原作は前6章+1章の7章の探偵ものですが、この漫画は2章をコミカライズしたものです。
めちゃくちゃレベルの高いコミカライズで個人的にはとても満足です。
橘一真(たちばな・かずま)は、他人の心象を受信する能力を持っていた。
他人の心が分かるといえば便利そうだが、「実際はどの意識が誰のものかわからない」「対象が複数いると入り混じって受信する」という中途半端なもの。生まれながらの能力ではあるが、完全に制御できるものではなく、否応なしになだれこんでくる人々の意志に振り回されることもしばしば。それでも日々制御する訓練を重ねつつ、なんとか人並みの学園生活を送っている。
「静乃宮学園」では、1年を通じて様々な行事を共にこなしていくグループ「行動班」を組む教育方針をとっている。「気持ちのいいメンバーと楽しい1年を過ごしたい」という生徒たちの思いをよそに、メンバーは無慈悲にもくじ引きで決まる。人付き合いの苦手な一真の元に集まったのは個性の塊の様なメンバーだった。
無口でクールな雪本さくら
天然でポケポケしている桃園萌花
快活で運動神経抜群の風間夏希
自称霊感少女の黒月沙彩
演劇部に所属する美女大鳥百合子
運動はできるが頭が弱い北上陽一
モテる事しか考えていない高永瞬太
8人はまとまることもなく、ただ同じ「行動班」であるという事で最小限の付き合いをしつつも行動を共にする。
そんな中、女子更衣室からの盗難事件が発生する。
これは、後に「受信探偵」と称される様になる、橘一真のはじまりの事件であった…。
人の心をイメージで読める主人公は、とある女の子の「自殺願望のイメージ」に恋をする
主人公は人の心を無差別に受信してしまう。
たいていの人の心はネガティブなものが多く、そうでなくとも情報量が大きくて処理しきない。
また、自分の感覚は誰とも共有できないので変人扱いされまともにコミュニケーションが取れない。
そのため、すっかり自閉的な性格になっていた。
- 作者:えのきづ
- 発売日: 2020/07/31
- メディア: Kindle版
声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている 1 (少年チャンピオン・コミックス)
- 作者:矢村いち
- 発売日: 2020/07/08
- メディア: Kindle版
そんな彼はあるときひとりの女の子を好きになった。
その彼女(雪本さん)はいつも屋上にきてたたずんでいるだけだったが、
彼は雪本さんから強烈な死のイメージを受信する。
屋上から転落死して死ぬ、というイメージだ。
あの死体は、彼女の自殺願望のあらわれだ。
これ以上みるもんじゃないと思った。
なのに、次の日も雪本さんを心待ちにしている自分がいて、
屋上に現れる足音に死を感じ、去っていく足音に生を感じる。
そんな日々を過ごすうちにやっと気づいた。
その強烈な光景に俺はすっかりしびれてしまっているのだと。俺は彼女の妄想に勝手にシンパシーを覚え、独りよがりに感極まって
まるでドラッグに依存するようにその異様さを偏愛した。そうやって何日胸が苦しい夜を過ごしたかわからない。
思春期の錯覚・若さゆえの過ち。未熟者の現実逃避。
どういわれようと、これこそが、俺の初恋なんだ。
ある日雪本さんは本当に転落死するが、「いつも見ていた死のイメージと違う」ことに不審なものを感じる。
雪本さんの死を悼む気持ちはある。
だが、それよりも強いのは、その死が穢されたことへの不満だ。おかしい。
台無しじゃないか。あの墜死妄想は、彼女の中で確かに意味を持っていた。
それなのに、三階の窓なんて中途半端なところから身を投げたなんて。
納得できない。腑に落ちない。こんな死に方、許せない。
半端な自殺を遂げた雪本さくらは許せない。
だから、誰かに殺された雪本さくらであってほしいと思っている。俺は、雪本さんの死を汚した犯人を見つけたい。
それだけが、彼女の死を完全なものにするたった一つの方法のような気がする。
そんな身勝手な動機で、主人公は犯人捜しを始めるのだった。
これ以上はネタバレになるので、この作品については紹介はあっさり目に。
ちょっとゆがんだ感じの主人公が好きな人にはたまらない作品だと思います。他のキャラクターも魅力的で面白いですよ。
繰り返しになりますが、主人公の設定といい性格といい結構描写が難しいとおもうのですが
コミカライズ担当の人が非常にうまく、安心してよめる作品になっています。ミステリ好きな人にはお勧めです。
シンソウノイズ ~受信探偵の事件簿~ 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスUP!)
- 作者:海原望,合同会社DMM GAMES,伊東フミ,はましま薫夫
- 発売日: 2020/02/12
- メディア: Kindle版
原作はノベルゲームで、ノベルゲームの方は日常会話の描写がとても面白かった
原作のノベルゲームは、普通の会話とともに「心の声」が行きかう描写が多く
主人公から見える心象風景がとても上手に描写されていて面白いです。
al.dmm.co.jp
※8月24日まで半額セール中
シナリオ担当の海原望さんは、「ANIPLEXのノベルゲー参入」第一弾においてもシナリオライターをつとめる実力派
私はこの話が来るまで「海原望」というライターも「シンソウノイズ」という作品を知らなかったのですが、
やってみると、シナリオもそうだけれど、発想が面白いライターさんだなと思いました。
「シンソウノイズ」も短編の積み重ねになっていますし
がっつり目のシナリオではなく5~6時間で終わるライトノベルゲームに向いている人かもしれません。
興味がある人はまずこの徒花異たんからやってみるのも良いかもしれません。