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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「トクサツガガガ」4巻~5巻  隠れオタからオープンオタへの強烈な憎悪について

つい数年前までエロゲーとかを好んでやっていた私は徹底的に隠れオタでした。職場では全然オタクの話は全くしませんでした。オタクであることを隠すために対して好きでもないことをカムフラージュとして趣味として持っていたくらいに気を付けてました。(今はもう開き直ってむしろオタクであることをネタにしてます)

しかしオープンオタへの嫌悪感は全然ありません。私が隠れているのは単に興味のない人と話をするのが疲れるからでした。単に非オタクの人と話をするのを面倒くさがってただけです。というわけで、むしろオープンにオタクの話をして受け入れられてる人は、ちゃんとコミュニケーションコストを払って周りとつながっているんだと思っているので尊敬しています。それは以前に記事で書きました。*1
「趣味がアニメとゲーム」だから場違いなのではない。場違いな原因は自分自身にある - この夜が明けるまであと百万の祈り

しかし、昔からのオタクの人には、とにかく「オタクは隠れてないとダメ」って意識が強い人ってのが今だに結構いるみたいです。最近ひどいのになると「BLはジェンダー問題に取り組んでるし腐女子も配慮があるからいいけど男オタクはダメ」みたいに言い出す人がいてこれはなんかおかしいんじゃないかと思ってます。こういう勝手基準を振り回す人の脳内ってほんとわかんねえ……。


「オタクであること」を能動的にオープンにできる人もいるけど、知られたら死ぬほどつらい人もいる

って前置きが長い! 

私の話はこの辺にして、ともかくトクサツガガガの北代さんの話だ。



この作品に出てくる北代さんは、「隠れアイドルオタ」であり、かつ「オープンオタへの敵視」が極端に強い人物として描かれています。北代さんにとっては、アイドルオタであることは知られることは社会的にほぼ死を意味しています。

実際に、ずっと隠していたのに、知り合いの女の子から情報が洩れてオタクばれしてしまった後の北代さんの日常の変化の描写はかなりつらそうなものです。

なんでアイドル=恋愛対象なの?別に付き合いたいとか彼氏にしたいとかじゃなくてね。でも、私がどう思ってようが、30も過ぎて独身でアイドル好きなんて、周りはそんな風には思ってくれない。訂正しても訂正しても、わかってもらうのはすごく大変で。いったん人の手に渡った情報は、もう取り返せない。散々からかわれて、ネタにされて、いやだといっても向こうは全く悪気がないから「何が嫌なの?俺たちそういうの全然気にしないから?隠さなくてもいいよ」って無邪気な顔で笑いものにして心を踏みにじっていく。


結局オタクばれのせいで、友人を失い、職場の居心地も悪くなり、自分の支えであったオタク趣味ですら素直な心で楽しめなくなり、心がどんどんすさんでいきます。

ああ、また〇〇〇の番組やってる……。
月曜日にまた、この番組見た誰かに会社でいじられるのかなぁ……
なんかもう、最近〇〇〇見ると、反射的に会社での言い訳を考えてる。

心狭いなぁ私。
10も年上の女の子に怒鳴ってメール無視とか。
みやびさんの言う通りだよ。みやびさんみたいにニコニコしていればいいんだ。
TVでも何でも、かくしてない人はいくらでもいるのに。
……私が考えすぎなんだ。メンタル弱いんだ


北代さんはこの時はまだ「自分が気にしすぎなんだ」と思っていたけれど、
自分が惨めな状況に陥り、自分の趣味も素直に楽しめないという状況が続くにつれて
だんだんと「オタク趣味そのもの」や「オープンなオタク」を憎むようなっていきます。

仕事でもそうやって、我慢して頑張ってさ。
なんで趣味まで、そんな皆にニコニコしてなきゃいけないんだろう。
なんかもう、いやになっちゃった。

その結果、過去の回想で描かれる北代さんと、現在の北代さんでは全く人相が変わってしまってます。


ここで本当によく理解できないんですが。
北代さんはアイドルオタクはやめないんですね。
素直に楽しめなくなったといいつつ、言い訳しながら自分の趣味からは抜け出せない。
そして、その代わりにアイドルオタク以外の趣味をさげすみ、オタク趣味に攻撃的な態度を見せることで
他人を寄せ付けないようになってしまいました。

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自分の失敗をオタク全体へのヘイトに結び付ける身勝手さは荻上と似てるけど、北代さんはより過激です

私は心がすごく狭い人間なので、こういう人本当に苦手です

私はね、こういう人嫌いです。「気持ちはわかる」とすら思わないです。
つらかったとかいうのはわからなくはないけど、自分がつらかったからといって、防衛の範囲を超えて他人に加害行為をしたりきつくあたったりする人間は普通に男女問わずクソだとしか感じません。そこで、「自分はつらい目にあったんだから」とか「あいつらが悪いんだから」といって開き直ったり自己正当化する人間は、人を不幸にすることしかできないので、誰とも関わり合いになろうとしないでほしい。そういう状態にならないのが人間として最低限求められる矜持だと思っており、ぶっちゃけそこ投げ捨てたらもはや人とかかわる資格がないと思う。

サンダー・マックイイーン - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

マックイイーン。 君こそ、真ノ邪悪ダ。君には「敵意」がナイ。「敵意」……「敵意」には力が向カッテ来ル……ヨリ強い力が「敵意」を必ずタタキにヤッテ来ル…「敵意」はイツカ倒サレル。 実に単純ダ。ダガ君は違ウ……君には敵意もナケレバ、悪気もナイシ、誰にも迷惑ナンカかけてナイと思っテイル。自分を被害者ダト思っているし、他人に無関心のクセに、誰カガイツカ自分を助けてクレルト望ンデイル。だが、ソレコソ悪より悪い「最悪」と呼バレルものダ。他人を不幸に巻き込んで、道づれにスル「真の邪悪」だ。
荒木飛呂彦ストーンオーシャン」より)

tyoshiki.hatenadiary.com
というわけで、私だったら北代さんみたいな人を見たらめっちゃ強く批判します。そして、その批判に耳を貸さないようだったらたぶん見捨ててると思います。

しかし、私だったら見捨てちゃうような北代さんみたいな人を、この作品ではきちんと救うところが素晴らしい

でも、この作品の主人公は、そんな北代さんに対して、
うまいことアプローチをとって、その結果
彼女のかたくなな態度をちょっと緩和させちゃうんですね。
そして、北代さんは、別に隠れオタをやめるわけではないけれど
少なくとも周りに対してとげとげしくしたり、
ほかのオタク趣味をさげすむことはやめる。

確かに私を(勝手にオタクの情報を皆にばらして)追い詰めたのはみやびさんだけど
私を外に連れ出してくれたのも、みやびさんだったのに。
謝るのは私のほうだ。
みやびさんは、自分が好きなものを好きって言っただけだよね。
私がいくら、身を守りたくても、誰かを、傷つけていい理由にはならない。

とてもイイハナシだなー。

*1:もちろん、今でもエロゲー好きな人や、BL好きな人など、まだまだ理解されない趣味の人も多いと思うのでそうそう簡単にオープンにできない人がいるのはわかっています