この夜が明けるまであと百万の祈り

発達障害者としての生き方によく悩んでます。いろいろあって今現在は教育系の出版社でつとめてます。普段は自分が好きなマンガの話してます

殺人事件に対し、報道や我々の反応が誤っているとそれが原因で当事者の1%が自殺するかもしれないなんて考えたことなかった

というわけで読みました。

mangaonweb.com
無料で読めるのでみなさんも読んでみてください。

附属池田小事件およびその影響としての医療観察法成立がテーマの作品

これは大教大附属池田小で起きた殺人事件に関して、世間で起きた影響と、それが当時の精神病患者にもたらした結果をフィクションの形で批判した作品です。この際に「精神鑑定」や「措置入院」という仕組みやマスコミの報道姿勢をかなり強めに批判しています。

ja.wikipedia.org

事件の報道後に精神障碍者およびその家族に起きた影響の調査の結果。

・症状が不安定になった 57.6%
・症状が再発した    13%
・入院・再入院した   16.3%
・自殺した       1.1%

まさに「迷惑だから消えてほしい」とか「死ぬなら一人で死ね」の圧力を受けて1%の人は人知れず自殺した、というわけだ。
すでに1件、事件の影響が強いと推測される「殺人」事件も起きてますね。(断定はできませんが)
そして、おそらくこの自殺した人たちは一切報道されない(作品中でもニュース価値が低いと書かれています)。
結局、世間に迷惑をかけた側しか認知されない。
結果として、我々は精神病について理解することは一切なく、事件が起きるたびに偏見だけを強化していく。


当時はその結果として、医療観察法が2005年から施行されている。
www.mhlw.go.jp
http://www.japsw.or.jp/ugoki/hokokusyo/20110219-kenri/50-51.pdf
ブラよろはこれについても強烈に批判しているが、妥当性は正直よくわからないですが、
今回は「高齢者引きこもり対策」が強制労働収容所・矯正施設みたいな形に結び付いたりするのかもしれません。



精神病患者だけでなく発達障害者への偏見も結構きつかったよね

この傾向は一時期の自閉症・発達障害についても同じであったことは「どんぐりの家」に詳しい。

どんぐりの家 それから (ビッグコミックススペシャル)

どんぐりの家 それから (ビッグコミックススペシャル)

基本的に「世間一般」に見えない少数派や辺縁部はどんどん悪者にしていくというのはよくあることなのだろう。ネットができてからはこういう人たちも声をあげる機会は与えられたが、基本的に世間は「わかりやすくかわいそうな人」以外は助けない。
発達障碍者はたいてい「かわいくない」「迷惑なやつら」なので、世間がこういう人たちに同情的な声を示すことはない。
www.tyoshiki.com

私が最も長いこと見ているはてなに限ると、私は当事者の側からはてブを観察していると、彼ら彼女らが支持するのは「発達障碍者だけど頑張って立ち直った」組であると思う。要するにかわいげがあるやつだ。どうしようもないひとは黙殺しようとするし、むしろ「可愛くない」「迷惑な人」の話題があがったらとりあえず発達障害のレッテルを張って自分たちから切断しようとする傾向が強いと感じている。具体的なID名は差し控えるが、はてなで「反差別」の旗印を掲げてる人たちの、発達障碍者に対する蔑視・差別の意識はものすごく強いなと思っている。特に男女差別に反対する人が、自分の気に入らない人をそういう発達障碍者のカテゴリにポイポイ無造作に放り込もうとするしぐさはたぶん全く自覚がなく行われてる。

私は私で、女性の権利などに関しては同じように壁となってる存在だと敵視されたりしてるんだろうけども。

殺人事件が起きたとき、我々はファクトフルネスの10のバイアスがほぼすべて駆動してしまうことを自覚しておく

まず何が起きるかというとみんなが不安な状況になる。

そして、かれが「精神科」に通っていたとなると、その真偽を確かめる間もなくマスコミがセンセーショナルなネタとして煽る。

そして、大衆は不安なのでそういう「犯人が自分たちとは違う異常性を持っていることを示すキーワード」を与えられると「〇〇〇だから悪かったんだ」「〇〇〇さえ隔離しておけば大丈夫」という安心を求めたがる気持ちで過剰に精神病患者へのバッシングを行う。少なくとも、マスコミはそういう方向に我々を誘導しようとする。

今回は「高齢者の引きこもり」という方向にもっていきたいそうだ。(ゲームとかマンガはさすがに弱いと学習してきたかな?)多分、精神病の既往歴があったら容赦なく報道していただろう。


我々の中では無自覚にファクトフルネスでも示された人間のバイアスがだいたいすべて動員される。これは、個人レベルで抵抗することはできても社会全体としては防ぐことが難しいようだ。

何個かはこじつけ臭いけど一応10個すべてのバイアスを紹介します。

思い込み1「分断本能」  「世界は分断されている」と言う思い込み

→自分はまともだが、おかしな奴らがいるから世の中がおかしくなるんだ。あいつらがいなければいいのに
→「死ぬなら一人で死ね」につながる。


思い込み2「ネガティブ本能」 世の中はどんどん悪くなっているという思い込み

精神病の治療に関しては、数十年前から飛躍的によくなっており、
精神病の多くは治癒・改善が可能であったり薬で対応できることがわかっている。にも拘わらず、問題点ばかりが認識される。
→精神病患者はますます迷惑になってきているから隔離しろ
→「死ぬなら一人で死ね」につながる。

思い込み3「直線本能」  物事が一直線に動いていると感じる。

→きれいな相関関係を信じる人は、簡単なデマに騙される。

思い込み4「恐怖本能」  危険でない事を、恐ろしいと考えてしまう。

重大事件ほど、「過大に」「すべての事象に」そのリスクを見積もる
→「あいつらは危険だ。すべて隔離しろ」につながる。
 これを防ぐためにマスコミが仕事をするべきだと思われるが実際はどうだろうか。

思い込み5「過大視本能」 「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み。

テレビで繰り返し何度も放映されると、ほかの数字を考慮しなくなる。
→十数名が殺されたことが一番大事であると考え、それをすべての判断の根拠にする。

思い込み6「パターン化本能」「ひとつの例が全てに当てはまる」と考えてしまう。

今回の場合はもちろん「ひきこもり」が危険だという話につながる。
これについては、マスコミのせいというより、視聴者側の問題が大きい気もする。

思い込み7「宿命本能」   「すべてはあらかじめ決まっている」と言う思い込み。

これも「自分は大丈夫」と思いたがるためのバイアスとして機能する。
今精神病患者じゃない人間は、「精神病になった時点で仕方がない」と考えたがる。
→「精神病患者は生きてても仕方がないから死んだほうがいいのでは?」と作中で医師が述べるシーンが出る地獄。

思い込み8「単純化本能」  「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み。

→初期のマスコミ報道に乗ってはいけない最大の理由。
 情報が少ない初動段階で判断するのはあまりにも危険すぎる。
 マスコミはそれでも与えられた情報でストーリーを作る。キャッチーなネタを煽る。
 でも、それが正しいかどうかはマスコミは全く責任を取ってくれない

思い込み9「犯人探し本能」 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み。

殺人事件はこれが非常にわかりやすく出る。
→とにかく誰かが悪いということにしないと安心できないので、苛烈な犯人バッシングが起きる
 今回の件に「自殺」という要素が見出されなければ、今理性的なことを言ってる人でも犯人バッシングをしている可能性はある。

思い込み10「焦り本能」  「今すぐ手を打たないと大変な事になる」という思い込み。これも同じ。

どうせ何もできやしないくせに、よかれとおもって性急に誤った結論に飛びつく。
twitter時代はこの声が顕著に出回りやすいのでかなり危険度が大だと思う。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

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現在ほど、殺人事件の初動報道に対して反応することが容易であり、だからこそうかつに反応してはいけない時代もないのかもしれない

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こういう時に私にできる「表現」はたぶんない。私はもともと表現したいことがあんまりない。表現できる人が羨ましいとあうかぶっちゃけ妬ましい。それでいて、そういう人の補助になるようなネタの紹介ばっかりやってる。

せめて勢いで適当なことをつぶやいて迷惑をかけるようなことは避けたいと思うだけだ。


実際は、こういう時に節操なく人を煽る発言をする人がインフルエンサーになっていくのだろうと思う。今のネットの数の論理は「とにかく初動で無責任に大声で騒いで人を煽る人間が勝つ」という図式を完全に形にしてしまったと思う。

こうならないように、システマチックにそういう煽りの声には抵抗していきたいと思う。

news.yahoo.co.jp