20年来の銀英伝ファンからみた今回の揉め事ハナから銀英伝なんかどうでも良くて、「社会学者」の「迂闊なジェンダー論」を燃やせるチャンスで、ご丁寧にも「炎上するかな?」式のエクスキューズまで付いてたから燃やしてOKと思い込んだだけだと思う。
2020/09/13 09:51
だと思う。まあこういう反応が出てきても仕方ないくらいにキズナアイ騒動のときなどに社会学者が「自分の人気取りのために」雑なことをやらかしてむちゃくちゃヘイトをためまくった挙げ句、それについて社会学内部での批判が弱かった(江口先生など批判してる人もいたので「批判がなかった」は誤り)ため、ぶっちゃけ過剰に嫌われてることについてはあまり同情する気もないけど。
私はネットの行き過ぎたポリコレが大嫌いだし、ネットの素人フェミニズムにも否定的だけれど、この件に関しては社会学者の方を批判する方向には乗れません。こういうことを言うとこずるい立ち回りって言われそうだけど事実なので。 *1
まず私が気に入らなかったのは言論の誘導の仕方やまとめの作り方。
私もフェミニズム関連についてtogetterでまとめ作っていた時期がありますが、私は何かを批判したい時は、少なくとも批判する対象の言い分は少なくともその話題についての発言ややり取りに関してはできる限りまとめるようにしていました。(例)
ただでさえ批判したいというバイアスがかかっているのであれば、その際に「恣意的な切り取りをしない」「相手の言い分はできる限り読む」をやるべきだと思います。これをやらない人の批判は無視されて当然だとすら思っています。これも言い出すときりがないです(社会学者の過去の記事や著書まで全部よめって話にもなりかねない)が、あくまでマイルールとしてはそこが最低基準だと思っています。
この点において、今回の銀英伝については、まず話題の起点となるまとめの質が悪すぎるという問題がありました。
ちゃんと批判されていた津田正太郎さんの言い分をきちんと取り上げたまとめがこれくらいしかありませんでした。(読みにくいけどこれが一番まとも)
togetter.com
残り2つホッテントリしてたまとめは恣意性が強すぎてダメだと思います。特に海燕さんのまとめはもはやまとめと呼ぶに値しないうんこレベルだと思います。ブロマガでやれって思いました。
どうでもよい話題の時はともかく、誰かが批判されてる時にあまりに偏りすぎたまとめだった場合はあんまり肩入れしないようにしたいところ(できているとは言ってない)。
銀英伝の数字設定がガバガバなのはご存じのとおりですが、その数字をまともに受け止めるとそりゃ男尊女卑になるわ……っていう話
話は変わりますが、今回「数百年先の話なんだから今よりジェンダー感が進歩しているはず」ってのが大前提みたいに 話ししてる人多かったんですが、なんでそれが当たり前だと思うのか不思議。
歴史においてジェンダー観が常に進歩してきたなんて話はないよね。普通に平和が守られず、国力が低下したり戦争に巻き込まれたりしたらむしろジェンダーは後退することだって当たり前にあると思うんですが。
そして、銀英伝のジェンダー観が今より進んでるべきだとか最低でも現代に合わせるべきだというのはとんでもない誤解だと思います。
銀河英雄伝説の数字設定はあまりにもガバガバだと思うのですが、その数字を忠実に受けとるならば、銀英伝の世界におけるジェンダー観はむしろ現代よりずっと遅れていてもおかしくない、という指摘があり、私はこれかなり一理あると思います。
同盟の元の人口(長征一万光年開始時)がわずか40万人だったことを考えれば女性は子を産む道具だったのは否定できませんね(小説中に同盟側での人工子宮等の技術に関する記述もなかったはず)。
— 銀狼(CV:若本規夫)@部屋冷房投入 (@ginroh567) September 12, 2020
銀河の歴史がまた1ページ…って言ってる間に惑星規模の人口が戦死してるような世界観ですし
— 山蛙 (@aXDxwap8jzh7P8z) September 12, 2020
我々の既存の価値観は通用しないのは当然ですよね。
いや、ほとんどは新規亡命者だからねw
— 森林 公輝 (@5taZXICKlAtuNkb) September 12, 2020
おそらく最後のツイートにあるように人口に関しては新規亡命者ってことにしたいんでしょうが、その割には帝国と同盟の間の行き来はかなり厳しく、どうなってんの?って言いたくなるよね。
そうでなくとも銀英伝の世界は大量に人が死にすぎており、それに対して同盟民が鈍感すぎてすごく気持ち悪いし、その割にジェンダー周りの描写が当時の日本の描写に合わせていて明らかに異常なんですよね。
最低でも「人工授精」「人工子宮」「育成もある程度機械任せ」くらいでないととてもじゃないけど成り立たない感じなのですが、そのあたりはほんとガバガバに感じます。
基本的に、ジェンダー問題のアップデートを可能とする要素として、社会的運動も否定はしませんが、ベースとなるのはテクノロジの発達だと思うのです。
この世界ではあれだけバカでかい宇宙船を作れる技術があるのに日常生活においてテクノロジがろくに発達しなかったといういびつな描写になってるわけですよね。まぁ普通に考えておかしいじゃん?
これに限らず、銀英伝は細部を見ると情報通信技術の貧弱さとか、人口規模を考えた時の人事組織のしょぼさとかいろんな点が「現代の観点で見たら」ガバガバ設定だらけで違和感をあげだすときりがありません。そのうえで、宇宙を舞台に壮大な規模での戦闘を描き、さらに描こうとしているもの(勤勉な帝政と怠惰な民主制という政治体制の対比)はすごいという作品だったよね。なので、細部について「ちょっとなーこれはなー」って言いながら見るのは「全く意味がないけれど」、むしろ正常な感覚だと思います。
むしろ今回の件で津田正太郎さんが突っ込まれるべきところがあるとしたら「他にも無数のツッコミどころがあるのになんであえてそこだけ強調するの?ほんとに作品ちゃんと読んでる?」ってところかなと。
個人的には炎上したツイート以外の津田先生の発言のほうが気になりました。「銀英伝」へのリスペクトを感じられない発言が何個かめにつきます。私のようなニワカレベルの人間ですら引っかかるような理解の人が、「ここは変えざるを得ないのでは?」みたいな発言をしてるのはポリコレ云々を抜きにして「なんだこいつ」とは思いましたね(めんどくさいオタク)。
ポリコレの看板がなかったらそもそもこういううかつないっちょかみ発言はしなかったのではないかと思うと、こういうところにかすかにポリコレの悪影響を感じます。
私は原作はもちろんのこと、アニメ3期にしても描写を現代のジェンダー観に合わせるというのも口でいうよりかなり難しいかなと思ったり思わなかったり。
そういう細部を調整しようとするとツッコミポイントが連鎖して作品が崩壊すると思うので、田中先生自身が1から原作を作り直すというのでなければ辻褄合わせは相当難しいだろうなと思いました(小並感)。
むしろ、道原かつみさんが漫画版においてルビンスキーの性別そのものを変更し、特に大きな問題が生じなかったところが凄いと思う。私は一番最初に読んだ銀英伝は道原かつみ版で、そこからOVA→原作→フジリュー版という風に進んでいるのでどうしてもあのハゲは女性というイメージが強い……。
今回の銀英伝批判の話とは関係ないですが、過去の創作物は過去の創作物として楽しむのがいいと思う。リメイクするときはガワだけ同じ完全別作品として見た方が良さそう
こんな風になるのでやめといた方がいいんじゃないかなと思いました。 pic.twitter.com/Wpf03FGdjq
— 黒井丸@九州歴史研究会 (@gokutubusi354) September 12, 2020
銀英伝は、メインキャラ以外の将校がやたらと無能だったりするなど多くのガバガバ設定も含め、もう古典となっているので、これはこのままにしておいたほうがいいんじゃないかしらん。
宇宙を舞台にはしてるけど過去の歴史のオマージュですし、人事制度とかいろいろおかしいんだよね。フォーク准将の暴走を止められない社会制度で100億人規模の社会が支えられるわけなかろう……
ほんとに突っ込みだしたらキリがないけれど、エンターテインメントとしては超傑作だと思いますんで今からでも読もう。
私はフジリュー版も好きだよ。