前の記事で箇条書きマジックの話をしたので箇条書きマジックやります。
少しのことにも、先達はあらまほしき事なり(徒然草52段)
私は性癖の一つとして「親殺し」の派生形である「師匠越え」類型の話が好きです
嫌いな人おらんよなぁ!?
普段なじみのないテーマ、難しいテーマを描くときに
主人公はプレイヤーに近い形で無知寄りにして、作中にメンターや師匠を描くのはとても大事であって
つまりこういう師匠がいる作品というのは、何かしら作者が難しいテーマに挑戦してる可能性があるからです。
なので、「師匠」的ポジションが格好いい作品は読みごたえがある何かを期待できるし
そして、主人公がそんな師匠を越えていく作品は、読者が作品を通して他では得られない体験をできる作品になるかもしれない。
「名師匠」がいる作品は、それだけでテンションが上がるというものです。
その中でも「マブラヴオルタネイティブ」における師弟関係が好きです
BATAという異星からやってきた侵略生物の存在によって世界滅亡の危機にさらされた世界。
その世界において、人類を救うため権謀術数を巡らせているドクター。香月夕呼。
国連太平洋方面第11軍・横浜基地副司令官。対BETAにおける人類勝利の鍵、「オルタネイティヴ4」の最高責任者にして天才物理学者。本計画の要所として建設された横浜基地においては、基地司令と同等もしくはそれ以上の権限を有しているとも言われる。
武を207隊へ編入させ、セキュリティの高いIDを与えたばかりでなく、この世界での武の戸籍情報まで改ざんした。
天才の頭脳は、常に目的達成のための布石を打っている。その緻密さゆえに、それらがどこでどのような形で表面化するのか、凡人にはその時にならなければわからないのだ。しかし「天才」であるからと言って「全知全能」という訳ではない事を忘れてはならない。
本作の主人公はプレイヤーの分身的存在なので、最初はただのヘタレな平凡な日本の高校生である。
・1周目の世界では学園生活での恋愛を通じて守るべきものを得て(マブラブEXTRAシナリオ。プレイ時間50時間)
・2周目の世界では過酷な世界での軍属経験を通じて一兵卒レベルに成長し(マブラブUNLIMITEDシナリオ。プレイ時間40時間)
・3周目の世界では香月夕呼の下での士官経験を通じて徐々に学習していき(マブラブALTERNATIVEシナリオ。プレイ時間30時間)
終盤では香月夕呼に近い視座を獲得するに至り、最終的に彼女の思惑を越える成果を上げることとなった。
天才過ぎるゆえに誰も彼女を理解しないという孤高の存在から、パートナー的存在まで上り詰めることになる。
異常なレベルのプレイ時間がかかるし序盤の主人公があまりにもガキすぎて苦痛なので気軽に他人にはおススメできないのだけれど
「最初ではただ遠い存在でしかなったあの人に近づき、理解する」ということの快楽を思う存分描いてくれる超傑作だと思います。
本作はギャルゲーなのでメインヒロインは主人公と同年代の幼馴染の女の子なのだけれど
私にとっては本作は、香月夕呼との長い長い蜜月を描いた作品という位置づけになっています。
「ガンダム水星の魔女」のプロスペラはかなり期待してたんだけどなあ……
水星の魔女はどちらかというと様々な形での「親子関係を中心とした家族関係の解決」の方がメインとなっており
それ以外の部分はうっすらとフェイドアウトしてしまった気がする。
人種差別問題とか、過去のヴァナディース事件の清算、大勢の人間を巻き込んでいたはずのクワイエット・ゼロ計画の帰結などいろいろあったはずなんだけど。
ガンダム「水星の魔女」は主人公たちが「マブラブEXTRA」レベルの学園生活をやっていた。そうすると、今までがガンダムが描いてきたような戦争や「ALTERNATIVE」レベルにには子供たちだけで頑張ってるだけでは到底到達しえない。
だから、プロスペラを中心とした大人たちが頑張って問題を受け止め、それを頑張って成長した主人公たち子供に受け渡すというプロセスが必要だった。(一応、子供たちの中で唯一大人びた描かれ方をしていたシャディクくんがちょっとその立ち位置にいたけど、描かれ方は微妙だったかな、と。子供の考えた短絡的な革命みたいになってしまった)
もちろん主人公たちは頑張って成長していっていた。「学園内決闘」や「株式会社ガンダム」という取り組みはかなり面白かったと思う。スレッタはともかくとして、ミオリネやグエルは様々な経験をして成長したと感じる。ただ、それだけでは足りていなかったように思う。 特にスレッタは「成長した」というか「なんか弱い子だと思ってたらめちゃくちゃ強い子だった」みたいな感じの描かれ方になってしまった気がする。
子供たちもさることながら、大人たちの描かれ方が物足りなかったかな、と。なによりも、プロスペラ(と周辺の大人たち)そういった問題すべてを背負えるような存在ではなかったなというのが正直な感想だ。
最終的に「スレッタが許せる」程度の、娘エリクトのために必死に頑張ってた視野狭窄なお母さん、みたいな小さな感じに収まってしまったので、物語もいろんなことを放り出してとりあえず親子間の和解が描かれただけで終わってしまったのかなぁと。
もちろん「ガンダム」に対して「マブラヴオルタ」を求めるという発想自体が間違っている
つまり、私の視聴方法がおかしいんだけれど、それを抜きにしてもさ。
なんというか…… もうちょっと大人頑張れよ!ってモヤモヤする気持ちが強いんですよね。
正直26話であれこれを描きたかったのであれば、デリングを途中で退場させてる余裕はなかったんじゃないですかね……。
とかいろいろ思っちゃんだよー(´・ω・`)
ニコニコ動画のコメントとかを見てると自分が素直に最後の大団円を喜べなかったのはめちゃくちゃ損をしていると思う。
どういう風に観ればよかったんだろう……と頭を抱えてる。
「15分の少女たち」の雨宮プロデューサーも、香月博士やプロスペラ的な存在でかなり好き
shogakukan-comic.jp
この作品は「左ききのエレン」の作者が描いた「アイドルプロデュース」作品です。
主人公が「アイドルマスターU149」のようなノリなのに対して、雨宮プロデューサーはガチ路線。
アイドル達は、その両者の間でどっち方向に進みたいのかよくわからないブレブレな描かれ方をしています。
リアルと言えばリアルなんですが、描き方がちぐはぐすぎるため序盤は読んでいてとにかくイライラさせられる作品でした。
しかしこちらも、4巻の後半から雨宮さん視点で過去の話が描かれるようになると急激に面白くなります。
ただ、こっちは師匠が圧倒的に面白くて主人公がイマイチすぎるというバランス感の悪さのせいか主人公への期待が薄くなってしまった。
5巻で雨宮Pの過去話が終わり、いよいよ主人公が雨宮Pを受け継いで本格的に成長してくぞーっていう展開になるのかと思ったら6巻に入ったとたんに急速に話がたたまれて終了となっています。おそらく打ち切りじゃないかと思います。
私は途中からはかなり好きな作品だったし、作者はドラマ化もされたことがある知名度のある作家さんだしSNSでも頻繁に作品を宣伝するなどやれることはすべてやっていたように思うのですがこの作品でも打ち切りになるのか……とマンガ作りの厳しさを感じましたね。
師匠を上手に描くだけではだめで、師匠と弟子である主人公のコンビ感が大事。未熟であっても主人公は主人公で魅力的でなくてはいけない、など読むほうが楽しくても「師匠」が登場するマンガはいろいろと難しいのだなと思う
あらためて思うけれど、人気作品の共通点を上げてこれが売れた理由や!っていうのは簡単だけど
実際はそんな単純な話じゃなくて、作り手としてはめちゃくちゃ難しいよなあって思いますね。
・未熟な主人公を魅力的に描く
・師匠を通じて難しい課題を魅力的に描く
・師匠と主人公のコンビを通じた成長を魅力的に描く
・師匠から主人公へのバトンタッチや師匠越えのシーンを魅力的に描く
全てを考えて作品を作るってどれだけ難しいんだ……ってなります。
難しい作品作りに挑み、我々を楽しませてくれた名作と、その作者様たちに心からの敬意を。