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発達障害

「僕の妻は発達障害」1巻 いわゆる理解ある彼くんから見た発達障害の女性はどのような存在なのか

独りじゃ生きられない女と、ちゃんと生きていなかった男は、そのあと結婚した。
平凡な未来、ごく一般的な幸せがあると信じて……

というファフナーのデスポエムみたいなキャッチで始まるお話。

とにかく発達障害者は生きづらいということを丁寧に描いている。
ちなみに本作品は実話ではないのでその点は注意!

この漫画を読んでおくと、なぜ発達障害者の女性が彼くんを捕まえる過程を語りたがらないかもある程度納得できるかもしれない。


発達障害を描いたマンガの中はたくさんあるが、本作は「当事者が自分の体験をもとに描いているとはいえ創作」である。事実やイベントなどは現実と違って描きたい内容に沿ってキレイに形を整えられている。そのためこの作品は結構好き嫌いがはっきりわかれるであろう。

良い点としては発達障害者がかかえる生きづらさがどういうものであるかを伝えるために実話ではなく創作の形をとってるくらいだからとにかく発達障害の事が非常~~~にわかりやすい。一方で、嫌いな人は、この「わかりやすさ」こそが問題だと感じるだろう。ぶっちゃけ私はこの作品嫌い(理由は記事末尾にて記載)だけど、それでもみんなに読んでほしいマンガでもある。とても複雑……。





と、いうわけで、1巻の内容をざっくり紹介していきます。




しょっぱなから「結婚した後彼女は一度死のうとしたことがある」というエピソードが紹介される

本作は、私がとても好きな作品「とかくこの世はいきにくい ~うつで無になった私~」同様、漠然とした「生きづらさ」をできる限り具体的に描こうとする努力を感じる。
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特にどうしても伝えたかったのかこの漫画は真っ先に発達障害者の致命的なポイントについて描かれている。最初にこの部分については知っておく必要があるという意識があるのだろう。実際たとえ理解ある彼くんであったり夫であっても1巻の部分に耐えられなくて破綻することが多いと思われる。(現実を受け止めて発達障害の診断を受けるのは2巻になってから)

読者としても1巻の内容はちょっと読んでてしんどいかもしれないが、1巻の内容を読んで特に問題なかったと感じる人は2巻以降は楽しく読めるだろう。


それ以降はちょっとずつ困ったことを乗り越えていく形になっており(眼力が強すぎるとか知覚過敏とか物忘れの多さとか騒がしいところが苦手とか空間認知の弱さとかチック症とか)、徐々に将来のことを考えられるようになっていく。



とにかく集団プレイが死ぬほど苦手で、周囲に自分の特性を伝えていないがゆえに軋轢を起こしまくる妻の姿が描かれる

職場の理解を得られず孤立していくので一つの職場に長くとどまれない

①一つの事に集中すると周りが見えない。片付けもできないので周りの人がフォローすることになる

②超具体的に指示をしないと、自分で勝手に解釈してやってはいけないことをやる

③「毛づくろい」的なコミュニケーションができない

④その結果、周囲の人間を困らせまくって嫌われてるのに、自分では頑張ってて評価されてると思ってしまう。

⑤自分がどうして嫌われているのかもわからない

職場に発達障害の人がいる人は覚えがあるんじゃないかと思います。

もし部下が発達障害だったら

もし部下が発達障害だったら

  • 作者:佐藤恵美
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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これクビになるならまだましで、クビにできない状態だったらいじめとかにあうので相当きついと思います。


もちろん夫婦でも同様で、「専門家でもないただの夫」は別に理解できているわけではないこともきちんと描かれている

「理解」といっても実態は殴っていうこと聞かせてるか諦めてるかのどっちかのケースが多い。
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それ以外で上手くいってるとしたら、それは専門家にちゃんと相談してるからだったりする。

この妻さんの場合、

①「スイッチが入りにくい」上に「注意がそれやすく」それでいてたまに「過集中」という死ぬほど出来が悪いOSになっているので

②単純な家事でも常人では考えられないほどに消耗してしまう。

③そのくせ、自分のやり方にめちゃくちゃ固執するので、夫に手伝いさせようとしない

というありさまであり、専門家の支援を得て適切に観察し、適切な支援方法が出来上がるまでは悲惨の一言だった。(実際はここまで露骨ではないと思うがマンガ的にだいぶわかりやすく描かれている)


一時期やたらと「家事が大変なのに夫が理解してくれない!」と声を大にして叫ぶマンガが話題になってましたが……。他人から見てあまりにも効率が悪い上、夫が手伝おうとしたときに自分のやり方がじゃないと受け入れられないとキレてしまう女性とかは、夫だけじゃんくて自分も問題があるんじゃないかと考えてみてほしいと思いますね……。

そういえば、この前炎上してた「ふくふく」さんがすくパラ倶楽部という場所で描かれている漫画はこのあたりの努力があまり感じられず、ひたすら夫への不満が語られてます。そういう需要があるページなのはわかりますが、この人も自分が発達障害だとわかったのであればちょっと考え方変えるべきじゃないかなあ…。
news.sukupara.jp


「なぜかはわからないけど」迷惑かけまくってる自覚だけがあり自尊心が削れている妻の姿が描かれる


そういう点でも発達障害者は扱いがクソ面倒くさいのだが、この点もちゃんと説明してくれている

(あれ……ここに1000字くらい書いてたはずの内容が消えてる……どうして……)


さらに本作品では、編集者が発達障害について知っていくという企画が1冊につき10ページずつくらいある

本編で出てきたような情報を補完してくれているので結構丁寧。



いろんな意味で、「発達障害者の生きづらさを知ってもらおう」と一生懸命作られていて、とても良い作品だと思います。


余談1:個人的なひっかかりについて

そういうわけで、本作品は教科書としてとても優秀だ。
自分たちが生きづらいと感じるポイントをマンガという形でとてもわかりやすく伝えてくれている。

なので、本来ならばこの作品は真っ先にみんなにおすすめすべきなんだとは思う。実際おすすめ度は★5でもいいと思ってるし。

ただ、なんだろう……この本を読んで「わかられる」ことにすごく抵抗を感じてしまうんだよな……。私が大好きな「アスペル・カノジョ」だってフィクションなので、別にフィクションだから駄目というわけじゃないんだけど。何がひっかってるのかは自分でも言語化できないです。なんかこう、本作品は「形のいいリンゴ」みたいなものであって、自分が捨てられる側であるかのように感じてしまうからだろうか。何言ってんのかわかんねーと思いますがまぁそういうわけで、モヤモヤする作品なのです。

他にも発達障害系を扱うマンガはいろいろあります。
テーマがテーマだけに、監修もついて慎重に描かれてるマンガが多いのでだいたいおすすめです。

www.tyoshiki.com

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余談2:健常者が発達障害者をいきなり一人前の人間とみなして「対等に」付き合おうとするとだいたい破綻する

はっきり言って健常者にとって発達障害者と付き合うのは普通に忍耐がいる。その際に健常者の人は発達障害者のことを「対等」と思おうとするとかなりしんどい。しばらくの間は「客観的に下として扱うが、その代わりにいろいろ妥協する」のが正しいと思う。人格そのものはできれば否定しないでほしいが、対人関係における能力に欠陥があるのは事実だ。だから障害なので。そこは遠慮しなくていい。それを差別だのなんだのと否定しだすと人間関係が入り口でシャットアウトされてしまう。それで困るの発達障害者側の方だ。しばらくすると凸凹だというのがわかって付き合い方もこなれてくるし、「その人ならではのよい面や面白い面がある」ということでフラットな付き合い方ができるようになるかもしれないが、最初は「この子は発達障害でかわいそうな子だから」と思わないととてもじゃないがやってられないだろうからそこは受け入れたい。

そこで変に道徳論を振りかざすと、構築できる人間関係が極端に偏ってしまう。「悪い点があったら遠慮せずちゃんと指摘してほしい」と自分からお願いするくらいの姿勢が必要だと思う。その上でそれが改善できるものか、改善はできないから別の対応が必要かを理解してもらう。そうやって相手の負担を下げる努力は常に続けるべきだ。それができないなら下に見られ続けることを甘んじて受け入れるか、あるいはよほど自分が相手にとってメリットのある魅力的な存在になるしかない。


つまり何が言いたいかというと発達障害者は「上手に怒られる」心構えがいるということだ。相手から何にも注意されなくなったらもう人間関係が完全に断絶している。まして怒られてふてくされたりするような人にはまともな人付き合いはできなくなる。「暇つぶしに相手してやるか」とか「便利だからこき使ってやるか」という人くらいしか周りにいなくなってしまう。こうなると、リアルには人づきあいが存在せずネットで見知らぬ相手にウザ絡みするような悲しいクリーチャーになるしかない(ソースは20代のころの私)。今のネットはそんなのばっかりになってきたね。

発達障害で若い人はとにかく「上手に怒られる」ことだけを気を付けてほしい。怒られることを怖がらずにポジティブにとらえてほしい。そこで耳をふさいだらあっという間に人生が詰むよ。私は最初の会社で仕事は自分なりに頑張ったけど周りに合わせられなくてキャリア終了したので。生育環境もあって無理だという人は最初からクローズド採用を意識したほうが良いと思う。