理想はどこまでも高く、それをかなえられる男性がこの世に存在するのかと言われると

正直かなり厳しいような気がしますが……

結局作中ではゆあてぁのお眼鏡にかなうような理想の男性は存在せず、彼女はこれからもそんな幻を追い求め続けることに。


実際にいそうなキャラクターとして描かれながらも、やはりマンガでしか表現できない何かをゆあてゃには感じる

個人的に、私がゆあてぁのことを好きになったのはこのシーン。

それまでは「共に戦う戦士」としてめちゃくちゃ親切にしていたのに

ホスト通いやめると宣言した瞬間表情が一変し、即その場で縁切り。

その理由は「ヌルいから」。

彼女にとって一番大切なのは、「理想を抱いて溺死する」覚悟を持って理想を追い求め続けること。

彼女ほどストイックにホストに狂ってる存在はいない。

最初はリアルでもいそうだなって思ってたんだけど、そのストイックさに奈須きのこ世界の住人かよって感覚を覚えた。

この子に魔術刻印あったら最強だったと思うんですよ私は……。


頑張れゆあてゃ! 君ならいつか理想のホストにたどり着ける……でもできればホスト以外で理想の男性を見つけて幸せになってほしい


ゆあてぁのストーリーは9巻で終わってしまいます。

多分これからもあきらめずにずっと戦い続けるんだろうな・・・って感じで

物語からフェイドアウトしていく。

すでに限界ギリギリの描写がされてたので

普通に考えたら数年以内にはボロボロになって消えていくんだろうなって描写のされかただったけれど

でも、読者としては、最後まで折れずに戦い続けて

幸せをつかんでほしいなと思うのでした



まぁそんなわけで、クッソ面白かったのでゆあてゃが出てくる5巻~9巻だけでいいから読んでみてほしい。