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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「神様になった日」はなぜここまでぎこちない作品になってしまったのか、についての私的な意見

11話にて、ようやく麻枝准さんがこの「神様になった日」でやりたかったことがはっきり示されたんじゃないかなと思います。

その時の彼女とは、目を合わせて話ができていたということですか?

それは本当にあの子だったのでしょうか?「あなたはその革新的な機械に向けて話しかけて、その機械が反応して言葉を返していただけ」そうとも取れませんか?

そんなこと、機械にだってできますよ?

あなたは、その機械とあったことがあるだけで、本当のひなちゃんとは一度もあったことがないんじゃないですか?

僕たちと過ごしたひなは、本当のひなだったよね?

ひなは、僕たちの家族だよね?

現実はただ一つ。あの夏いっしょにすごしたひなが今ここにいるということ。それだけは失わないようにしないと。

なんというか、すっごいべたなところに来たなと思うけれど、麻枝准さんらしいかなという気持ちもあります。




描かれているものではなく「描かれないもの」「取り去られたもの」に注目させる手法

この作品は、視聴者が求めているものと制作側が描きたいものの間にかなり大きなズレがある気がする。


制作側がやりたいのはとてもシンプルな話だ。原点回帰に近いと言っても良い。


麻枝准は毎回何かについて「あなたが見ている〇〇は本当に〇〇ですか?」ということをやる。
そのために、最初は真実をメタファー尽くしで覆ってしまう。
そこから描かれているものの裏側を想像することを視聴者に要求する。*1

www.tyoshiki.com


これに対して、今回やりたかったのは本当にシンプルだ。

「あなたが見てきたひなは本当にひなですか?」というこれだけ。

ひねりもくそもなく直球ドストレート。


「ひな」自身を理想的なヒロインとて描き、彼女との楽しい夏を過ごした後でその「ひな」から記憶や感情を取り上げてしまう。

そこにできた「空白」の部分に、視聴者たちも「ひな」というヒロインの本質はどこにあったのだろうか、と考えさせるきっかけを与えるという仕掛けである。

魅力的なヒロインを直接描くのではなくて「空白」「欠落」によってそれを表現する。

実に麻枝准さんあるあるである。

沢渡真琴や神尾観鈴の時から似たようなことをやっている。



今回は特に「幻想世界」が存在せず(鈴木君のネット描写は特に重要ではないと思う)思わせぶりな神様の名前などのメタファーもそれほど意味を持たされている様子がない。

KanonやAirの時はヒロインだけでなく世界自体に謎があったがこの作品はそれもない。

なので、理解するだけなら過去作品の中で一番簡単だろうと思う。情報量も多くないしこじんまりとした話なので中学生でもわかるはずだ。




「ナルカミ君の成長物語」という要素が物語への感情移入を大きく阻害している

ただ、視聴者をこの要素に視聴者を集中させたいのであれば、主人公はナルカミくんみたいなキャラじゃない方がよかったんじゃないかなーってのは思う。



ナルカミくんやその周りの友人たちは、年相応か同じ年でも少し幼い感じで描かれている。AngelBeatsのように子どもたちしかいない世界観ならこれでもいいのだが、このノリに大人を混ぜてしまったことで、本作品はなんかとってもぎこちない感じに見える。




そもそも前半と後半の温度感が違いすぎる。


前半の「楽しい夏の時間」を盛り上げるためにはひなとの精神年齢を近づけ彼女に振り回されたりするためにナルカミくんの精神は近い方がよかったのはわかる。

しかし、その後のシリアス展開においては、ナルカミくんの幼稚さはひたすらにボトルネック(イライラ要素)になってしまっている。


このあたりのトレードオフをうまく解決できなかったためにエンタメ作品としてみた時に非常にぎこちなく感じてしまうのである。



結果として視聴者は前半部分がなまじ楽しかったゆえに、そちらを求めるようになっております、製作者が本当に描きたかった後半の展開にいまいち乗り切れてないきがする。

アンチはともかくとして、このアニメを気に入ってる人たちのTweetを見ても、製作者の思惑と違う形でベタ感情移入が多く、ひなというヒロインの在り処などそこまで興味がないように見える。


冒頭で述べたように、製作者が描きたかったものが受け止められてる感じがあんまりしない。

本来は「CLANNAD(AS)」や「凪のあすから」のように二部構成にした方がよかったんだろうなとは思う

この問題の解決は非常に簡単かつ前例がすでにあって
「CLANNAD」や「凪のあすから」はそれに成功している。「あの日見た花の名前~」も同様だ。
これらは、生じる問題に対して「数年経過する」描写があることで無理なく自然な形で問題に向き合うことができている。
「神様になった日」はこういう構成にできればもっと自然な感じで物語を楽しめただろうと思う。



一方で、「神様になった日」は「イリヤの空」パターンである。
楽しい日常を描いた後、特に成長する機会がなくいきなりシリアス展開に放り込まれしまう。
このパターンの場合は、主人公が最初からそれなりにそれに備えられるキャラクターである必要がある。

同じ麻枝准作品でも、Airの時はできていたし、「リトルバスターズ!」の時は明確なイニシエーション儀式があったから自然に描けていた。
AngelBeats!では描けていなかったが、シャーロットはこの点においてだけはAngelBeats!よりよかったと思う。


にもかかわらず「神様になった日」はこのあたりの意識が感じられない。
前半でひたすらバカ展開をやるためにナルカミくんを幼稚な感じで描写してしまった後、なんとなく周りがナルカミ君を甘やかしてしまった。
鈴木少年もなんだかんだ言ってナルカミくんに現実を突きつけることなく優しくサポートしてしまった。

必要な描写をあと送りにした結果が11話でのナルカミ君の描写である。
つじつま合わせで急遽ナルカミくんを成長させる描写が必要になってしまった。
にもかかわらず、11話でもやっぱり根本的に大きく変わったような気がしない。

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もしかして、あと5話くらいあるつもりなんじゃないかね?

こうなると、どうしても視聴者側としては違和感が凄く強くなっており、
さらにいうと「もしかしてなんとなくうまくいって終わり?」という嫌な予感がしてしまうのである。


物語なのだから、どれだけ嘘をついても「ありえないこと」があってもいい。でも納得だけはさせてほしい

私は麻枝准さんの作品が好きな人間だったのだけれど、アニメの脚本になってからの作品はどうしてもちょっとモヤモヤすることが多い。

自分が理解できてないだけかもしれないが、やはり「納得」できないと感じてしまうのだ。

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物語なのだから、どれだけ嘘をついても「ありえないこと」があってもいい。でも納得だけはさせてほしい。

ラスト1話らしいですが、最後まで見届けようと思います。


おまけ 「神様になった日」とほぼ同じ内容(こちらは「世界とよばれた少女」)で、きちんと納得させてくれてくれた作品

白昼夢の青写真

こちらの作品でも「能力」を奪うためにヒロインが開頭手術を受け、白痴化してしまうという展開があります。

しかし、こちらは一つ一つの展開に納得できるようきちんとストーリーがあります。

「神様になった日」みたいに単に危険だから取り上げられてしまうという淡白で一方的な展開ではなくちゃんと「彼女を犠牲にすることで救えるものがある」という意味付けがされており、選択に重みがあります。また、単にゲームやってたら回復した、みたいな展開ではなく、むしろ彼女をいかにして回復させるか、こそがこの物語の最重要要素となっています。

科学的にはツッコミどころが多いらしいのですが少なくともプレイしている間は違和感は感じなかったし、プレイし終わった後にきちんと納得させてくれた作品でした。

今年プレイしたエロゲではトップ3に入る名作だったので、「神様になった日」に不満を感じた人はこちらをプレイしてみるとかなり救済されると思います。

*1:なので「娘の友達」でコトちゃんが素直で優しい子だと理解してしまったり、未だにAB!のドナーカードの描写が現実描写だと勘違いしてしまうようなメタ視点が皆無のの青〇才さんのような人にはちょっと厳しい作品だと思う