作品中の真ん中にあるこのシーンがむっちゃいいなぁと思う。
「いやね、大したことじゃないんだけどさ。
今日ね、通りすがりのやつがすんごい汗だくでさ。
なんか誰かに似てんなっと思って。ずっと思い出せなくて。
それを今思い出したっていうか(笑)」(中略)
「あ、そうか。アイツの事知らないんだもんな。
そうか……あれ、なんか得した気分。
いや、今思うと、あいつにあったって言うだけで、
なんかお前よりだいぶ得してるような気がするよ」「珍しいね、お前がそんな風に人を褒めるの」
「そう?」
「大学の時、面白い奴なんて一人もいないって言ってた」
「そんなこと言ったっけ?
じゃあ…いたか。いたいた。面白いやつ」
こうやって横道のことを笑顔で面白そうに語っている加藤という人物、
大学生の時初めて横道世之介と出会った登場シーンでは
キツキツの服装をして、すごいぶすっとしてて
他人を寄せ付けないような雰囲気だった。
もちろんそれには事情があるんだけれど、全然楽しそうではなかった。
この加藤が数年後、横道世之介について語ってる時
すごいラフな格好で、心の底から楽しそうに彼のことを語ってる。
このギャップがスゴイ。
こんな風に、人が誰かについて楽しそうに語ってるのを見たら、
みんなだって「横道世之介」って何者だよって気になるよね。
横道世之介は特別なことはなにもない普通の大学生。
そんな普通の大学生の日常を描いてるだけなんだけれど
それを後から笑顔で振り返る人たちの存在のおかげで、
その「普通」の日常が、
一緒に過ごしてきたやつらにとっては特別で結構すごいもんなんだぜ
って言うことを感じさせてくれる。
私もこれから先
横道世之介を見て感じたことを思い返すと、すこしニコッとできるかもしれない。
あるいは横道世之介をきっかけに思い出した過去の友達との思い出とかもある。
映画見て、感動したとか、泣いたとかそういうんじゃないけど、
なんとなく笑顔になれる気がする。
それって、ちょっと得したような気分だよね。
なんというか、上手く言えないのだけれどすごくじんわりと
温かい気持ちになれる作品でした。
ま、私は横道世之介ほどリア充じゃなかったけどなー(T_T)
余談。
この作品見てて自分が好きな作品をいろいろ思い出しました。
「スラムドッグ・ミリオネア」とか「きっとうまくいく」とか
「モーターサイクル・ダイアリーズ」とか
「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいに壮大な話ではないのだけれど
「男はつらいよ。」の若者版というか
「すいか」とか「めがね」とか「いいひと。」とか
「あどりぶシネ倶楽部」とかそこら辺が近いかも。
多分私はこういう作品が大好きなんだと思うわ……。