人は、望んだものが得られなくても幸せになれます。(7話)
私たちは、100%分かり合えなくても寄り添うことはできる。(8話)
友達関係に悩みを抱える人たちが、「500円で人間関係の悩み相談受けます」っていう怪しげな男のもとを訪ねて相談する話。
1巻で登場する相談の内容は以下の通り
(1)マウンティング女子
(2)群れたがり女子
(3)SNS依存女子
(4)自分が持っていないものを持っている友達
「漫画でわかる〇〇」みたいなフォーマットの自己啓発書風味。
人間味の薄い、言いたいことありきでキャラが薄い創作話だったので「マンガ」として面白い作品を期待すると残念な感じ。
コンセプトは面白いと思うけれど、1話~6話までは漫画そのものが結論ありきであんまりおもしろくない。
「その友達は切りなさい」としかアドバイスされないし、「友達を切りましょう」といってくる男の説明に全然納得できないところがキツイ。科学的にどうとかそういう話でもなく、完全に男の好き嫌いでしかないんですよね。
一方で、健康関係のうんちくは科学的な研究に基づいた役に立つ話が多くその科学を尊重する姿勢を、肝心の人間関係相談でも活かせよ……って突っ込みたくなる。
一方で、4人目の話は面白かった
4話目だけは友達関係を切るのではなくて、考え方を変えることで関係を修復していきます。
これも最初から「修復するつもりだな」というのが見え見えな描き方をしているのでその点はアレですが、それでも3話までと比べて圧倒的に面白いです。というか、1~3人目まではこの話のための前振りだったのかもしれません。
やっぱり「単にダメな友達を切ってスッキリしましたね」だけでは読み物として面白くないってことだと思います。
1話~3話の話は、Twitterでバズりやすい「スカッとする話」なのですよね。「相手がこうこうこういう理由で悪い。だからこちらから〇〇してやった。スカッとした」でお話が終わりなんです。「起」からわかり切った「結」が導き出されるだけのお話。「知ってた」以外の感想が出ない。1+1=2という単純な計算問題を解いた時の作業感だけがある。Twitterで読み飛ばす分にはいいけれど、お金だして読む価値のある話かというとやっぱり違う気がするんですよね。
4話はマインドフルネスの話が面白い
これに対して、4話はきちんと話の中で登場に変化が生じ、それによって物語も「起」だけからは生まれない「結」になっています。
(1)友達に負の感情をもってしまう自分を責める気持ちをおさめ
(2)マインドフルネスの感情を持ってすこしずつ自分を今ここに集中させる
これは、以前「キレる私をやめたい」でも紹介されていた「ゲシュタルト療法」とも通じる考え方です。
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心に注目する方法というのは、セラピーだと体の状態や今の気持ちを聞くことです。そしてその人自身が今を味わうことです。セラピーの時に、「怒りを思い出し体で感じてみてください」とか「体は今どうなっていますか」という風に聞いたりしました。
その後、その人自身がこの辺がカッカする感じだとかそういう風に答えてもらった。これは、その人自身が体の状態今の気持ちをしっかりと考えて認識するというところを重視しているからです。
そして、嫌な上司で悩んでいる B さんが実際になりに起こっているのかとか原因が分かっても分からなくてもそれはどっちでもいいんです。
人間は誰かに「心の部分」に注目してもらったり、自分で心の部分に注目する、ただそれだけで癒されるんです。
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アドラー心理学(というかギリシャ哲学)の「エネルゲイアな生き方」とも通じますね。基本的に、人間心理の問題の解決策ってだいたいどれも同じことを違った言葉で言ってるに過ぎないんですよね。
デュナミスがまだ完成の途上にある生成状態のものを指すのに対して、エネルゲイアは現実に存在するもの、そして生成の終局にあたる完成された状態を指します。具体的には、卵と鶏を例にとると、卵がデュナミス、鶏がエネルゲイア。あるいは、チューリップの球根がデュナミス、咲いた状態がエネルゲイア
(3)そうやって自分の今の心に注目できるようになってから「幸せ」についての考え方を変える
すっごく当たり前だけれど、やっぱりお話に起承転結って大事だなってことがものすごくよくわかる作品でした。
- 作者:宮部サチ
- 発売日: 2020/03/09
- メディア: Kindle版
- 作者:宮部サチ
- 発売日: 2020/08/06
- メディア: Kindle版
5人目以降は面白い話も増えてきて、期待してたのですが立ち上がりが遅かったせいか2巻で完結してしまいました。 うまくやればもっと面白い話が読めたかもしれないのでちょっと残念……・
ちなみにこの系統のタイトルは他にもいろいろありますね。
友達100人できるかな コミック 全5巻 完結セット (アフタヌーンKC)
- 作者:とよ田 みのる
- 発売日: 2011/08/26
- メディア: コミック
とよ田みのるさんの作品は超名作なのでぜひ読んでほしい!