山本中学さんの作品がDLSiteで10月16日、10月17日限定で無料読み放題の対象になっていたのでさっそく読んでみた。
感想が難しい作品だけれど、雰囲気がとても好きな作品でした。
無料で読めるということから画像をいつもより多めに引用してますが、ちょっと削った方がいいかもしれん……
絵柄もあって、基本的にはコミカルな雰囲気なんだけど、結構えぐいところついてくる作品だなあと思いました
「古見さんはコミュ症です」の男女上下を逆転させたみたいな話。
古見さんがコミュ症だけれど美人で高嶺の花的なポジションだとしたら
本作品はコミュ症の上、変な苗字のせいで、中学校の時いじめられてすっかり不登校になってしまったサイミョウくんが主人公です。
そんな彼が、今年から男女共学になったばかりの女子高に入学し、いじめっ子がいないところで再起を目指そうとするが……という展開。
ずっとキモい扱いされたり、ずっといじめられてた子が、どれほど卑屈で他人をイラつかせるかを描いてて、読んでてしんどい
この作品のえげつないところは、主人公が本当に人をイライラさせる感じで描かれてることです。
もちろんいじめられていたという過去があるものの、
そのせいで優しく接して接してくれる人にも過剰におびえ、警戒し、何か悪いことをしたときにも「ごめんなさい」より先に「〇〇します」って発言をしてしまう。
周りを全て「いじめっ子」とみて、それに過剰適応した形で卑屈に接するものだからめちゃくちゃ人をイラつかせるんですね。
最初はニュートラルというか、好奇心込みでプラスに見てくれていた人が徐々に嫌悪の目を向けるようになっていきます。
そして、それがわかっていながら自分では自分を制御できなくて余計にさらに落ち込んでいく。
幸いにして、本作品では女性たちがそこまで主人公のことを嫌悪しないので、何とかなりますが、読んでる途中は結構しんどい……ってなりました。
二人の人物にかまってもらうようになってからはだいぶ前向きになっていきます。
変わりたいと思いながらも買われないと思ってたのかもしれない。
いつも逃げる方に片足置いてる。
他力本願でも構わないや。 オレはここで再生したい!
とはいえ、いつまでもだらだらといじめられっ子のネジくれぶりを読むだけの作品ではない
むしろ、学校への適応は割とあっさりと終わって、
自分のことだけで手いっぱいな状態から周りを見る余裕を得た主人公が
「周りは皆女子高生」っていう環境に翻弄されまくってる様子がコミカルに描かれる。
この辺りはなんか見ててニヤニヤしながら読んでました
「嫌われたくない」と「空気が読める」は別物だってのをきちんと描いてくれてるのが凄く良いです
主人公の行動原理って、とにかく「嫌われたくない」「ここにいても良いって証明しないといけない」っていう気持ちなんですよね。
でも、人付き合いってそういうもんじゃないんだよっていうことをしっかり描いてくれてるのが良い。
主人公だけじゃなくてみんな「求められる自分」のとおりにふるまおうとするんだけれど
それができる人だって別に幸せじゃないし、できなくたって嫌われるわけじゃないってのを
いろんな登場人物を通して描いてくれている。
みんな、身近な相手のことですら完全にわかる必要もないし、わかることもできない。
自分の頭の中で「相手が求めてるのはこれだ」なんて考えたって、当たってるとは限らない。
わからなくたって付き合っていけるし、そういう風に考えられない人から破綻していくんだろうなと思う。
物語に「テーマ」はあるけど「明確な指向性」はなく、本当に高校生の日常を描いてるって感じがよかった
多分この作品は打ち切りになっちゃったと思います。3巻で突然いろんな伏線めいた要素をほっぽり出して終わってしまいます。
なんというか、うまく作品としてまとまっていたかというとそうでもない気がしますが
とにかく、ウブでコミュ障の主人公が、女子高生たちのあれこれを見て考えたり行動したりっていう日常を描く描写はとても楽しく
個人的にはもっといろんなエピソードを読んでみたかったなあと思います。
個人的にはかなり好きな作品でした。