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の続き。
このお二人のコメントがとても良かったので、「お母さんの正体」買いました。
kerari このマンガ、夫さんを嫌な表情とかさせずに爽やかに描き切っててすごいと思うのよ。人格否定じゃなくて行動だけを批判してる感じ。
kurataikutu これは白ハゲ漫画じゃなくて商業用。あさのゆきこさんずっと読んでるけど、こういう主婦の些細なあるある切り取る視座がホントにうまい。複雑な感情をシンプルに描いて寄りそう解像度の高さが表現者としての強みやで
結論から言うと序盤の話は「釣り」で、最後まで読むと意外に真摯なお話だった
読んでみて思ったこと = 全部読んでみたら決して男叩き一辺倒のマンガではなかった。夫も悪く描かれているけれど、それ以上に妻のほうがダメ人間として描かれている
確かに序盤の夫はダメなムーブをしてる。イラッとするのは間違いない。
少しの藁人形要素を感じるが、別に特別悪者にしているとも言わない。
そういう意味で夫を批判する人の気持はわかる。
でも、5話以降を読むと印象が変わる。この夫はかなり優良物件であるような描かれ方になっている。
「2話だけ読んで夫を批判して切り捨てるような早とちり女は自分が夫を腐らせて一生男や夫の愚痴を言いながら不幸せな人生を歩むんだろうな」って思わされる。
コレに対して、序盤の夫のダメさを考えても、それ以上に妻(エミ)は圧倒的にダメな人間として描かれていると感じた。
お互い様ですらない。
明らかに意図してエミの方がいろいろと問題がある人間として描かれている。
じゃあエミという人間がダメなのか?女がダメなのか?というとそういう話にもなっていない。
「エミという人間は結婚して子供が生まれる前まではそこまでひどい人間ではなかった。それなのに、ハルカという娘が生まれてハルカママという役割になったせいでおかしくなってしまった」という風に描かれている。
それは育児による過労や、家庭に閉じ込められていることのストレス、そしてその悩みを相談できないことなどが重なってそうなってしまったのだ、という描かれ方をしている。
最終話まで読むと、これは男女の問題というより「育児というものがどれほど過酷であるか」という話として受け取れるような話になっている
「一人ならちゃんと生きられていた一人の女性が ここまで心が荒んでダメ人間になっちゃうくらいに家事は過酷である」
「夫側は、ちゃんと妻を大事に思ってある程度頑張ろうとはしてくれている。それはわかる。でも十分ではない。 その結果彼女はキャパを越える状態が続いて壊れそうになっている。彼女の理不尽に見える怒りやヒステリーは、壊れかけの女性からのSOSなのだ。」
「彼女は疲労とか孤独とか自己嫌悪とか、いろんなものでまともに考える余裕ができなくなっている。夫は自分が悪者扱いされていると考えないで、壊れかけた妻を助ける存在になってあげられないだろうか」
「そもそも男だって未熟なのに、男はその未熟さが許容されたり周囲から助けてもらえる。母親だって初めてなのだから未熟なのは当たり前なのに、その未熟さが許容されない上に十分なサポートが得られないのは理不尽すぎるのではないか」
みたいなことを考えさせてくれる話になっている。夫を批判するというよりは、もっと一般的な話をしたいのだと思う。
というわけで、最終話まで読むと印象は変る。
印象が変わっても1話~9話のエミの態度はすごく嫌いなことは変わらないけれど、ただ、言いたかったこと自体は割と真摯な話なんだなと思った。
なので、2話を読んでイラッとした人は最後まで読めばそれなりにスッキリすると思う。