頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「あいにくあんたのためじゃない」 クローズドな男社会の下で無神経な男の視線に苦しんできた女たちが、協力して男以外も楽しめる場を作っていく話。

お気に入り度★★★★(おすすめ度★★★★)

「BUTTER」がヒットした柚木麻子さんの短編集をコミカライズした作品。


久々に「格好いいフェミニズム」を感じさせるマンガを読めた気がする。スッキリはしないが前向きな作品でとても良かった

何かを下げて何かを持ち上げるのは良くないのはよく分かっているし、この記事自体が「ラーメン評論家っぽい」という批判を受けるであろうことは重々承知の上であえて比較する。

www.tyoshiki.com
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私にとっては、やはり上のマンガは、魅力的な要素は感じつつも、どうしても不完全燃焼感が拭えなくて楽しめなかった。上のマンガは、フェミニズムを描こうとしているのに、むしろフェミニズムが異物になってしまっていた。フェミニズムというものがすごくダサイ、未熟な人間のイメージになってしまうものだった。「フェミニズムを描く時にこういう描き方では駄目だ」と思わされる残念な内容だった。



しかし、じゃあ上のマンガをどうすれば納得感のある作品になるのかがわからなかった。



「あいにくあんたのためじゃない」はその答えの一つを見せてくれたと思う。


このマンガは、一切フェミニズムという言葉を使わずにマンガの中で「格好いいフェミニズム」というものを見せてくれている。いちいちフェミニズムという言葉を使わなくても、男女隔てず理不尽や差別を許さない人間を描けば、それは格好いいフェミニズムになるのだと教えてくれる。

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こちらと合わせてぜひ読んでみてほしい。




ラーメン評論界隈という「男社会の有害な部分が色濃く出る世界」で、被害にあった女性たち(ゲイカップルも含む)が力を合わせて「新しいお店」を作る話

どこまで現実かは知らないけれど、本作品中では「ラーメン評論」というやたら狭い世界は完全な男社会である。

男が男というだけで幅を効かせ、我が物顔で振る舞い、セクハラが横行し、男らしくないものは全て笑いものにしても良いという時代遅れな空気が流れている。

男らしさには良い面も悪い面もあるはずだが、この作品のラーメン評論界隈の男は

男の中で競ったら、明らかにさえない人間なのに、特に努力もせず「ただ男である」というだけで無条件で女に対してマウントが取れるという勘違いをしている。

そんな「有害な男らしさ」に支配されたラーメン評論家は、勝手な自分基準で人を評価する。


しかも、ラーメン評論家は自分の基準で格下だと思った人間は許可を取らずにネットにさらし、無神経に笑いものにしたり扱き下ろしたりすることでPVを稼いでいた。

※さすがにここまでゲスなことをやってるラーメン評論家やらフードなんとかさんは現実にはいないと信じたい。私は「彼女は頭が悪いから」の東大生の描写の薄っぺらさを嗤った立場なので、ラーメン評論家の人がこの作品の描写を現実的でないと斬って捨てる権利は当然認められるべきだと思っている。あくまでもマンガのために誇張されたゲスキャラであってほしい。ラーメン評論家からは「こんなやついないよ。解像度低いなあ」と言われてほしい。 




まぁそれはさておき。

こういうことをやっているラーメン評論家が自分をゲスだと思っていたならまだわかる。

しかし、このラーメン評論家は自分を善良な人間だと思っていた。

こういうゲスな行為をしょっちゅう繰り返しているくせに、ラーメン評論家は自分のやってることを「ちょっと毒のある笑い」とか「男らしさのアピール」とポジティブに捉えていたし、自分はラーメン文化を守っている硬派な人間だと自分を過大評価していた。

私は男だけど、さすがにこれは「何がラーメン評論家の矜持だ」って思った。


ラーメン評論家に傷つけられた人たちは、協力して「男社会によって抑圧されてきた人たちでも、男たちの目線を気にせずラーメンを楽しめるお店」を作ろうとする

本作の主人公たちはこのラーメン評論家ではなく、そのラーメン評論家の無神経さによって傷つけられてきた人たちだ。

彼ら彼女らは、ネットでよく見るような「文句をいって嘆いたり慰め合うだけ」のつまらない人たちではなかった。男たちに文句を言いながら男たちになんとかしてもらおうとする他力本願の人たちではなかった。



男社会がそういう態度をとるなら・・・と男たちに期待せず、自分たちで協力して自分たちのための場所や選択肢を作ろうとした。



既存のラーメン好きの男たちに喜ばれるような店じゃなくても

「ラーメンが好きなだけ」なのにやたら偉そうにふんぞり返って男らしさをアピールする時代遅れのラーメン評論家なんかに媚びなくても、。

むしろそういう古い価値観に囚われてるやつらを排除したうえで。

それ以外の多くの人にとって喜ばれるような魅力的な店を作ろううとした。

具体的にどういう取り組みを行って、どういう決着をつけるかは、ぜひ実際に読んで確かめてみてほしい。



正直、解決編の部分はフィクションぽいというかご都合主義的な展開ではある。

そもそも作品の設定自体が全体的に「描きたいことありき」であり、いろいろとツッコミどころが多い。

そのあたりどれだけ贔屓目に見ても★5をつけられる作品ではない。

でもそのあたりは短編だからというのもあるし「寓話だから」だろう。

この作品世界のラーメン評論家とかそもそも男中心のラーメン評論界とか、さらに美味しそうなラーメンですらすべて「アイコン」でしかない。

この雑な描写はかなり意図的なものだと思うので、さすがにこの作品の描写の雑さを批判するのはチョットズレてると思う。




私は「虐げられた人たちが嘆くところで終わりにしようとしなかったこと」それ自体がすごく好きだ。



このテーマでもっと設定も描写もしっかり詰めた作品が読めたらとても面白いだろうな・・・と期待している。





以下はおまけです。

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