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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「アメリカンビューティー」 一回目見てたらつまんないなーと思ってたけど最後まで見てから2回目見たらすげえ面白い

アメリカン・ビューティー (字幕版)

アメリカン・ビューティー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


一回目は本当につまらないなーと思って見てた。なんじゃこりゃって感じだった。
途中から2倍速にしてた。


ところが、終盤にきて、レスターが明らかに*1おかしくなり、クライマックスで今までの作品の流れをすべてひっくり返す選択をしたことで「なんじゃこりゃあああ!」ってなり、そこからようやくまじめに見始めて、ラストシーンで唖然とした。


そこから改めて見返してみるとすごく面白かった。


日々是新聞さんの記事が素晴らしすぎるのでとにかく読んで!

自分で感想書こうと思ったんだけど、その前にこの記事を読んでしまったので、もう私からはとにかく↓の記事よんでください!としか言えなくなってしまった。

作品も素晴らしいと感じたけど、↓の記事が素晴らしすぎてもう何も言うことない。(ただし、もはやネタバレとかそういうレベルじゃなく作品について全てを語ろうとしてる記事なので、まだ映画観てない人は注意)


arcadia11.hatenablog.com

愚者は口をそろえて、本作をこう批評する。「『アメリカン・ビューティー』というのは皮肉だ。アメリカの醜い要素を、「ビューティー」を皮肉った作品だ。やはり、アメリカは大変な国だなぁ。」と。

だが、レスターは最後にこう言い放つ。

「美の溢れる世界では、怒りは長続きしないものだ。」

彼にとってのアメリカとは、皮肉でもなんでもなく、正真正銘の美が溢れる素晴らしい国家だったのである。むしろ、皮肉られているのは、「アメリカは豊かなんだから、せめて精神は貧しくあってほしい」という、ほとんど僻みに近い偏見を抱いている、哀れな知識人気取りだろう。

レスターも最初は同じだった。会社や家族に要求され続けており、人生に疲れている。だが、ほんのふとしたキッカケで、自分とは違う世代、違う価値観、違う魅力を持った二人と出会い、そこから彼の人生は変わっていく。

ただ社会の要求通りに行動し、代わりに社会に悪態をつく権利を得るという人生ではなく、自分の意志を見定めて行動し、「複雑な社会が秘めた、複雑な美」を見つけるために。


私はここまで上手に表現できないが、確かにそういう作品だったなと思う。


ちなみに、このテーマに沿って「レスターが破滅しない代わりにヒロインが消失する」という物語を描いた作品として星里もちるの「夢かもしんない」という作品がある。オタクとしてはこちらの方が感情移入できるかもしれない。 *2

www.tyoshiki.com

夢かもしんない(5) (ビッグコミックス)

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  • 作者:星里もちる
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: Kindle版

ゴースト/ニューヨークの幻 (字幕版)

ゴースト/ニューヨークの幻 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video



弱い「美」は己の心を解放してくれるものかもしれないが強すぎる「美」は一発で人の心を壊す

ただ、上の記事は本当に素晴らしいと思うが、同意というわけでもない。

私はレスターが作中で繰り返し語っていた「美」というものを必ずしも肯定的にとらえてないというか、ぶっちゃけ「怖い」と思ってる。

↑の記事を読んで、CARNIVALの学くんを思い出した。


CARNIVAL (二次元ドリームノベルズ)

CARNIVAL (二次元ドリームノベルズ)

窓から見える空に、燕が舞っている。部屋が沈黙で満ちる。

僕の心はシンと冷え切っていた。そういえば、いつの間にか幻聴も幻覚もすっかり収まっている。


突然、僕は感動してしまった。


忌まわしい僕の歪んだ想念の皮膜をはぎ取った、ありのままの世界は、こんなに静かで美しいものだったのか。ため息が、胸の中にあった何か固くて苦しいものを一瞬で砕いてしまった



いや、本来そういうものだとは想像していた。

生きていることが素晴らしい、そういって涙を流す人の顔にうその臭いは感じなかった。ただ、それは僕よりもっと立派で賢くて善良な選ばれた人間だけが味わうことを許された特権で、僕みたいなどうしようもない人間には縁がないものだと思っていた。

僕には何一つ純粋で美しい感情はなくて、何を見ても心は泥のように無反応で、
ずっと鬱屈した暗くて醜い物だけを心の中に育てて生きてゆくのだと思っていた。

なんだか、涙がボロボロとこぼれてきた。


「生まれてきて本当によかった」今なら自然に言えるかもしれないと思って、試しにそう言ってみた。



言葉だけ浮いてしまうんじゃないかと心配していたけれど、驚いたことに、つられて父さんも泣き出してしまった。

僕はどうやらそれらしく言えたらしい。それとも、お互いにギリギリまで弱っているだけか。


(中略)

今あった、すべてを肯定してくれるようなこの不思議な感覚を、僕はもうすぐ忘れてしまうだろう。光が完全に消え去ってしまう前に、少しでも理沙のために残しておきたいなと思った。僕は、父さんを置いてすぐに病室に戻り、ノートとペンを取り出した。

この後の結末はまぁだいたい予想がつくでしょう。

自分の中で究極的な美というのはこういう感覚なのだと思ってる。

美は自分のみならず周りの者すべてを肯定し、感謝の念だけを与えてくれるものかもしれないけれど、それは自己の解放であるとともに破滅への道であるような気もする。



この作品において、レスターは日常の中で「美」を見出し、それを求める過程において、周囲の環境を破壊してしまう。レスターがみつけた美は本当に小さなものだったが、それだけでも麻薬以上に人の人生を変えてしまう。美が隠されているのは、それなりに理由がある、ということだろう。

我々が知っておくべきなのは、「その気になれば美はどこにでもある」ということではあるが、同時に「むやみやたらにそれを求めてはいけない」ということでもあるかもしれない。

常に美に満ちた生活を求めるのではなく、自分の人生が死(タナトス)に向かっていると感じたときに、そこに何かしらの生(エロス)を見出すだけで人生は変わるというその可能性を知っておくこと、かなと思う。



自分でも何言ってんのかわからないので今日から筋トレ再開します!

*1:良い意味で

*2:この作品自体は「ゴースト~ニューヨークの幻」という映画の設定ににインスパイヤされたものだそうですけどね