27話の展開素晴らしかった……。
「推しの子」は芸能界を舞台にした物語ですが、現在「テラスハウス」を元ネタにした恋愛リアリティ・ショーもののエピソードが進行中です。
そこで、とあるまじめな女子高生が「木村花」さんのようにネットで苛烈なバッシングを受けて自殺寸前まで追い込まれる描写が生々しく描かれました。
これに対して26話ではぎりぎりのところで主人公がその女子高生を救い、
27話でこうした状況をうやむやにせずひっくり返すため、逆にネットを戦略的に活用するという展開になっています。
以上で作品説明終わり!
あとはサイレントマジョリティーの話をします。
「推しの子」におけるサイレントマジョリティーとは何か
具体的な戦略はぜひぜひ実際に確認してほしいのですが「炎上している」=「能動視聴者が多く強いインプレッションが期待できる状況」であるととらえなおして逆転の施策を練るという感じです。
ここで、「サイレントマジョリティ」について話が出てきます。
この1ページの説明がめちゃくちゃ本質的だと思う。
今のこの状況って、広告代理店風に言うと能動的な視聴者数が多く強いインプレッションが期待できる状況ってやつなの。
一見、あかねへのバッシングが目立っているけれどそれって表面的なものでさ。
実態としては数パーセント程度のものでしかない。
自殺未遂というセンシティブな話題……
ほとんどの客層は叩くべきか擁護すべきか悩んでいる「サイレントマジョリティー」、つまり「答えを求めているユーザー」が多い。
そこに「コンテンツ=共感性の高い意見」を提供すれば多くの人がそれが正義と思い込む「マーケット」になっている。
これだけ注目されているなかだもん。世の中の意見、まるっと上書きできちゃうかもね
「推しの子」において、サイレントマジョリティとは「ただの浮動層」であって「良い」も「悪い」もない。ただし善意を信じるはあまりに容易に意見を変える主体性のない危険な存在
どういうことかというと。
①めちゃくちゃ気になってみてるけど
②センシティブな話題だから慎重になっている人
のことです。
もっといえば簡単に言えば「ただの浮動層にすぎない」ってことです。
これを明確に示してくれている。
この漫画の原作者である「赤坂アカ」さんは日本でもトップ20に入るくらい人気のマンガを連載されている、つまり本当の意味で支持されている作家さんだと思いますが、
そういう作家さんは「批判している人が0.5%に過ぎないとか1%に過ぎないという話は、残りの大多数が賛成派であるということを意味しない」という当たり前だけど厳しい現実ときちんと向き合っている。
この認識がとても良いなと思ったんですよ。
わたしが嫌いなつだしんご氏のイラストをきちんとアップデートしてくれている
前にも書きましたけど、私はつだしんご氏が作ったこのツイート(に表現されている考え方およびそれに共感してしまう人々)がめちゃくちゃ嫌いです。最上級のクソイラストだと思ってます。
SNSを使う全人類が知っておくべき事実 pic.twitter.com/bPgQVC9hoG
— つだしんご (@shin_5_9) October 4, 2020
www.tyoshiki.com
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*1
世の中はアンチばかりというほどクソではないけれど、こんなきれいな世界でもないことなんかちょっとでも考えたらわかるやろ。
こんなしょうもないツイートを作る方も作る方だし、応援しちゃう人はその理想の氷山のイメージを抱いて溺死しろって言いたい。
ただ、このクソイラストのイメージにすごくモヤモヤしつつも、それをどう表現していいのかわからなかった。
だからこそ「推しの子」27話におけるサイレントマジョリティの説明はかなり素晴らしいなと思ったわけです。完璧とまでは言わないけど、上のクソイラストのイメージを完全に粉砕しつつ、現実により近いイメージを提示してくれているなと。
この話に限らず、「推しの子」は中の人は、転生した元産婦人科医(しかも国立大医学部卒)であるため、若者の間で起きる問題に対してきちんと大人目線が入っていてすごくしっくりくるので読んでて安心します。この「しっくりくる感覚」が好きな人には間違いなくおススメです。
「推しの子」におけるサイレントマジョリティとの向き合い方
これについては「最初の炎上が起きた段階で、批判してくる1%と向き合うことは確かに無駄だが、だからといって「その他大多数の浮動層」を放置したり間違ったことをやるのも間違いである」という感じでしょうか。
つまり何が言いたいかというと、「最初に批判してくる人」は確かに少数派だし相手にすべきではないけれど
「無言の人たち」に対して希望的観測を持って無為無策でいるのも危険だよってことです。
サイレントであることは別に「否定派でない」ことは意味しない。良識的であるわけでもない。
むしろこの人たちは「何が正しいか」ではなく「共感性が高い意見」に流される人たちです。ある意味この人たちの方がよほどヤバイと思います。
はてなブックマークで自分が記事がバズったことがある人はなんとなくわかると思いますが
はてブって人数少ないのにそれでも200ブクマを超えた後でやってくる人たちがほんとヤバイ。
後になればなるほど無責任かつ流されやすさの度合いがどんどん上がっていきます。
たった200~500人規模ですらこれだけ可視化されるわけで、これが1万、10万、100万となっていった時に失敗すると地獄です。
なので、サイレント・マジョリティが求めている形でちゃんと意見をコントロールしなければいけない。
彼ら彼女らが「何が正しいか」ではなく「何が共感できるか」なのだとしたらそれを与えなければいけない。
繰り返しますが、たった200人から500人レベルのはてブの世界ですら「ホッテントリだから」という理由で記事を見に来るはてブ民、マジで文章読まずに他人の意見うのみにしてしゃべる人多いしスター工作された人気コメントを見て流される残念な人までいるのだから、それより数が多くなった時に大衆の善意なんか信じる方がバカげてます。
脊髄反射や習性で悪意を拡散しようとする人がいたらその芽はちゃんとつぶす。「別のコンテンツで上書きする」のが凄く大事。そのくらい、サイレント・マジョリティってのは普通に「厄介な存在」だってことはちゃんと理解しといた方がいいなと。
能天気に上の上のイラストのような非現実的なイメージをばらまく人とかそれを拡散する人たちは、消費者に夢を見すぎです。
蛇足 ついでだからナイキの話の続き
ちょうど今話題の「ナイキ」のCMの話なんかまさに「推しの子」の話とつなが感じがしますね。
もう最初の経緯からいきなり最悪でした
①最初はCMを見て「ナイキは日本を攻撃してる」と吹き上がる人たちが暴れ始めた。
②これに対して、逆の勢力が「ナイキのCMに賛同しないやつは差別主義者だ」とマウンテイングにかかった。
差別やジェンダー、歴史問題のようにセンシティブな話題になると、比較的まともな人がちょっと黙って様子を見ている間に両極に狂人が騒ぐというのはよくある光景です。
これはナイキのCMに限りません。日本の場合、センシティブな話題が提供されると必ずといってよいほど「両陣営に」狂人が沸いて分断されるのです。
ナイキのCMが分断を引き起こすのではなく、もともと両陣営に狂人が沸きやすい現状の残念過ぎるネットの構造をナイキのCMが可視化しただけです。
ともあれ、この時点で両極端な意見が出たことで分断が起きました。
はっきり申し上げますが①か②の段階でどっちかの陣営に与した人は世間一般レベルではどっちサイドであっても狂人だし、あなたたちこそが分断を引き起こしてる張本人です。
自覚ない人多そうなのが本当に残念過ぎる。
はてブでナイキのCMに賛成しない人たちに無邪気にマウント仕掛けてる人たちや、その逆に日本への差別がーみたいな話読んでると頭痛くなるからほんとやめて……。

んで、現状は両陣営がちょっと落ち着いたところで「コンテンツ」を投げ合ってる段階ですね。
マンガと違って決着はつかないでしょうが、そういう「構造」はちゃんと頭に入れておきたいです。つまり「なにか一つ正解があって、その正解にたどり着かなきゃ負けだ」って考えじゃなく、「今自分は分断された対立構造の中にあって、別にどっちかが正しいというわけじゃなくどっちも極端なんだ。どっちかが正解でどっちかが間違いという思考は危険だ」って認識があればそこまでのめりこまなくて済むと思います。この話は「極端に前のめりになって自分以外の意見を受け入れられなくなっている」という人が一番負けていると思ってるくらいの方がいいです。。
センシティブな問題に限って、複雑なことを考えることに耐えきれない人ほどどちらか極端な方向に走ります。そういう人は、こういうセンシティブな話題に耐えられるだけの基礎的な体力が足りないのでそのことを自覚して、もうちょっと難易度が低いところから考えるようにした方がいいと思います。そうでないと、「ダニング・クルーガー効果」を実証例になるだけだと思うので。

- 作者:スティーブン スローマン,フィリップ ファーンバック
- 発売日: 2018/04/15
- メディア: Kindle版

- 作者:フェファー,ジェフリー,サットン,ロバート・I.
- 発売日: 2009/01/01
- メディア: 単行本
*1:※…どれだけ上のツイート嫌いやねんって思うかもしれないけど別に書いてる回数と嫌いの度合いは一致しないです。このイラストに関してはかなりガチで嫌いですけどね。私が何回も同じことを書いてる場合、嫌いだから何回も書いてるというよりも、なかなかしっくりくる落としどころが見つからなくて試行錯誤してるという感じです。すごく嫌いなものでもきちんと反駁できればその1回ですっきり話は終わるし、小さなことでものどに小骨が引っ掛かった感覚がある場合は何度も考えたりします。