異世界にだって、差別はある。https://t.co/8B7wTUldWz
— 少年マガジンR@6/20(木)4号発売 (@shonenmagazineR) June 18, 2019
なんかこのキャッチコピーがすごいぐっと来たのでとりあえず2巻まで読んでみました。 → ピーチボーイリバーサイド|月刊少年マガジン・少年マガジンR 公式サイト
面白そうだなーと思ったので続きも読んでいこうと思います。
なろうだと定番で当たり前のように受け入れられている印象がある「差別」に対し、作品内世界の人間がツッコミを入れていく作品
あくまで個人的な印象だと、なろうの異世界ものの人気作品には「亜人差別や敵視」は割と定番のネタになっていて、それを利用して主人公が奴隷として売られてる亜人の少女を買って奉仕させたりイチャイチャする作品多くない? と思ってるんですがどうなんでしょうね。
異世界ものでいちいち現代の感覚で設定にマジレスする気はないけど、主人公の魅力やキャラというのは大事ですよね。その点において、現代日本社会の主人公が転生して云々はいいとして、これについて何の違和感もなく受け入れてるのはいつみても「適応力高すぎてサイコパスにしか見えない」のでもうちょっとこう……なんとかならん?って思うときはありますw
(盾の勇者は理由がはっきりしてるし、現代日本の常識の縛りもしっかりあるからいいんですけど)
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KADOKAWAが直営する「bookwalker」ラノベ総選挙の結果の1位が「回復術士のやり直し」になった件について - 頭の上にミカンをのせる
「科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌」 理系脳の人間をチート抜きで異世界に放り込んで見ると…? - 頭の上にミカンをのせる
というわけで、異世界なのにわざわざ差別とか意識しちゃう作品というのは面白いかもしれないなと思って読み始めました。
「ピーチボーイ・リバーサイド」は世間知らずのお姫様が、命の恩人を追いかけて世界を旅してまわるところからスタート
読んでみたら、異世界転生ものではなかった。あくまで異世界が舞台のファンタジーものです。人間を殺す「鬼族」というのがいる世界が舞台。
①鬼殺しの力を持ち、あちこち旅をして鬼を殺して回ることだけが生きがいの「桃太郎(キビツミコト)」と
②「桃太郎」に命を救われて、彼を追いかけて住んでいた町を飛び出した世間知らずのお姫様サリー
の二人を軸にして物語がすすむ。
桃太郎(キビツミコト)サイド
「桃太郎」を「勇者」に、「魔族」を「鬼」に置き換えたら設定自体はよくある話です。
あくまでも「桃太郎」や「姫様」のキャラクターに味がある感じ。
桃太郎は英雄であるはずなのに「圧倒的な力を持つ」し「鬼殺しを楽しむ」ために人から疎まれ、ニヒリストになってしまっている。
こっちのシナリオはとにかく殺伐としています。
「自然博愛ですか。ははは、それこそくだらない」
「自然博愛のどこがくだらないと!」
「大義はそれとしても。その大元は自分たちの土地を奪われた復讐心だ。
人間が自然を大切にしようと、あなたたちが矛を収めるはずもない。
私も同じだから、わかるんですよ。
大義なんてただの言い訳。私たちは互いにただ憎いだけ。
だから存分に殺しあえる。
それが楽しい。ただそれだけ。でしょう?」
「私の目的は人助けではなく鬼退治。
あちらを気にするのは、あなたを殺したそのあとですよ」
このあたりの会話は、「鬼」の位置づけをアニマルライツの皆様だとかミサンドリストの皆様、
あるいはその逆にオタクとかアンチイケハヤあたりに置き換えても成り立ちそうですね。
自分をどっち側において考えるかでその人の精神のありようがわかりそうな気がします。
世間知らずの姫様(サリー)サイド
こちらは、従来の「桃太郎」のお話のように、旅中で出会った変わった存在を仲間に加えながら桃太郎を追いかけます。
・人間世界から疎まれて居場所がないウサギ姿の亜人?(フラウ)
・力を失って人からも鬼からも疎まれるようになった鬼(眼鬼→キャロットに改名)
・自分を残して国が消滅し、生きる目的も場所も失った人間(ホーソン)
フラウは旅に出て一人の時、たくさん差別された。
罵倒された。石を投げられた。人参も取られて、行き倒れてた。
でも、サリーに出会えた。
まず彼女は人参をくれた。気遣ってくれた。差別から守ってくれた。
そして、笑顔をくれた。
この作品内での「キビダンゴ」とはこういうものらしいです。
世間知らずの姫様は、旅をしていくうちに、世界の中にはびこる「差別」について直面していく
正直、亜人は人間より強いし、鬼は実際に人を殺しているので説得力が弱いけど、
あくまで世間知らずの姫様は「差別」というものについて考えていくことになる。
「おかしいのよ。彼女たちは何もしていなくても亜人だからって嫌われたり。
逆に、私は鬼だからって人間を敵視したり。
みんながみんなして、それが当然みたいに」(中略)
「差別の理由は憎しみに限りません。
無知ゆえの恐怖。違いを嫌悪する潔癖。多種多様ですね」「みんながみんなそういう理由を持ってるの?」
「いえ、まさか。大半の人にとっては理由以前のことでしょう。
単にそう教えられたからですよ。」
確かにね。
我々の社会でもtwitterとか見てると、ネトウヨやってる人も反差別やってる人も半分くらいの人はちゃんとした「理由」はなんてあんまりなさそうだなと思う。実際に自分で目で見て確かめたりとか自分の頭でちゃんと考えてるとは思えない。「なんとなく」な感じがする。「何となく」だからいうことがコロコロ変わる人もいれば、理由がはっきりしてないからこそ結論にしがみついて話が通じない人もいる。
たまたま誰かから植え付けられた考え方だとか自分の経験から生じた偏見をツイッターをやって同じような人をフォローしていくうちにますます強化していってるような感じの人いっぱいいますよね。
まして、インターネットのないこの作品では「親の教え」とか「周りの人の考え」の影響は絶大なんでしょう。そうやって差別の感情は温存され強化されていくんだろうなーと。
シンプルだけど、これすごく大事な視点だと思う。いろんなことに差別を見出し、それについていちいち「悪魔化」して世界を悪魔まみれにしてる人たち、「ハンロンの剃刀」じゃないけど考え方変えた方がいいんじゃないかなぁ。
世間知らずのお姫様は自分の体験から「差別は克服できる」という信念をもってそれと戦うことにする
「私が旅に出て、初めて会ったのが亜人なの。それからずっと一緒にいる
少し変わってるけどすごくいい子なのよ。私、何度も助けられた。亜人だけじゃない、ほかの種族とも歩み寄れるのを見てきたのよ。」
「それを知ってりいるのは、この世界で、あなた一人かもしれませんよ」
「……私しか知らない?……私にしかできない?
決めた!!旅の!目標!!ミコト、私ね。差別が嫌い。大っ嫌い!」
「…旅をしながら差別撤廃でも叫ばれますか?」
「…ううん。そんなの何の意味もない。
けど…もう少し妥協させたい。
そう呼びかけるたびにしたいと思う……無茶かな?」「いいえ、しかしいばらの道ですよ」
「その程度!痛くたって進むわよ!」
いいね。「ただ差別撤廃を叫ぶだけの自己満足ではあんまり意味がない」ってはっきり割り切った上で
自分にできることやってみようっていう姿勢。
この先どうなるかは結構楽しみになってきました。
というわけでここまでが導入編。
正直かなり「下手」というか「説得力がない」と思う部分も多いです。特に主人公の行動は今んところ「んー?」って思うところ結構ある。それでも、作品としてやりたいことがはっきり見えている作品なので続きも期待したいなと思います。
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このあたりの名作と並ぶような物語になってくれるといいなぁ。
良かったら皆さんも読んでみてください。