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「モテない女は罪である」感想  コーラの原液みたいな男の甘ったるい願望


「Bバージン」の作者山田玲司による、恋愛指南本「のような形をした何か」。この作者さんのことを知っている人にはいちいち言うまでもないとは思いますが、絶対に、女性は、最終話以外でこの本に書いてることを素直に信じてはいけません(笑)

ここで男が女に指南するモテの秘訣は、恋愛というよりもはや「介護」「治療」の考えに近いです。「伊東ライフ」の同人誌とほとんど書いてることが同じです。「セッ〇スできる母親」を目指せと言うてるのと変わりません。しかも作品中でまさにそれに類する指摘を女性側からしても男性側は否定しません。そういうバランスで語られている話です。

この本で語られていることは、確かに男が女に求めていることに間違いはないでしょう。たぶん男はこの本読んでそうそう、その通りなんだよなぁ、とか言っちゃったりするはずです。ですが、これは「原液」です。女性の気持ちをいったん完全に無視して、男が自分の願望だけを全部ぶちまけたようなものです。こんな甘ったるい願望はそのまま飲み込めるものではありません。この作品で語られるそのまんまにやったら、99%の確率で男は「だめんず」になります。あるいはすでに「だめんず」です(笑)男はたしかにこういう願望はあるかもしれませんが、実際にここまでやられたら普通の男ならドン引きします。

だから、薄めてあげてください。たまーに、気まぐれで、ご褒美としてこの本にかいて書いてることを思い出したかのように。それだけで十分すぎるほどです。まぁとにかく、ドン引きするしながら、遠間から見るくらいの距離感でよいと思います。間違ってもこの本に書いてることを実行しなくては、とか思わないよーに(笑)

「男が女をどう見ているか」という話ではなく「山田玲司が男(自分)をどう見ているか」という本

この作品読んでて、寄生獣のこのセリフ思い出しました。

寄生生物と人間は一つの家族だ。 我々は人間の子供なのだ。 だが・・・我々はか弱い。それのみでは生きてゆけないただの細胞体だ。 だからあまりいじめるな

http://ccoe.cocolog-nifty.com/news/2006/03/post_d7c9.html

この作品でいえば「男はか弱い。それのみでは生きてゆけないただの傷ついた人間だ。 だからあまりいじめるな」

この作品は、モテる男が、女性に対してモテるための考えを伝授する、というような体裁になっていますがそういう風に読むとすごいお寒いです。

私にとってはこの作品は、あくまで「男(というか山田玲司)は、ガキでありこんなにどうしようもない生き物なんだ。そのことだけはわかってほしい」というお願いというか甘えをこれでもか、とさらけ出してる話なんですね。「幼児プレイ」「イメクラでママにあまえるプレイ」とかそういうのに近い。とにかく女性にあれしてくれこれしてくれ、あれもこれもっておねだりしてるだけ。(そうしたほうが女のためだ、なんてのはただのおためごかしです)後半部分は「女はお前のママじぇねえんだよ」とか「そういうのは恋人同士になってからやれ」って思いました。とてもじゃないが、親密でもない男から女に語るような話ではない。

もうほんとに「うわぁ……」ってドン引きするような話です。先に全部、男が女に求めることをいう。とにかく一方的に、男として女性に求めることを全部言ってる。女性から男性に対する要求とかバランスとかは意識的に全部切り捨ててる。でも、こういうどうしようもない視点だからこそ語れることもあって、そういう部分だけを拾って読むのが正しい読み方だと思います。


自分に合った恋愛本を探すのって難しいよね(そもそも恋愛本なんて読む必要があるんですかねぇ……という問いはおいといて)

恋愛に関する本は、ものすごくニーズが細分化されており、そしてその細分化されたニーズに対していろんな本が出ていますが、ニーズや対象ごとに同じ作者でもいうことが180度変わることも普通に起こりうる世界なので、自分のニーズをまず認識する必要があります。*1


というわけで、この「モテない女は罪である」も、どういうものとして読むか、あるいはどういうニーズを念頭に置いて読む次第で私の中でも評価が大きくブレる作品です。

間違って、モテたい人が「モテるためになるために読む本」とか思って読むと即ゴミ箱行きでしょう。他にも「男のものの見方や恋愛観を知りたい」みたいな読み方で読んでもたぶん不満が出るでしょうし、「恋愛テクニック本」を求めるならどこかで読んだことがある話ばかりで物足りないだろうし、「恋愛漫画」「面白い恋愛トーク」を求めてるなら水野さんの本「LOVE理論」を読んだほうが良い。


試しにAmazonチェックしてみたらやっぱり★5と★1という極端な意見が出ていて面白いです。

ネガティブにとらえるとこういう感想になるのも分かりますし

・どの口で語るか!お前は女を語るな!

・作者の男尊女卑以上の考え方に辟易しました。
 女性は人間にもあらずと言いたいように見えました。ただただ不快感。

良い作品としてとらえた人はこういう感想を持ったようです。

この作者、ノッている時は自意識の塊なので真実が見えないのだが、社会に痛めつけられ、己の惨めさに直面させられながら創作している際は、本人は非常に不本意で苦しそうだが、憑き物が落ちたように素直に真理が見えるようで、良い作品を作る。それは本人の主観的意思とは無関係で、ゆえに才能と呼ぶしかないものだ。そしてこの作品では、作者の目はエゴで曇っていない。

私は、上でも書いたように「男が女をどう見ているか」という話ではなく「山田玲司が男(自分)をどう見ているか」という本として楽しみました。読んでるこちらが恥ずかしくなるくらいですから、描いている山田さん自身にとってもここまで欲望をあけすけに語るのって恥ずかしかったような気がしますがどうなんでしょうね。この人ナルシストだから、割と平気なのかもしれない。

良くも悪くも、山田玲司さんらしい作品じゃないかなと思います。

kindle unlimited利用者は無料で読めるので興味がある人どうぞ。

*1:もちろん、恋愛における自分のニーズに気付かせるための本もたくさんあります。「仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ」あたりは、特定のニーズの本にこたえる要素もありますが、それ以前にお前のニーズなんなんだよって考えさせるタイプの本だと私は思ってます