頭の上にミカンをのせる

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「ヘンタイ・プリズン」 千咲都ルートクリア!(ネタバレ感想)

お気に入り度★★★(お薦め度★★★★)

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の続き。個別ルートの真打です。


チサトは明らかに他の2キャラよりもヒロインとしてのウェイトが高いです。
前作におけるグランドルートのヒロインであった「文乃」的ポジションに近い立ち位置です。



そもそも本作「ヘンタイ・プリズン」は

・「HENTAI」とか「世間からつまはじきにされているマイノリティ」がいかにして自己表現をするか
・自分たちを排斥しようとする社会の圧力といかに折り合いをつけていくか

というテーマがあり、

主人公は「刑務所の規則に負けずに仲間たちとエロゲ作りをする」という形で自己表現しようとしており、その過程で3人の仲間を得たというのが体験版までの展開でした。

他の2ヒロインのルートでは刑務所内の闇を暴く方が重大なため、このゲーム作りの話は引っ込んでしまうのですが、チサトルートだけはガッツリとエロゲのシナリオ作りをやってます。だから自然と作品のテーマに近いチサトルートが重要になってきます。





チサトルートはあまりネタバレしたくないので、こんな感じで主人公とチサトが物語作りについて語り合うシーンとかあるよって話をしておきます。



読者の納得を取るか、キャラクターの心に最後までよりそうか

「復讐…させちゃダメかなあ」


最初の原稿では、何の能力もなった女教師に今こそ復讐しようというヒロインが主人公の主人公の説得によっては復讐を断念する展開になる。そして、復讐をあきらめた代わりに仲間を得たヒロインは、特殊な能力を失い街へと受け入れられることになる。


これだと作品のテーマは「人は分かり合うことができる」ということになるだろう。柊一郎は最後に異常性癖と呼ばれてきた主人公たちが、街を守ったことで受け入れられるという所が特に良いと思った。チサトも最初は柊一郎の意見を受けてそれに沿ったシナリオを書いた。

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でも、チサトはこの展開にどうも納得がいっていないようだった。「無事に復讐を達成しヒロインが敵を殺す結末にしたい」と言い出した。



「空っぽなヒロインが持っていた唯一の目的は、愛していた父親の復讐だった。それと主人公への想いでとても苦しんでいた。最後にいくら主人公の説得とはいえあっさりと手放していいのか」


「物語にはこういうのがよくある。第三者や読者にとって正解の結末が、キャラクターの意に反している場合。 例えば主人公の選択は幸せにつながるから考え方を改めるべきだって。感情的な復讐は何も生まないとかそういうありきたりなやつ。今回の場合だと人を殺すって悪いことだからそれをしないようにって。」
一般的に、主人公の行動が世間の常識から逸脱している場合それが矯正されて正常になるという美談に持っていくことが多いんだとチサトは言った。


「他にも、動物の中で暮らしてる人が 壁に映る影を実物だと思い込んでいる場合洞窟の外に出して本物を見せてあげるのが幸せなんだろうか」

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なるほどなんとなくわかった気がする



他人から見たら不幸せかもしれないけれども、本人がそれを幸せだと思っている時それを正すことは本当に広いにとっての幸せなんだろうか。


よくある物語では、一般的な読者が幸せだと思うほうを選んでいるかもしれない。


「でも、きっとヒロインだっていろんな辛いことあったと思うんだ。 父子家庭でただ一人の父親を愛していたヒロインは、ラスボスのせいで彼女は天涯孤独の身となってしまったんだ」
「もちろん、復讐を果たしたとしても父は戻ってこないし人殺しという十字架を背負うことになる。でも、せめて復讐くらいさせてあげたい。」



チサトはこのキャラクターにとって一番の望むものを勝ち取って欲しいと言ってるようだった。この話が綺麗にまとまるよりも、その子が満足する決着にしたいのだ 。



「それに、この一般論に落ち着くために、主人公が言わないことを言ってるような気がする。この主人公だけにはこの子だけには好きな人のことを肯定させてあげてほしい」
「どんなことがあっても主人公とヒロインがお互いの気持ちに寄り添ってあげる。復讐を成し遂げて二人とも罪悪感を抱き続けることになっても、主人公が共に生きるそういう選択をしてあげてほしい。」
「この子の意思を尊重してあげたい」

それが彼女にとって最大のハッピーエンドということだった。

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「私はこのヒロインの子すごく好きだ」
彼女は作品の登場人物をちゃんと人間として扱っていた。
「私はこの子と一緒に(物語の主人公に)ずっと恋してきたから。だから凄く思い入れがあるんだ」



チサトがこんなにはっきりとした物言いをするのはほとんど初めてな気がした。最近までまともにお願いすらできなかったのに。




「わかった。じゃあチサト先生のアイディアの通りにしよう」

そんなこと考えもしなかったけど、確かにその方が主人公もヒロインも喜ぶかもしれない。 それに、これは異常性癖と言うか世間から排斥された人間たちの物語だったんだ。こちらの方が俺の考えたテーマに合ってるかもしれない。
前を向かず後ろ向きに生きる。復讐をして大きな十字架背負ったとしても後ろ向きに全力に走る。そんな話があったっていいと思った

いわゆる「メリーバッドエンド」ですね。

ja.wikipedia.org


物語のお約束とか読者の常識に合わせずに、本当にキャラクターの考えや幸せに沿って考えた時、読者からしたらバッドエンドに見えるような結末になることがあります。



こんな感じで、キャラクター同士が物語の作り方について会話しながら我々プレイヤーにも考えさせてくれるところはなかなか面白いです。





他にもこのルートでは谷崎潤一郎の「小さな王国」をベースとして新しい貨幣を刑務所内で流通させていくお話などがありこの部分が非常に面白かったです。

創作活動をやってる人にはぜひプレイしてもらいたいストーリーでした。





qruppoさんは、衰退するエロゲ業界の中においてどんどんとファン層を拡大して売り上げも伸ばしている稀有なメーカーです。
「単に面白い作品を作る」というだけでなく作品以外でも積極的にファンを獲得するための取り組みを積極的に行ってきました。
前作のファンミーティングではリアルの場で数千人のファンを集めるイベントを開催しましたが一瞬で申し込み券が売り切れたくらいです。

マーケティングやら作品の作り方がめちゃくちゃ面白くてそういう意味でもいろいろと語っていきたい会社さんが自分たちの作品論とか顧客獲得についての考え方も作品に込めて語っており、そういうメタ的な意味でも楽しい作品です。めちゃくちゃ面白いのでぜひみんなにもプレイしてもらいたいですね。




個別ルートの時点では「ぬきたし」には及ばないが……

ここまでの評価だと、個別ルートではぬきたしに軍配が上がりますね。

とにかく畔 美岬というキャラが強すぎる。

この表紙の子です。


本作はプリズンという限られたスペースでの戦いとなり畔 美岬のようなギャグ空間の持ち主もいないので、「純粋な楽しさ」という意味ではさすがにかないません。どっちが笑える作品かといえばまちがいなく「ぬきたし」です。拡張性・発展性においても「ぬきたし」の方が強いと思います。



その代わりに、「テーマ性」や「駆け引き」など読み応えでは本作の方が上という感じです。特に、グランドルートまでプレイした上で最後の展開を見るとぬきたし以上に本作品の方がはるかに希望を感じる内容になってると思います。

「ぬきたし」は表現の自由どころかエロの自由を主張する作品でしたが、エロの強制やおしつけはそれはそれで加害なので、気を付けようっていう自重方向の終わり方でした。これに対して「ヘンプリ」は「表現規制」の極まった社会のミニチュアモデルである刑務所内においていかにして表現の自由を勝ち取っていくかという話になっています。




どっちか片方だけお勧めできるとしたら、私は「ヘンプリ」の方を推したいです。



というわけで、ぜひみんなもプレイしてみよう


ヘンタイ・プリズン
ヘンタイ・プリズン

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