kindle版は100円で買えますが、そもそも本編は上のブログで全部無料で読めます。
まずはブログの方で読んでくださいませ。
個人的には、この作者さんの前の「伝説のお母さん」はメタ視点が強すぎると感じられて好きになれなかったのだけれど、この作品はメタ的な視点がちゃんと作品の中にうまく取り込まれていて作品とこちらの距離感が絶妙であり、読んでいてとても心地よかった。
自分が今大切だと思った人のために自分がこれまでずっと大切にしていたものを否定して見せる話
最近読んだ「金剛さんは面倒臭い」をほうふつとさせる良さみがある。
異世界は、ないんです。
俺は本当にあの世界が好きだから。
俺にとって異世界は
救いで、憧れで、素晴らしくて、だから……
異世界が夢みたいな作り話だって知ってるんです。
- 作者:戸田誠二
- 発売日: 2017/03/01
- メディア: Kindle版
最後のオチも素晴らしいなと思う。
上のセリフ=異世界の否定がクライマックスなのだけれど、そこで終わりにしないで丁寧にその後のフォローまで描いてくれているところが好き。
何度も書いている通り、私は「ピギー・スニードを救う話」や「少女不十分」という作品が好きで。
物語は嘘かもしれないけれど、人をいやしたり救ったりする力があると信じているし、実際に自分はそれで救われたと思っている。なのでもともと堂原のような人間に強く感情移入するし、その上でこの作品のオチはとても心にしみてきた。
この作品の「続き」を描いているのが「異世界誕生2006」ですね。
- 作者:伊藤ヒロ
- 発売日: 2019/08/28
- メディア: Kindle版
「物語が人を救う」ということの二つの意味。
葉山美央は「物語」に救いを求め、それに依存した。
確かに短期的にはその物語は彼女を救った。
彼女の物語は、短期的には彼女を絶望から救う鎮痛剤とかトランキライザーではあった。
しかしこれは遅効性の毒で痛みを紛らわせているようなものであり、長期的には彼女を死にいざなうタイプだった。
だから堂原はこれを彼女の前で否定しなければいけなかった。
一方で、堂原智太にとっては「物語」は心の支えであり、人生の友であった。
心の中にきれいなものや暖かいもの、希望を宿してくれるものだった。
彼はそういう物語との付き合い方を知っていたから、彼女にもそれを教えようと思った。
ああああああ、なんというかコレ。SSSS.GRIDMANを思い出すよねえええええええ。
SSSS.GRIDMAN 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者:『SSSS.GRIDMAN』,今野ユウキ
- 発売日: 2021/02/04
- メディア: Kindle版
そんなわけで、簡潔だけれど、すごくいい話だったと思います。私はすごい好きです。
単行本では物語の前日譚「私の息子が異世界転生するまで」という短編と、後日譚「それから季節は巡って」が収録されている
というわけでとてもよかったので、単行本もお布施くらいのつもりで買ってみたのだけれど。
思った以上におまけがよかった。
本編は堂原の視点中心で進むのだけれど前日譚では葉山美央側が何を考えていたのかがよくわかる・
その後でもう一度最初から読み返すと、より納得感がます良いおまけになっていると思う。
本編を全部読んで気に入ったらおまけ部分もぜひ読んでみてほしい。
- 作者:かねもと
- 発売日: 2021/02/01
- メディア: Kindle版
作者様のあとがきがまたいいんだこれが。私は物語の話をしたけれど、真のテーマは「●」だったそうです。
なるほどな―。