頭の上にミカンをのせる

マンガアニメ大好き兼業投資家の日記です。WORLD END ECONOMiCAアニメ化のCFを応援しています。

自分が平田オリザさんから学んだことを振り返る

fujipon.hatenablog.com

人間が生きていくのには、食糧や水、衣類、電気やガス、その他さまざまなインフラが必要です。それらがないと、生きていけない。
でも、それが「不要不急」であるとしても、エンターテインメントがない生活って、やっぱり寂しい。
平田オリザさんのことは嫌いでも、舞台演劇や役者さんたちのことは、嫌いにならないでほしい。
そして、今回の件での平田さんの発言はあまりにも不用意かつ不躾だけれど、平田さんのこれまでの活動が、それで全否定されるものではないと思う

僕は演劇や舞台作品から「生きていてよかったな」という体験を何度ももらってきた人間なので、こういう体験を生んでくれる人たちを助けたいのです。
正確には、僕自身にはそれだけの力がないから、政治や多くの人に目を向けてもらって、サポートしてあげてほしい。

痛いほどよくわかる……。


栗本薫が名著「わが心のフラッシュマン」の末尾、ロマン宣言で語っていたことを思い出しますね

このブログでは繰り返し述べてるけど、私は演劇ではないけれど、ランスシリーズというゲームの存在が自分の心の支えであったので、こういう気持ちは本当にわかる。
なので、演劇に救われた人たちが、演劇というものが続くよう祈りを持つのはごくごく当たり前のことだと私は思う。その気持ちまで否定されないでいてほしい。



私が今までブログで自分で自分に確かめるように書いてきたコミュニケーションについての話は、平田オリザさんから教わったものが多い

例えば私は下の記事でこのように書いているが
www.tyoshiki.com

私は「悪いことをしたのに謝罪しない奴は悪いやつだ」とかそういう道徳的な話はどうでもいい。本人が間違ってないと思っていないなら謝らず反論すればいい。私が言いたいのは道徳や倫理の話じゃなくて、損得の問題。

平田オリザさんはこのように語っている。

 私たちは、西洋料理を食べるためにナイフとフォークの使い方を学ぶ。しかし、ナイフとフォークがうまく使えるようになったところで人格が高まるわけではない。人格の高潔な人間が、必ずナイフとフォークが上手く使えるわけでもない。マナーと人格は関係ない。丁寧とか、人に気を使えるとか、多少の相関性はあるのだろうが、現実世界では、とても性格は悪いけれどナイフとフォークの使い方だけはうまい奴などざらにいるし、またその逆もあるだろう。繰り返し言う。コミュニケーション能力は、人格教育ではない。

当たり前だといわれるかもしれないけれど、私もこの部分がものすごく心に響いた。それまでコミュニケーションが下手な私は自分が劣った人間だとはっきり感じていたけれど、あくまでテクニックだと割り切ることができるようになったのは、コミュニケーションの第一人者であるとされていた平田オリザさんがこの本で書かれている様々な内容の影響が大きい。



www.tyoshiki.com
この記事なんかはもっとストレートに「わかりあえないことから」そのものの内容といってよい。この記事で紹介している「桐谷」さんの本も素晴らしいのでぜひ読んでほしいが、大本としては平田オリザさん教えを念頭に置いている。



www.tyoshiki.com
私のブログの中で最もアクセス数が多いこの記事もそうだ。

演じることが悪いのではない。「演じさせられる」と感じてしまったときに、問題が起こる。ならばまず、主体的に「演じる」子どもたちを作ろう。

ほかにもいろんなものを教わったと思っている。



たとえ今のオリザさんがちょっと微妙だなと思っても、だからといってこれらの本が価値がなかったということにはならないと私は思ってる。





自分の行動が正しいと確信していて「それを他人にわからせてやろう」とするときに、最も慎重さを欠いてしまう

だからこそ、当の平田オリザさんがそれに反したようなふるまいをしているのがとてもつらいんですけどね。

例の発言は「比喩が下手」なのでも「見下してる」のではないと思います。





てこの3つの合わせ技になっていると思っています。
www.tyoshiki.com
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この3つについても、平田オリザさんの著書に似たような記述はあったはずです。今手元にないから確認できないけど。



少なくとも「本人の主観として」は、ネットで言われているような見下しの意図はないと思います。

oriza.seinendan.org

細かくみると表現が非常にまずい箇所や現状認識が間違っている箇所があるのは否定しませんが、NHKでのインタビューにおいて「演劇業界に限らず、直接的な金銭支給による支援が有効な業界と違い観光などのように去った客足が戻りにくい業界には違った形の支援が必要だ」という部分が主眼であることはわかります。 過去発言などから「演劇を特別視」しており、製造業中心の国のありようやコミュニケーション能力に劣る人たちを問題視していることは間違いないと思いますが、少なくとも今回のインタビューでその面が強く表に出ているとは思いませんでした。


私はむしろ、平田オリザさんの批判を受けたうえでの態度の方に問題があると感じました。

ここに書いてきたことの、特に前半部分は、多少の議論はあるにしてもアートマネジメントの世界では、きわめて当たり前のことかと思います。ある学術領域での知見や通説を披瀝してただけでバッシングを受けるというのは、天皇機関説事件の例を引くまでもなく、相当に危険な兆候であると感じます。ぜひ、この点に関して、多くの皆さんに危機感を共有していただきたいと思います。


この発言も単体であれば理解できます。でも、文脈で考えたら明らかに問題ありでしょう。 これを主張するなら平田さんも自分の発言を反省すべきでしょう。

「自分にとっての当たり前を他者が知らないで言及・批判する」ということについて問題視しておきながら、自分は自分以外の分野についての当たり前を理解しようとしていない態度はかなり意味不明です。そのうえ、変なたとえ話をしたり知ったかぶりで間違った発言をしたりするのは全然かまわないとしているのはあまり聞き手を納得させる態度ではありません。


「自分の業界の当たり前」を「わからせよう」という態度が前に出すぎていて、他者の理解への努力や敬意が欠けていると受け取られかねません。これは「わかりあえないことから」で平田さんがおっしゃられていた理念と真逆です。こういう時こそ、「技術としてのコミュニケーション能力」を発揮して、一度断ち切られたコミュニケーションを復活させる方向を目指してほしかった。

こういう態度は「間違い」よりもタチが悪い「いけ好かない」感じを与える

これは私の推測に過ぎませんが、おそらく平田さんは「自分の主張はまっとうで正しいと確信している」からこそ、それを読み取ろうとしない人間は悪意の存在だとして切り捨てているのでしょう。 


なんだかはあちゅうさんがMeToo活動をしたときに、はあちゅうさん自身というよりは彼女の周りにいる人たちが、自分たちがやってることが正義だと信じるあまりに「趣旨に賛同しない人間や、過去のはあちゅうさんの発言を問題視する人は悪人だ」といってわざわざ分断をあおってしまったことと同じような誤りだと思います。あの時のヨッピーさんや深津さん、フミコフミヲさんらが言っていた「自分たちの主張こそが正しくて最重要である」という態度はたいへん「いけ好かない」ものでしたが、今回もそれと同じ感じがします。(いけすかないからと言って自分は自分で滅茶苦茶怒りまくって支離滅裂なことを書いてしまったのでお恥ずかしいですが)


この前のわかり手さんの態度もそうですが、基本的に「どの立ちから発言してるんだ」とか「いけ好かない」という印象を与える話し方をする人間は、コミュニケーション戦略が完全に失敗していると思います。

平田オリザさんの態度が「いけ好かない」のは確かだとして、それだけではてなブックマークで群がって石投げてる人はちょっとやりすぎだと思う

繰り返しになりますが、人は自分が正しいと「確信していて」、その正しさが「自明」だと思っている時にどうもろくでもないことを言ってしまうようです。

これは、平田さんに限った問題ではありません。

私は現状、平田さんも、平田さんを強い言葉で批判している人も、どちらも慎重さを欠いていると思います。




実際、今日も平田さんのツイートがはてなブックマークで晒上げられてましたが、前後のやり取りをちゃんと読んだ人いますか?

togetter.com

私は平田オリザさんの発言の「漫画家は…」の発言は明らかにダメだと思いますが、それに対して集団で口汚い罵倒を浴びせてるはてなブックマークの人の方が嫌いです。私はそういう集団心理みたいなのがものすごく嫌です。

こういう時期だからこそ、安易に「正しそうなもの」「間違ってるものを集団でたたく行為」みたいなところに引き寄せられないようにしたいです。




まくむすび 1 (ヤングジャンプコミックス)

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  • 作者:保谷 伸
  • 発売日: 2019/07/19
  • メディア: コミック
平田さんの件でギスギスしてる人は、演劇を主題にしたこの漫画でも読んでほしい。ちょっと展開がスローだけどすごく丁寧で面白いです。「響け!ユーフォニアム」が好きな人は楽しめると思います。以前紹介した演劇マンガ「アクタージュ」は超人バトル感があっていかにもジャンプ的な漫画で面白いですが、併せて読むのおすすめ!